第6話  現代三 まみ①

「え~? まみちゃん、ジョギング始めたんだって?」


 以前から親友のなみちゃんからマラソンの世界に誘われていたけれど、なかなか踏ん切りがつかなかった私が、とうとう走り始めたのにはそれなりの訳があった。


 もともと病弱な身体だった私が何の気まぐれか、近所の海岸近くの林のコースを偶然見つけて走り始めたことがきっかけだった。


 その日、すれ違い様「おはようございます」と声をかけてくれた男性ランナーに、たぶん恋をしてしまったせいだ。


(このコースを走りに来れば また会えるかもしれない・・・・・・)


 その一念がその後、私が継続的に走ることを可能にしてくれた。


 恋ともいえなかったかもしれない。


 何度となくすれ違うことはあっても、挨拶以外の会話を交わすわけでもなく、季節が何度か変わり、私が走ること自体に楽しみを覚えたころ無謀にもついに百キロというとんでもない距離に挑戦する日がきてしまったのだ。


 こんな私の今の姿を 昔の私を知るだれがいったい想像できただろうか・・・・・・


 百キロマラソンに参加するために、マラソンでははるか雲の上の先輩であるなみちゃんと共に新幹線で会場となる私の生まれ故郷に今は移動の途中だ。


 これから始まる未体験ゾーン・・・・・・ どんなことが起こるやら・・・・・・


 目的地までの心地よい揺れのなかでいつしか私は夢の中へと吸い込まれていった。

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