第4話いざ!契約結婚に向けてまっしぐら!

『やった~!契約結婚できた~』


私はシリウス様が帰った後、万歳しながら思わず心の中で叫んでいた。


『良かったわね。ミリー』


『ありがと。シリ。それにふうちゃんもありがとう』


『へへへ。いいってことよ♪』


やったわ!これで…。私の自由で気ままなスローライフが確約された。

後は条件を出し合って、滞りなく結婚してしまえばいいだけ!

ああ。嬉しい。まさかこんなにあっさり上手くいくなんて♪

来週にはシリウス様と一緒に条件のすり合わせだから早速お父様に報告しないと!

私はその足で父の書斎へ行き、結婚することを告げた。


「ほんとうかい!ミリー…ほんとうに…」


「はい!お父様。私シリウス様ととっても気が合うんです」


「そうか…そうか…よし!こうしてはおれん。早速結婚の準備だ」


「よろしくお願いいたします。お父様」


「母さん!母さん!ミリーが結婚するぞ」


「まぁ!ほんとうに?あなた」


母まで部屋にやってきて大喜びだった。

相変わらずこの二人…。若いわね~。

とてもじゃないけど子供が三人もいる夫婦に見えない…。


「ミリー!結婚するんだって!」


「リゲルお兄様」


「ああ…なんてことだ。僕の愛しのミリーが結婚するなんて…」


「リゲルお兄様落ち着いてください」


兄は私に思いっきり抱き着いてきてきた。

リゲル・ブログナー。彼は私の兄で25歳。私と同じで赤みがかた金色の長い髪。

瞳は母譲りのグレーの瞳でとても整った顔をしている。

顔立ち値は父に似て可愛い系。アイドルみたいな顔。

ちょっとシスコン気味だけど優しくてとってもイケメン。シスコンだけど。


「安心しろリゲル。相手はシリウス・ストロガノフ騎士団団長だ」


「なに?!シリウスだと」


「あら。お兄様シリウス様をご存じなんですか?」


「知っているも何も大親友さ!そうか…シリウスと」


「まぁまぁ。これも神様の思し召しだわ~早速準備をしないと♡」


「そうだね母さん。やっとミリーの花嫁姿が見れるんだ」


ニコニコしながら両親が準備のため出て行ってしまった。

ほんとうに…。ラブラブで羨ましいです事。ほほほ。


「それにしてもお兄様がシリウス様と知り合いだなんて初耳ですわ」


「ごめんよミリー。隠していたわけじゃないんだ。彼とは騎士団養成時代からの付き合いでね」


「まぁ!そんな前からですの?」


「ああ。シリウスなら安心だよ。あいつは真面目で曲がったことが嫌いなやつだからな」


「それなら私は安心してお嫁に行けますね」


「…でも!でも!兄さんはミリーと離れ離れになるのは悲しいよ」


そう言ってまた盛大に抱き着かれてしまった。

ほんとうに…。この子にも困ったものね~。

いい加減妹離れしないといけないんだけど…。

因みに私には姉もいる。27歳でもう随分と前に嫁いでいて二児の母。

甥っ子、姪っ子がひ孫のようで可愛いのよね~♡うふふ。

姉はどちらかと言うと母似で綺麗系美人。

真面目で躾に厳しく優等生の様な性格だけど、それは全部私の為。

今はこまめに手紙を送ってくれて私の心配をしてくれる優しい人だ。


「お兄様も…早く結婚しないとですわね」


「そうだね…。でももうしばらくは独り身を楽しむさ♪」


まぁ!この子ったら…。

私の結婚が落ち着いたら誰かいい人探して上げなきゃ!

このままでは宝の持ち腐れだわ。いいDNAは後世についたえないと!

