第10話  現代五 さとる家と天狗

「なんでおれんちには、仏壇の中にこんなに古びた”天狗のお面”と”一本歯の下駄”が飾ってあんだ?」


 幼少の頃、数年後病気で他界することになる父親に、さとるは常日頃の疑問をぶつけてみた。


「おれもよくは知らんが、先祖は山奥で修行していた山伏だったらしくて、我が家はその持ち物を代々受け継いで納めてあるらしい。詳しい話を聞きだす前にじい様、死んじまったからなあ」


「”天狗のお面”と”一本歯の下駄”ねえ・・・・・・ どんな物語があったのか聞きたかったなあ」


「文献はひょっとしたら裏の土蔵の中にあるかもしれんけどな。暇なときにでもいっしょに探してみるか?」


「うん。夏休みの自由研究にちょうどいいかも」


「どうせわかってみればつまらん話だろうが、ひょっとしたら歴史をひっくり返すほどの話が見つかったりしてな、はは、ありえんか・・・・・・」


「でも想像するだけでも楽しいじゃん。我が家の家系が歴史の一コマに関わっていたかもなんてさ」

 その後、二人で文献探しをする機会が訪れることはついになく、父親はあっけなく他界、さとるが忘れ去っていた”天狗のお面”と”一本歯の下駄”の謎の答えをみつけるのは この先、数十年後のことである。

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