第4話 名前を呼びたい

 あの日から僕たちは何度も会った。

 相変わらず笑ってはくれないが、尻尾は正直に反応してくれた。彼女と一緒にいる時だけ、本当の自分に戻れる様な気がする。

 静かな月明かりの様に僕を照らし、見守ってくれる。

 僕は彼女に惹かれていった。


 失いたくない、

 僕は今を大切にしたい、守りたい。

 心の底からそう思った。



 彼はあの日から何度も会いに来てくれた。

 二人でおいしいお弁当を頬張りながら、彼の話を聞く、それが私の唯一の楽しみになっていった。

 彼に出会った日から毎日が"暖かい"。今まで日陰で暮らしてきた私を照らしてくれる、私だけを照らす小さな太陽。

 いつしか私は暖かく接してくれる彼に惹かれていってしまった。


 彼に会いたい、

 次は彼の悩みを聞きたい、そして私の話も聞いてもらいたい。

 生まれて初めて私はそう思った。



彼女の名前を呼びたい。


彼の名前を呼びたい。


「ルーナ」

 次会った時、そう呼ぼう。


「ジュア」

 次会った時、私は素直になろう。


彼と彼女はそれぞれの住処から空に浮かぶ満月を見ていた。



 

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