私は変な使命感に燃えつつ、兄に別れを告げて自分の部屋に戻った。


『ようし。さっそく条件を書きだすわよ~♪』


『ノリノリね。ミリー』


『当たり前じゃない。シリ!やっと私の望みが叶う時が来たのよ』


『ふふふ。そうね…あなたが幸せなら私はそれでいいわ』


『ありがとう…シリ』


私は条件を紙に書きだすことにした。

えーと…。まず譲れない条件はっと…。

私は夢中で条件を書きだしていくのだった。



~1週間後~


「お久しぶりです。シリウス様」


「久しぶりだな。ミリアーティ嬢」


今日はシリウス様と契約結婚の条件に付いて話し合う日だった。

さっき一通り家族との面会を終えて今はテラスで二人きりだった。

正確には私の傍にはシリが。彼の傍にはペンドラゴン様がいる。


「ではサクッと条件を決めて、お互いのお話しをしましょう♪」


「ああ…。わかったそうしよう」


私は紙に書いてきた契約結婚の条件を彼に差し出した。

そして彼も条件を書いたものを私に渡してくれた。


彼が書いていた条件は三つだった。

その一。お互い恋愛感情は一切持たない事。

その二。夫婦生活はお互いの意思を尊重する事。

その三。夫婦で出席が必要な公式の場には必ず夫婦で出席する事。


とまぁ。あっさりしたものだった。

なるほど…。これなら全然オッケーじゃない♪

むしろして当然ね。


「クス…」


「…?何か変なところでもありましたか?」


シリウス様がひっそりと笑い声をあげているのを聞いて不安になってしまった。

私…何か変な事でも書いたかしら?


「いや…すまない。この食事は朝晩一緒にとることってところが…面白くてな」


「そうですか?とっても大事な事ですよ」


「そうか?」


「ええ。お互い他人で愛情は無いんです。絆を深めて信頼を築くには食事を一緒にとることです」


「ふむ…考えたこともなかったな…」


「あとほかの条件は大丈夫ですか?」


「ああ。問題ない。これでいこう」


「ありがとうございます!では…お互いに書類にサインしましょう」


「分かった」


私は手早く書類にサインをした。

私が書いた条件は5つ。


その一。お互いの自由を尊重する事。

その二。食事は朝晩必ず一緒に取る事。

その三。子供は持たない事。

その四。お互いの不利益になるような行動はしない事。

その五。契約内容は1年に一回見直しする事。


以上だった。

ほほほ。シリウス様があっさり了解してくれて良かったわ~。

しかもシリウス様の条件も厳しいものではないし。

きっと悪い人ではないのね…。条件を見ればわかるわ…。


私はサインした用紙をシリウス様に渡し、シリウス様から用紙を受け取った。

これで契約成立だった。

後は結婚式を挙げて、お披露目会をすれば晴れて自由の身だ!


『ようし。もう話は終わったか?』


『ペンドラゴン様!』


『お前は…また勝手に出てきて…はぁ。すまないミリアーティ嬢』


『いえ。お気になさらないでください。私もお会いしたいと思っていた所です』


『うむ。そなたは心の広い女子だな』


『恐れ入ります』


相変わらず、艶めく赤い鱗に覆われた巨躯のペンドラゴン様。

ああ…何という立派な翼に爪…。鱗もキラキラしててとても綺麗だわ…。

さっそくメモしないと!ぜひ小説に生かしたい!


「前から気になっていたのだが…君は何を書いているんだ?」


「これですか?小説に生かすために何でもメモするようにしてるんです」


「なるほど…。そんなに小説を書くのが好きなのか?」


「はい!大好きです」


「…っ!!」


大好きだと言って笑いかけたところ、シリウス様は驚いた顔をして黙ってしまった。

あららら。私何か変な顔してたかしら?それともおばあちゃん臭かった?

