第22話 その4

「どうするんだ、あげは」


元凶が、他人事のように言う。一気に頭に血が上ったが、コイツに当たり散らしても解決するわけではない。情緒はともかく頭は良いのだ。有効利用しなくては。


 あたしは深呼吸して、気持ちを落ち着けると、究に噛んで含めるように話した。


「究、今の話をどう聞いたの」


「学校で流行っているスカートめくりの為、廿日さんが被害に会い、お父さんが怒って、転校させようとしている」


「ちゃんとわかっているわね。で、究ははっちゃんを転校させたいの? どうなの」


「どうって……、扶養家族は親の意見に従うしかないだろう」


「そうじゃなくて、究の気持ちとしてはどうなの? もうはっちゃんと会いたくないの?」


「そりゃあ……、……コーヒーを飲んでもらいたいさ」


ほほう、コイツにも照れるという感情はあったのか。よしよし。


「あたしはモチロン、はっちゃんと会いたいわ。だから転校させない為に、あたしに協力しなさい。いいわね」


わかったと小さく頷く究に、よしまず第一段階終了、次だ。


「じゃあ、スカートめくりの流行りを止めさせるには、どうしたらいいと思う」


「一番有効で簡単なのは、全校集会で先生から止めるように言うことだな」


「それは却下。葵先生の条件は、あたし達で、つまり生徒だけでというものだから」


「なら、生徒会に伝えることだな。そして会議で各クラスに通達してもらう」


「う~ん、悪くないけど、どうかな」


「どうして」


「究は知らないかも知れないけど、特殊クラスの進学組は、内申書のために生徒会に立候補する人が多いの。だから生徒会は、ほぼ進学組なのよ」


「それがなにか関係あるのか」


「スカートめくりを止めさせるって、積極的にやるかなぁ。黙殺されないかな」


「それを解決した、という経歴が出来るじゃないか。やると思うよ」


そうかなぁ、と言う前にアラーム音がした。究のスマホからだ。


「あげは、そろそろ食べないと昼休みの時間が無くなるぞ」


「なになに、どうしたの」


きけば今日は午後の授業を受けるから、アラームをセットしておいたのだそうだ。どうりでコーヒーが出てこないと思った。


 究はコンビニのサンドイッチ、あたしは弁当をあわてて食べはじめる。


うえ~ん、せっかくのお母さんの弁当だったのに、味わえないよー


 食べ終わり、ごちそうさまをすると、急いで教室に戻る。タカコ達に知恵を借りなくては。


まだ時間はある。


となりの組に寄り、ムトーちゃんを連れ出すと、教室に戻り現状を話した。


あたしは、面倒事に極力関わりたくないが、関わってしまったら、速やかに解決してしまいたい性分なのだ。

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