第23話 12月24日
VRMMOゲーム。
AnDも、『スキア・スレイ・ファンタジー』にも飽きた俺は次の一作品をプレイしてみることにした。
奇しくも今日はクリスマスイブ。自分へのプレゼントとしては申し分ないだろう。
さっそくデータをダウンロードすると、VRヘットセットを被り、ゲームを始める。
クリスマスイブ。
今日は聖夜。
惰性で生きてきたが、ここにきて新たな目標ができた。それは小説家になること。俺の物語はここから始まった。初めて、自分からやりたいと思うことができたのだ。
「キミは面白いね。ここまで生きる意味なんて考えたことなんてないのに」
「そうだね。俺は生きている意味が分からなかった。でも、それでも生きている意味があるのだと思う」
「それはどうしてかな? キミはそれまで意味を見いだせないでいたのに?」
クスクスと笑う彼女。
「あんたがいてくれたから、俺は今の自分を理解できた。違う者、己と違う者。それは鏡」
他人を知ることで自分を知ることができる。他人がいなければ俺という存在はいても、いなくても意味がない。
知るのは他人、分かるのは自分。
他人を知り、比べることで初めて自分を理解できる。自分を理解できたとき、俺は世界とどう向き合うのか、どのようにして生きるべきなのかを知る。
生きているのが辛い時も、他人がいたから生きていられる。俺のことを好いてくれる人、嫌っている人。その中で俺という原石は削り出され、生きている意味が生まれる。
世界の中の一粒。数万、数億人いる中のたったひとり、たかだかひとり。
俺ひとりでできることなんて限られている。自分に救える命など限られている。その無力さ、非力さはたかたがひとりの力。でも、その命が輝いて見えるのは、たたひとりだから。
生きているのはその中のひとり。
そう思わせてくれたのは、キミがいたから。他人がいたから。自己との乖離が他者の輪郭をくっきりさせていく。
嫌いな人も、好きな人もいるからこそ、自分は輝く。自分は生きていける。他者の中にある自分。自分の中にある他者。
他人がいて、初めて自分が生きていられるのなら、みんなが納得できるような応えを見つけたい。見つけなくちゃならない。
「みんなのために……!」
「そうしてキミは生きていくんだね」
「そうだ。俺はそのために生きている。生きていける」
「キミは面白い成長をしたね。そんなキミが私は好きだよ」
俺はまだ成長途中だ。もっと大きなものを呑み込むだろう。
~続く~
※※※
クリスマスイブですね。
内容は適当に書いてみました。ホントはラブコメを書きたかったのですが、哲学的(?)なことになってしまいましたね。
昔はもっと色々と伝えたいことがあったのですが、今はすっかりしぼんでしまいました。
昔よりもエンターテイメント性を意識しているので、その点ではいい成長なのですが、〝伝える〟という意味では少し停滞していました。
僕にとって大切に思えることを書き綴ったのですが、まだ伝え足りない部分もあります。
クリスマス。
楽しいひとときになることを願っています。
ではでは。
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