最近は随分と若い子の仕草とか見についてきたと思っていたんだけどね~。


「あの…シリウス様?」


「い…いやすまない。なんでもない気にするな」


「そうですか。シリウス様は好きな事はないんですか?」


「俺は…特にこれと言ってないな」


『こいつはつまらん男よ。仕事ばかりして遊び一つせん』


『ペンドラゴン。余計な事は言うな』


『ふふふ。お仕事が趣味なんですか?』


『えっ…?』


『ブハハハ!やはり面白い女子だ!よし。そなたの事は今日から名前で呼んでやるぞ』


『ありがとうございます。ペンドラゴン様』


『ちょっと!さっきから聞いていたら…私のミリーに生意気よ。ペンドラゴン』


『ふん。なんだ時の精霊ばばあか…。我が女子をどう呼ぼうと我の勝手だ』


いきなり怒った口調で話に割り込んできたシリ。

なになに?ペンドラゴン様と知り合いなの~?ワクワク♪

私はその会話の内容をすべてメモに取った。

あああ!!楽しいわ…。これも小説に生かせそうな内容ですもの…。

ドラゴンと喧嘩する精霊なんて面白すぎ♪


『二人は知り合いなの?』


『知り合いなんかじゃないわ!ただの顔見知りよ』


『こんなばばあと知り合いなどと言われても不愉快だ』


『なによ!あんたもじじいじゃない!』


『そなたよりは若いわ!』


『あんたの方が年取ってるわよ!いい加減なこと言わないで』


『ふふふ…。喧嘩するほど仲がいいんですね~』


『仲良くない!!』


二人そろって同じようにし否定してきた。あらあら…。

ますます仲良しじゃないの~。普段は喧嘩しているけど本当は想い合っていて…。

種族を超えた愛!困難を乗り越えはぐくむ二人の絆!

あああ。いい小説が書けそうだわ~。

そんな二人の言い合いには目もくれず、シリウス様が話しかけてきた。


「ミリアーティ嬢はなぜ小説が好きなんだ?」


「ミリーでいいですわ。シリウス様。私は物語を綴ることが好きなんです」


「物語を綴る?」


「はい…。自分の中で想像したことや考えたことを文字で表現する…。それが人に伝わり感動を与えることが出来た時…とても喜びを感じます」


「そうか…。すごいな…それほどまでに好きなんだな…」


「はい。三度の飯よりも好きですわ♪」


「さんどの…?なんだ?」


「あ…。ご飯を頂くよりも好き。という意味ですわ~ほほほ」


いけないいけない。ついつい…楽しくて日本語言っちゃった…。

日本語の表現は独特だからこちらの言葉使いにはない表現が多い。

これから一緒に暮らしていくなら気を付けないと…。

彼には私が前世の記憶をもっていることは言わない方がいい。

とシリに釘を刺されてしまっている。

今普通に暮らせているのだからわざわざ言う必要もないという事だった。


「ミリーは時々変わった言葉を使うな…。それは小説独特の表現か?」


「えっ?…ええ。まぁ…そんなところです」


「そうか…」


ふと彼がティーカップに視線を落として、頬を緩めた。

可愛い…。なんだ。そんな顔をもできるんじゃないこの子は…。

きっと仕事柄、あんまり笑えないんだわ。



「シリウス様は微笑んだ顔も素敵ですね」


「なに?」


「さっき笑っていましたよ?」


「俺がか?」


「はい!綺麗なお顔立ちだから見ていて幸せです♪」


「そうか…」


そうです!複眼です!ありがとうございます。シリウス様。

こうして若いイケメンとお茶できるなんて、おばあちゃんにとっては天国です。

はぁ~。生きててよかった~。まぁ…一回死んでるけどね~。


こうしてシリウス様との契約交渉は穏やかに幕を閉じた。

結婚式は3か月後。

それまでは、週に1度シリウス様が家に通ってくれることになった。

シリウス様と良好な関係を築いていることを周囲に認知してもらう為だ。

結婚式の費用はグロブナー家が全面的に出し大々的なものにするそうだった。

両親は張り切って準備を進めている。

まぁ…娘の結婚って嬉しいものよね~。私も娘3人の結婚式は楽しかったわ…。ふふふ。


シリウス様に聞いたら式は何でもいいとのことだったので、私は両親に一任した。

ああ!早く結婚してしまってスローライフを満喫したい!


私は胸を弾ませながら結婚式までの日にちを指折り数えて待つのだった。

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