第19話 裏表をはき違えないで
翌朝、あげはは起きて部屋から出ようとすると、扉に何かが当たった。それは廊下に置かれた小さな紙袋だった。
なんだろうと思い拾い上げ、しげしげと見ていると昨夜の事を思い出した。しじみのプレゼントだ。
中を覗くと、そこには黄色地にアゲハ蝶模様のシュシュが入っていた。かわいい。
ほっこりした気持ちになり、下に降りるとお母さんが朝食とお弁当を作っていた。
「おはよう」
「おはよう、よく眠れた」
「うん、昨日はゴメンね」
「気にしない気にしない、今日はお母さんの弁当だから楽しみにしてなさい」
うん、と返事して風呂場にいき、シャワーを浴びる。
身体を拭き、バスタオルを巻きつけ、髪をドライヤーで乾かす。よし、気合い入れ直し終了。
そのまま部屋に戻り、
紅あげは、ニューバージョンである。
下に戻ると、ダイニングに家族全員が揃っていた。しじみと目が合うと、くるりとシュシュでとめられた後ろ髪を見せる。
「ありがとうね、しじみ。どう、似合う」
「うん、お姉ちゃんかわいい」
満面の笑顔を見て、あたしは嬉しい気持ちでいっぱいになった。
いつもの朝食風景のあと、たては以外は先に出掛けてもらい、後片付けをしてからあたし達も出かける。
「昨日出掛けたときにね」
たてはが話しかけてきた。
「お母さんが、いつも家事をやってくれてありがたいってお姉ちゃんの事を言ったら、しじみがプレゼントあげようって言ったんだ。だからそれはしじみからじゃなくて、お母さんからだよ」
少しむすっとした感じで話してきたのは、しじみにお礼を言ったのにヤキモチしてるのか。そう思うとかわいくなってきたので、たてはの頭をぐりぐりしてやった。
いつものように別れてからしばらくすると、タカコに出会う。
「待ってたよー、昨日はどうだったの」
興味津々で訊いてくるタカコに、愚痴をかねて昨夜の事を話した。
「あらまあ、青草くんらしいっちゃ、らしいんだけど、そんな事になっちゃったんだあ」
「究は自業自得だからいいんだけど、はっちゃんが気の毒でさ。何とかしてあげたいけど、どうしよう」
「う~ん、とりあえずみんなに相談しようか。カトーちゃんなら、いいアイデア出してくれるかもしれないし」
学校に到着し、カトーちゃんとビトーちゃんを交えて相談するとカトーちゃんがひと言言った。
「あきらめな」
一刀両断だった。眉間にシワが寄っている。それでも眼福するなんて、どういう美人だ。
「優秀かも知れないけど、人の心を考えられない奴なんて一緒にいても不幸になるだけよ。そのはっちゃんてコは、新しい恋に行けばいいんだよ」
カトーちゃんは、究に厳しいな。
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