第3章 サムライVS中世騎士の戦い 編

第19話 プロローグ

 十三世初頭・・・・・・2つの文明が何度となく衝突したその時代、常に紛争の場として登場するエルサレムの広大な城塞都市を一望に見渡せる丘の上を、一人の老人が孫娘を連れ添って歩いていた。


「おじいちゃん、あれがエルサレム?」


「そうだよ、大きいだろう・・・・・・ 」


「うん! 私もあんな大きな街に住んでみたい」


「あの街は、何年も前に大きな戦争があって大勢人が死んでるんだ」


「ふ~ん・・・・・・」


「だがその時、今のお前よりちょっとだけ年上だった一人の異国の姫さまが、もっと大勢の人の命も救ってくれた・・・・・・」


「私と同じくらいの歳のお姫さま~?」


「そう・・・・・・ 異国のお姫さま」


「私も会ってみてみたい・・・・・・」


「おじいちゃんは、あの方に一度だけ声をかけてもらった」


「すご~い! なんて言われたの?」


「『このエルサレムをこれから復興するのはお前たち若者の仕事だ、頼んだぞ』ってな」


「おじいちゃんなのに、若者?」


「そりゃあ、おじいちゃんもその頃は若かったからなあ・・・・・・ 凛とした鋭い声で、おじいちゃんは声をかけられた時おもわずビビっちまったが、妙に優しさを感じるお人だった・・・・・・」


「そっか~・・・・・・ そのお姫さまは今どこにいるの?」


「おじいちゃんがその人に会ってしばらくしてから、突然姿を消してしまったんだ」


「もう会えないのかなあ・・・・・・」


「わしももう一度お会いしてエルサレムの復興ができました、と報告したいさ」


「今頃、どこでなにしてるのかなあ、そのお姫さま・・・・・・」


「お前もお姫さまに負けないようにしっかりこれから働かないとな」


「うん! お姫さまに会えたときに恥ずかしくないようにね。がんばるよ」


 老人と幼い孫娘は、しばらく丘の上にたたずんだ後、しっかりと手をつないでエルサレムの外壁の中へと姿を消していった。


     *****


 視覚障がい者として伴走者とマラソンの練習後の怪しげな飲み屋での謎の失踪から三年、突然甲冑武者姿で現代への帰還を果たした宮下は、その後緊急搬送された病院にて療養生活を送っていたが、三年の失踪の間どこで何をしていたかを一切語ることはなく、主治医らは、一時的な記憶喪失として判断、しばらく様子をみることにした。


 一時は話題を集めた宮下の失踪と帰還の謎は、マスコミも大々的に喧伝してきたが、その喧騒もすでに収まり、一年が過ぎたころ、宮下は再びその姿を消した。


 宮下が再びこの世に帰還するのは、己の娘が結婚の後、孫が生まれる数年後のそのときまで待たねばならないことをまだ誰もしらない。



****

この章は 映画『キングダムオブヘブン』(リドリースコット監督)がモチーフとなっております。興味のある方はぜひご覧いただけると幸いです。

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