第2話 なにも

家に帰ると、親が小さな声で、おかえりなさい。と俺に告げた。

ただいま、と小さく返すと、

「お葬式、行くんでしょ」

「……多分」

「多分ってなに」

「……行くと思う」

「わかった」

俺はそう言い、二階にある自室に向かった。

ドアを開くと、真っ暗な空間。

電気をつけ、ベッドに寝転ぶ。

……そういえば、ここにも、あいつ来てたな。

よくお菓子食べてたっけ。

んで、お菓子俺が最後のひとつ食べたら、あいつリスみたいにほっぺた膨らませて拗ねてたっけ。

と思い出す。

あのほっぺ、もうみれないんだ。

俺はポロポロと、また泣いていた。

立ち直れることなんて、多分ない。

あいつは、唯一無二の、俺の『彼女』だったんだ。

まだ、俺には。

なにもわからない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る