第20話 騎士科編:学院2年生夏③ファラウトはAB型です


「ということで、真正面から探ってもらってもいい?」とファラウトに提案した。


今日は、アルゲーティン家にエリザとやってきた。

今は、執務室でファラウトと先日の奴隷の件を相談中だ。


「ふ〜ん、なるほどねぇ〜。こっちにはそういう問題が上がってきてない...

やっぱり、行政にも騎士団にも小蝿がいるんだろうね、どこかで意図的に止められてるとしか考えられないねぇ。

わかった。いいよ、摘発しようか。

僕の実績にもなるからね〜。

じゃあ、エリザ?お願いがあるんだけど、君が自由にできるお金をあるだけ貸してくれる?お金に物を言わせて情報を集めようと思うんだけど。

摘発後には戻ってくると思うから安心して。

そうだなぁ。

情報が集まるまで2週間くらいかかるなぁ、きっと。

それからアリスンが協力してくれると、うまくいく確率が上がるんだけど協力してくれるかなぁ?」


ファラウトは、私の説明を聞くが早いか頭の中で素早く計画を立て指示を出す。


「私は、問題ないですわ。ファル様のいう通りにいたしましょう。信頼してますので。

そうですね、大体このくらいは自由にできるお金があります。」

エリザは、さらさらと小切手に金額を書くとポンっとファラウトに渡した。


初めて知ったよ、ファラウトのことファル様って呼んでんのか。仲が良くて何よりだね。

エリザは上級貴族らしく、平民5年分の給料をぽんと出した。


「うん、これでプラス5人買えるかなぁ。これから奴隷商人の店でここ半年くらいで奴隷になった子を手あたり次第買ってくるよ〜。

その子達の出身地の統計をとって分布地図を作成した後、攫われやすい場所を見繕うからねぇ。

そうしたら、アリスンの出番だよ。

攫われてくれるかなぁ?囮捜査だね。

アリスンなら、年齢的にも見た目もちょうどいい。

とりあえず二重契約書はこっちでおさえたいものだから、偽名で署名してくれるといい。

あと、血判も偽造してねー。万が一の時契約が執行されないようにね。

偽造の仕方?練習してねー。

豚とかの血を隠し持って使うようにして。僕もよく厨房からもらって一つ携帯してるんだ。役所仕事だと上からの無理難題の契約を欠かされる時があってねぇ。血判を偽造しとくといざって時助かるだろう?」

小さな試験管を懐から出してフリフリと見せてくれた。


ほんとに持ってるよ、この人....。エリザも私もドン引きだよ。


「ファル様、血の判別ってどうするんですの?」

エリザは引き攣った顔をしながらも気になることを聞いた。


「それはね、僕もわからないんだー。だけどなんらかの試薬を使うみたい。A型B型とかで判別されたらたまたま一致してしまうことがあるかもしれないから、人間以外の血液を持ち歩いてるんだぁ。僕ね、血液型AB型なんだ。で、豚は9割がA型残りはO型なんだ。だからちょうどいいよねー。」

ニコニコ人畜無害な顔をしながら、マッドサイエンティストみたいなことをしゃべるファラウト。


なんかモヤモヤする〜っ!!


だって、持ち歩いてるって、おかしくない?

ポロって落としたら、かなりサイコパス扱いされるよ。蜘蛛の子を散らすように人が離れる未来が見えるよ。

というか、年がら年中、契約書の無理じいされる行政官ってどうなの?ブラックな職場なの?

えっ、コンラッドの兄ちゃん大丈夫かな。

抜けてるから、いい鴨だよね。

それにしてもこの世界、科学が発達してないくせに不思議試薬多いな。王族の入れ墨の判別も試薬だった。

どういうことだろう?

もしかしたら、王族に近しい人に魔法を使える人がいたりして。

適合の魔術が使えるなら簡単に判別できるんだけど....。


うーん、私はO型だけど、どの動物がいいんだろう。

「ねぇO型の私は何の血液を持てばいいの?」


「一番いいのは魚かなぁ、魚はA型だからね。牛でもいいんだけど。牛は、ほとんどB型だけど、たまにAとOがいるんだよねー。手に入らない時だけ牛で代用してみたらいいんじゃないかなぁ。

そうだ、あとで唐区の女傑を紹介してくれる?そこの子達にも話を聞かなきゃいけないし。何より、繋がりが欲し〜い。」

ちょっと目が光った気がしたよ...。めちゃくちゃ利になりそうだもんね。

胡蝶姐さんとファラウトの会話かぁ。

腹に一物もニ物も抱えてる同士だから、真っ黒な空気が流れそうだなぁ。 

くわばら、くわばら。




ところでファラウトは、行政官のくせになぜこんな知識があるんだろう?

底が見えないところが恐ろしいできるござるよ...。

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