第7話 君を守りたい
戦争が一旦落ち着き、束の間の平和が戻った。
今日も僕は、いや、今日僕は彼女に思いを伝えに行く。
穏やかな森の中、微風が僕の背中を押し、葉っぱと葉っぱが擦れ合う音が僕に頑張れって言っている様な気がする。
「や、やあ。また来た。」
僕は少し照れ臭くて、ぎこちない微笑みを浮かべた。
「・・・待ってた。」
「戦争があったんだ、僕も戦場に駆り出されてて。なかなか会いに来れなかった。」
「怪我は!?何処か痛めてない!?」
彼女は反射的にそう言った後、少し赤面してしまっていた。
「ううん、全然大丈夫。心配してくれてありがとう!」
言うんだ。
「ねえ、君に・・な・・名前をつけてもいいかな・・」
僕は緊張で、急いで出てこようとする心臓を思いっきり飲み込む。
「私に名前をくれるの・・?」
彼女は初めて僕に驚く表情を見せてくれた。
「ルーナ、僕は君をそう呼びたい。」
言った。
「・・・・・」
ルーナは込み上げて来る何かが抑えられなくなり、とうとう溢れてしまう。
嬉しい、嬉しくて涙が出る。
「嬉しい!ありがとう、ジュア!」
僕は生まれて初めてこんなにも素敵な笑顔をみた。僕の名前を呼んでくれた瞬間、僕は決めた。
誰よりも気高く、誰よりも綺麗で、誰よりも幸せそうな笑顔。
彼女の笑顔は僕の世界だ。
絶対に守る。
「ルーナ、僕は君を守りたい。君の事が・・好きだ!僕は階級なんて気にしない、これから何が起ころうと、君を裏切らない。一緒にいてくれないかな。」
心臓の音以外何も聞こえない。
「私もジュアと一緒にいたい・・」
私は最低辺階級の野良猫、何を望む権利もない。だけど、神様一生のお願いです、彼と一緒にいさせてください。
「本当に!?」
僕は最高に幸せな気分になった。飛び跳ねたい気持ちを抑え、そっとルーナに両手を差し伸べる。ゆっくりとルーナの両腕を掴み僕の胸に引っ張る。緊張しているのか彼女は少し震えていた。
そして僕とルーナの距離がゼロのなる。ルーナを自分の胸の中に埋め、しっかりと抱きしめた。
僕はルーナの刺青の入った手を握り締め、お互いの辛かった過去の話などを包み隠さず全てを打ち明け、お互いを受け入れた。
「ジュア、あなたが大好き。」
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