第20話 その2

「でも舞ちゃんは、その気はないみたい…」


 その言葉に、あたし達はビトーちゃんを見る。


「ビトーちゃん、はっちゃんを知っているの」


「部活の後輩…」


「部活って、文芸部だっけ。ああそういや、はっちゃんもそうだって言ってたな」


「入ってきたばかりで、大人しいコで、よく話しかけてたの…」


 いやいやビトーちゃんもいい勝負だぞ。というか、そうかビトーちゃんとはっちゃんは、知り合いだったのか。そういや、小柄で小動物的なところが似ているな。


 この2人が、学校の中庭にある木陰の下にある芝生に、白いハンカチーフを敷いて並んで座り込み、セーラー服姿でそよ風に髪をなびかせながら本を読んでいる姿を想像する。絵になるなあ。あたしって妹萌えなのかな。


「ゆうべお父さんが怒っちゃったらしく、それで……」


そこまでビトーちゃんが話したところで、担任の北方先生がやってきてHRが始まった。伝達が終わると先生はひと言続ける。


「紅、1時限目の先生には通してあるから、今から生活指導室に来るように」


クラス全員があたしを見る。カトーちゃんの目が、なにやったのと問いかけるが、心当たりないと首を振る。とりあえず行くしかないから席を立ち教室を出た。


 廊下で担任と合流すると、生活指導室へと向かう。

 少し白髪混じりの頭に、薄茶色のスーツ、少しくたびれている感じだ。無理もない。この学校に勤続20年とか言ってたからな、女子校の頃からいるというわけか。


生活指導室に着くと、中には別の先生が待っていた。


「葵先生……」


「北方先生、ありがとうございました。あとはこちらでやります」


じゃ、よろしくというと、先生は職員室へと帰っていく。

 室内は北側の出入口と、南側の窓、西側の壁には何もなく、東側は壁いっぱいの事務棚に何かしらの本が一杯に並んでいる。

 そして部屋の真ん中には、机と対面にパイプ椅子があった。ドラマなんかで警察の取調室を見るけど、そんな感じだなと思った。


「そちらに座りなさい」


うながされて北側の椅子に座ると、窓際に立っていた葵先生が反対側に座る。


「あのさあ」


「私語をつつしみなさい、ここは学校です」


はいはい、まったくもう。


「昨夜の事ですが、父兄から連絡がありました。当校で破廉恥な行為が行われている。その為、娘が被害にあったと」


「廿日さんですか」


「わかっているようね。何があったか話してくれる」


あたしは最近の学校のことと昨夜の事を話した。


「たまに見かけてはいたけど、そんなにスカートめくりとか、下着を見せ合うのが流行っているの」


「学校全体では知りませんが、うちのクラスではそうですね」


先生は、ふうとため息をついた。

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