第10話 僕たちは必ずまた巡り合う

 意識が飛びそうになる中、僕はルーナを背負って古屋に向かった。僕とルーナの血が混ざり合い地面に滴り道標になる。

 手足が冷たい、力がだんだん抜けていく。僕は古屋を視界に捉え、最後の最後の力を振り絞る。


「ルーナ、着いたよ。僕たちの古屋だよ。」


 僕は古屋に入った瞬間、その場に倒れた。ルーナを自分の胸に閉じ込め静かに涙を流す。


「君を守れなくれごめんね。君を君を・・」


 もっと幸せにする筈だった。



「こんなのでどうかな?」

「いいんじゃない?」

 僕たちは古屋を補強する。


「今度、遠くへデートしに行こう。」

「いいね!楽しみ!」

 僕たちはデートをする。


「こらっ、あんた達!ご飯の時間よ!」

「はーい」

「はーい」

 僕たちの子供達と一緒にサンドイッチを頬張る。


 僕はそんな未来を夢見ながら、とうとう永い眠りにつく。

 

「ルーナ、僕を拾ってくれて本当にありがとう。」


 やがて黄色の光とオレンジ色の光が静かに天に昇っていった。



「ジュア!!」

 一人の男がやってきて、ジュアの身体の前に跪いた。魔力の乱射に気付いて、血の道標を辿りある冒険者がやって来たのだ。


「ジュア・・お前は、お前は臆病者なんかじゃなかった。お前は立派な上級冒険者だ!」

 男は何かに後悔している様に泣き崩れた。


その後戦争はどうなったのかは分からない。


ただ願う事は、次に目が覚めた時は平和な世界が訪れている事だ。




<200年後>

「お母さん!お花屋さん行ってくるね〜」

「はーい、気をつけるのよ。」


 とある少女はお花屋さんに向かい、自分のお気に入りのお花を探していた。


「おばさん!このお花ってなんて言う名前?」

「これはアネモネよ」

「じゃあこれ下さい!」


 彼女は鮮やかな紫色のアネモネの花を手にとり、おばさんにお金を渡す。



「いいかい、男は堂々と行くんだ。お前は強い子だから、きっとうまくいくよ!行ってこい。」


 少年は父親に背中を押され花屋に向かって歩く。緊張でカチコチになりながら、兵隊が行進しているかの様な歩き方をする。


「や、やあ。僕とお弁当を一緒に食べてください!」


 少年は右手で弁当を差し出し、左手に持っている花も一緒に差し出す。


「あら、キキョウじゃないの!綺麗な紫ねぇ。そのアネモネにぴったりだわ。」


 何かに心躍らす花屋のおばさん。

 遠くの物陰から、頭だけ出して我が子を見守る父。


 穏やかで暖かい風の中、少女は微笑み、やがて答えた。


「はい、喜んで。」


 

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僕は野良猫に拾われ、そして恋をする ロッキーズ @ryulion

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