第1話異世界転生しちゃいました

私が異世界転生していることに気が付いたのは生まれて少し経ってからだった。

最初のうちは記憶はぼんやりしていて霧がかかったかのように曖昧だったけど

半年たったころに自分が前田とわだと自覚した。

見たことのない天井、聞いたことのない言葉に全く知らない文化…。

そして父や母が私の顔を覗き込むたびに日本人離れした顔立ち。

それを見てわたしは確信した。ここは日本ではない…そもそも地球ではない…と。


そう何を隠そう私。前田とわは前世の記憶を保持したまま異世界に生まれ変わってしまったのだ。

それに気が付いたときは最初は衝撃だったけど、割と冷静に事実を受けとめた。

まぁ…96歳だしね。経験だけは沢山しているからね。ふふふ。

もうなってしまったものは仕方がない!

早々に割り切った私はこれからどうしていくかを考えるようになった。


私の生まれた世界はルビアント王国と呼ばれる国。

その中の四大公爵家のうちの一つ。グロブナー公爵家。

超お金持ちなうえに、めちゃくちゃ性格が良くて優しい両親、妹を愛してやまない優しい兄と姉。

そんな人達の次女として私は育った。

とても恵まれた環境だった。

しかも!!私自身は両親の美貌を受け継いで超がつくほどの美少女。

というか家族全員、美男美女。キラキラオーラが凄いのなんのって…。

見ていてとても癒される。美しさは万国共通なのね~!


赤みがかかった金色の長いふわふわの髪の毛に、父親譲りの深緑色の大きくてなつぶらな瞳に

小さく可愛らしい唇…。どれをとっても完璧だった。

そのせいもあってか私は小さな頃から『薔薇姫』とか、『窓際の麗人』とか言われているほどだった。

そのむず痒くなるような通り名は貴族ではあるあるだそうだった。


最初のうちは言語が違うため理解に苦しんだけど

ある程度動けるようになった3歳になったときに本を読んだりして理解することが出来た。

後はもう一つ。大きな手助けとなったことが精霊たちと意志疎通が図れたことだった。

彼らは私が赤ん坊の時から話しかけてくれていて、私も念じれば頭の中で会話することが出来た。

超便利な自動翻訳機のような役割を果たしてくれていた。


『おはよう!ミリアーティ。今日もいい天気ね』


『おはよう。精霊さん。今日は何を教えてくれるの?』


『ふふふ。あなたが知りたいならなんでも!あなたは私たちにとっては特別なの』


『私が特別?』


『ええそうよ!あなたは『精霊の庇護者』精霊が守り愛すべき存在なのよ』


『精霊の庇護者…』


その事を教えてくれたはの時を司る精霊『シリ』

彼女はいち早く私の存在に気が付き、私の所へきて話してくれた。

そしてシリは私が最初に契約した精霊だった。

時にかかわる事なら何でも彼女は叶えてくれる、物凄い精霊だった。

勿論、願いを聞いてもらう為には対価が必要なんだけど。


彼女は私が3歳の時に契約して以来ずっと一緒にいる。

もう親子も当然の関係だった。

彼女には何でも話をしていて、私が前世の記憶を持って生まれたこともしっている。

数少ない理解者でもあった。


それから私は数々の精霊たちと契約を交わしていった。

普通は一人につき一人の精霊らしいのだけれど、私はその『精霊の庇護者』によって

何人も精霊と契約することが出来たのだそうだ。

精霊には4段階の階級があって一番下が小精霊、その次が中精霊その上が大精霊。

大精霊の上には精霊の女王ただ一人が君臨してて私が契約したシリは

女王の次に力のある大精霊だった。

普通は出会う事もないし話すこともできないくらい珍しい事だけど

私のスキルはそれをいとも簡単に成し遂げてしまったのだ。


あと私が生まれたこの世界は、精霊と魔獣が共存し魔法が存在する世界。

生まれながら精霊使いか、魔獣使いのどちらかの適性をもって生まれる。

その適正によって自分の将来の仕事が決まるという面白いシステムだった。

精霊使いは精霊と契約することでその力を借りて様々な魔法が使える。

例えば医療系や空間移動、天候の操作、建築物の建造などあらゆる生活面に必要な要素が多く

この国の大多数が精霊使で国民の70パーセントが精霊使いと言われている。


一方、魔獣使いは全体の30パーセント。かなりの少数派だった。

魔獣と契約することがそもそも難しいという所と、魔獣使いの適正者が少ないことが要因だ。

その為魔獣使いに認定された人達は強制的に各自治体の騎士団養成訓練学校に通い、3年ほどで卒業。

卒業後は騎士団に入団しこの国を守ることが義務付けられている。

なんとも可哀想な職業だ。

その騎士団の中でも王国騎士団はエリート中のエリート。

100名ほどいる卒業生の中で上位10名しか毎年入団することが出来ないくらい狭き門だった。

因みに私の兄もこの狭き門を突破した一人。

王国騎士団に所属をしている。


いや~、ほんとに女の精霊使いに生まれて良かった~。

騎士団なんて入ってしまったら、常に体を鍛えて国を守るために従事しないといけない。

とてもじゃないが私の好きな小説を書きながら生活することは難しい。

だから私は精霊使いだってことを知ったとき最初はやったー!!って思って心の中でガッツポーズしたわよね。

今日本で流行っている異世界転生!私が日本にいた時に何冊も本を読んで知っていた。

憧れの設定。とっても面白そうじゃない!これは小説に生かすことが出来るすごい経験。


しかも私はお金持ちの次女で、美少女。

さらには「精霊の庇護者」という特殊なスキルを持って生まれた。

自由な立場にありつつ精霊の力を借り放題。

これは自由な人生を送るにはとってもあり難い状況だった。ナイスだわ女神様♪

これなら私の望みである自由気ままなスローライフを送ることが出来る。

な~んて暢気な事を考えていたのだけれど、その望みはあっさり打ち砕かれる。


それは父から「結婚しろと」と言われたためだった。


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