■秋崎のマンションまで残り百メートル
「さて。秋崎の家までどのくらい?」
「お持ち帰りまであと五分。『出会って三秒』とはいかないね」
「コンビニ出た途端それかい」
「コンビニと言えばさ。会計の時に小銭貸してって聞くと、『意味わかんない』って返してくる人たまにいるよね」
「ああ、お札を崩すのがめんどくさいって感覚を理解しない人」
「そ。相手の言ってることはわかるけど、なんかわかりあえない」
「わかる。『ちょっと背中かいて』って頼んだら怒られた気分みたいな。この辺りの感覚があうあわないって、長いつきあいには大事かもね」
「でしょ? だから夏椿帰ってよ。タクシー代出すから。そんで来年も再来年も、ずっと一緒にいよ」
「秋咲が性欲を我慢するって考えはないわけ?」
「正直さ、自分でもどうしていいかわかんないんだよ」
「それって恋っぽくない?」
「違う。苦しいのは一緒だけど」
「そっか。あたしは秋咲を苦しめてるのか……」
「ところで夏椿、買い忘れない? ここが最後の自販機になるけど」
「ないかな……なに? ちょっと近い」
「夏椿って、くちびるかわいいね。ちっちゃすぎず、おっきすぎず、グロスなしでもちょっとつやっぽい」
「家が近づいてきて露骨に口説くのやめろ!」
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