私と契約結婚してください!~女神様がご褒美くれると喜んでいたらまさかの異世界転生!?96歳のおばあちゃんは自由気ままな人生を送りたい~

フォレスト

プロローグ

「おばあちゃん!作家デビュー50周年おめでとう~」


「ふふふ…ありがとうね…」


今日は私が作家デビューして50周年。

ほんとうに…月日が経つのはあっという間ね…。


私の名前は前田とわ。今年で96歳になった。

職業は小説家で一応ベストセラー作家と呼ばれている。

3人の娘と5人の孫がいてとても毎日賑やかにすごしていた。

夫とはずいんぶと昔に離婚して今は独り身だった。

今日は作家デビュー50周年を記念して皆が私の家に集まりお祝いしてくれている。

ああ…私の人生は幸せな人生だった。遅咲きだったけど作家デビューし成功を手に入れた…。


私は祝ってくれている家族を見ながらそう思っていた。

辛いこともたくさんあったけれど、それでも楽しいこともたくさんあった。

沢山の人に囲まれ、多くの人達に出会い愛された。

私が人生を掛けて生み出した小説家も、世間の人達には受け入れられ今も愛され続けている。


「もう…何も思い残すことはないわね…」


楽しそうに話している家族を見守っている時にふとそんな事が頭をよぎった。

幼い頃から文章を書くことが好きでひたらすら文字を綴っていた。

小学生の時先生に作文を褒めてもらえた。

初めて応募した作品は20歳の時。

審査員には酷評だったけど可能性があると言ってもらい

地道にコツコツと作家への道を切り開いていった。


思い返せば返すほど、満足のいく…人生だった…。

ただ一つ心残りと言えば、自分の思うような作品を綴ることが出来なかったこと。

デビュー作がミステリー小説だったため、そのイメージが定着してしまい

それ以外の作品を書くことは容認されなかった。

もっとのびのび自分の書きたい小説を書きたかった…。

恋愛小説とか、冒険ファンタジー小説とか…なんでも…。

でも、イメージを崩すことができずその夢はかなう事はなかった。


こんな事ならちょっとくらい…我儘を言えば良かったわね…。

それが私の心残りだった。


「ああ…なんだかもう…眠いわね…」


「おばあちゃん、大丈夫?」


孫娘が心配そうに顔を覗き込んできた。聡明で優しい子だ。

彼女達にはみんな幸せになってほしい。

素敵な人と出会って恋をして子供を産んで…そんな平凡な人生でもいい。

自分の好きな事に打ち込んで、仕事をバリバリするキャリアウーマンでもいい。

なんでもいい。後悔のない人生を送ってくれるなら…。

わたしは孫娘の顔を見つめながらそんな事を願った。


「ありがとうねぇ…。私はもう寝るよ…」


「うん!お部屋まで送ろうか?」


「大丈夫だよ…おやすみ…」


「おやすみなさい!おばあちゃん」


孫娘にそう告げたのが私の最後の言葉だった。

その後私は眠るようにして人生の幕を閉じた。大往生だった。


家族に見守れながら死ぬ。

なんと幸福な事か…。

ああ…。意識が遠のく…。これが死ぬという事か…。

身体からゆっくりと何かがこぼれ落ちていく…。ホロホロとこぼれていく…。

魂が抜けていくのだろうか?

ぼんやりと考えていた時だった。


『前田とわさん…。あなたは前世で素晴らしい功績を残しました。褒美としてあなたの願いを叶えてあげましょう』


「願い?…あなたは誰ですか?」


『私は愛と平和の女神。コルヌディア。さぁ何でも願いなさい前田とわさん。あなたにはその価値があります』


「ほんとうに…なんでも?」


『ええ。できる限り要望を叶えてあげましょう。あなたはそれだけの事をしました』


なんと!もう死んでしまったけど願いを叶えてくれるなんて…。

だったら…私の望みは一つ!

自分の書きたい小説を思いっきりかけるようになりたい。


「だったら…私は自由気ままに暮らせるようになりたいです」


『まぁ…。そんな願いでいいのですか?』


「はい。この世に自由に勝るものはありません。自由に生き、自由に愛する。そんな人生を送りたいです」


『分かりました。あなたが自由に暮らせるだけの力を与えましょう。あなたに女神の祝福を…』


そう言って、金色の髪の毛を輝かせた女神に優しくおでこにキスをされた。

良かった~。清く正しく生きてきて本当に良かった…。

その直後眩い光に包まれて私は意識を失った―…。


この時私はとんでもない思い違いをしていた。

私の望みはで叶えられるものだと思っていた事…。

次に私が目覚めた先は全く見たことのない世界。聞いたことのない言葉…。知らない文化…。

そう…私はなんと…異世界へ生まれ変わってしまったのだ!!

聞いてないよ~!!!

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