第7話学院編:学院1年生秋-芸術祭とペーパーナイフ

ぽんっ!ぽ、ぽんっ!ぽんっ!


いわし雲が浮かぶ澄んだ空に、芸術祭の始まりの花火が上がって白い煙が雲に混じった。

今日は、自分たちの能力を国にアピールできる一大イベントだ。


この評価によって、国のどの官職につけるか決まると言っても過言ではないのだ。


文官科の人たちは、今までの準備でひととなりを役人たちにアピールして印象をつけ、今日の実績を見に来てもらい将来を確実にする。


騎士科は、当然武闘会で上位に入ると騎士団に入りやすくなるから気負いたっていた。


1年生のアリスンたちは、やることがないので物見遊山である。


文官科の模擬社交パーティーは、親や偉い方を招いて気配りができるかどうかを見るためのものなので、アリスンたちはそこには行かずに騎士科の盤上戯で上級生に挑んだり(チェスのようなもので地形も関係する戦争ゲームだ。)、模擬店で美味しいものを食べたりした。


途中、雑貨を売る店でハスウェルが立ち止まった。

「おっ、見ろよ。剣の形のペーパーナイフだ。1つ俺欲しい。ちょっと待っててくれないか。買ってくる。」とスタスタと店に入っていった。


「あら、柄の部分に自分の好きな石を入れれるみたいよ。素敵よ、私も買おうかしら。アリスンもお揃いで買わない?」

エリザに可愛くおねだりされたら、買わないわけには行かない。女が廃る!


「もちろんいいよ。私も欲しいと思ってた!(思ってなかったけどね。)

買うよ!コンラッドも。旅は道連れっていうでしょ!?」


「えー、なんか意味が違うよぉ。でもいいよ、お揃いっていいね。」

3人も遅れて店に入っていった。


「ん〜、どれにしようかしら?やっぱり定番の目の色にしましょう。この中ならグリーンクォーツァイトね。」

澄んだ緑の天然石をエリザは選んだ。


「アリスンは、髪の色だろ。目の色は、なんかパッとしないもんな。」

むかぁ!ハスウェルめぇ、天誅だ!


どすっ。


お腹の鳩尾に重い一撃を叩き込んだ。


「ぐふぉっ。....中身が出る....だが、いいパンチだ...騎士科だ、騎士科に入ろう...天職だ、アリスン...。」

ハスウェルは床に沈んだ。


ーうん、アリスンの目のことは言ってはいけないんだね!覚えたよ。 ー

たらら らったら〜♪

コンラッドはアリスン経験値が、さらに1上がった。 


「アリスンは、この辺の石がいいんじゃないかな。レッドアンバー、赤瑪瑙、レッドスピネル、あっ、レッドジェードがあるよ。しかもジェダイドだ、珍しい!」


「レッドジェード?珍しい物なの?」エリザは知らなかったようでコンラッドに尋ねた。


「うん、かなり貴重なんだ。多分、レッドクォーツァイトだと思って卸したんだと思う。この価格は有り得ない。...すごくお得だよ、アリスン。」


「そうだね、これにするわ。レッドジェードは限界突破や負けられない戦いなどの意味があって、交戦的な私にぴったりでしょ?(あと、生まれてきた意味を教えてくれるのよね。私が何十回も人生を歩んでる意味があるなら知りたい。...呪われた意味があるなら知りたい。)」


レッドジェードを手に取って確認。こっそり魔力を流してみてみたら、途中で反発されることなくスッと吸い込まれていった。

いい石ね。これなら石に魔力を貯めといていざって時取り出せるわ。


「コンラッドとハスウェルは、碧眼だから青色でしょ?どれにするの?」


「僕は、青の色でいいのがあればなんでもいいかな。アリスン、僕に合う意味の石はどれかな?」とアリスンに丸投げしてきた。


「うーん、ソーダライトがいいんじゃないかな。知性を高めて、鋭い洞察力と直感力を与えてくれるから、コンラッドには合いそうね。」


「僕には、たしかに直感力が必要かもね。優柔不断だから。」

コンラッドは、ソーダライトを店員に渡してはめてもらった。


3人が決まったので、ハスウェルを見てみたらまだ悩んでる。

「なあ、自分を表す石じゃないとダメかな?俺憧れてる騎士団の隊長がいてさ。そこの隊旗が黒の龍で、かっこいいんだ。黒のこれにしようと思う。どうだろう?」


「オニキスかぁ魔除けの石ね。いいと思う。(黒の龍なんて、私を呪った神じゃない。黒龍の騎士隊、なんてもの象徴にしてるんだ...)」


4人とも石を決めて、ペーパーナイフにはめてもらった。


「よし、そろそろ闘技場へ行こうぜ。午後から、大会が始まる。見やすい席で観戦したい。」

意気揚々とハスウェルが急かす。


アリスンは、ポケットにペーパーナイフを入れてみんなと闘技場に早足で向かった。

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