落とし物
落とし物
学校へ向かう途中、ハンカチを拾った。とても綺麗な色のハンカチ。
深紅色と言うのだろうか?
そこに黒く細い線が沢山引かれているハンカチだった。
何やら彼岸花をイメージさせるようなそんな柄のハンカチだったから、だれか大人の女性が落としたものなのかなと思った。
でもこの辺りに通るのは私たち学生ぐらいだから、落とすとしたら、うちらの誰かだろうか。
すごくおしゃれなハンカチだし、高そうだった。
とりあえずポケットへ入れておくか。
あまりにも綺麗でかっこいいから貰って帰ろうかとも思ったが、
私は学校の先生に渡そうと思い、そのまま持って行くことにした。
放課後
友達と教室で戯れる。
部活に入ってない私たちは、夢中で語り合っていたい。
彼女とは昔から中の良い友人だ。
教室には私たち二人しかいない。
「あ、もうこんな時間だよ」
「帰ろっか」
その時だった、
私が廊下の方を振り向くと、誰かがこちらを見ていたような気がしたのだけど、
気のせいだろうか。
廊下に出ると、すうっと強い風が吹いて行った。
「何、今の風?」
「びっくりしたー」
それは颯爽と廊下を吹き抜けた。私達は顔を見合わせた。
友達は、夕暮れの茜空の中語り歩く。 私はその後ろで話を聞いて笑う。
「ねぇ、最近この学校で流行ってる話知ってる?」
「あぁ、あれでしょ、人が消えるやつ。
特に何のひねりもなくて面白くないじゃん」
「そそ、」
私は笑いながら混ざった。
「えぇ~何それ?」
またありふれた都市伝説の類だ。
女子はこの手の話しが本当に好きだ。
「ただたんに神隠しに会っちゃうってだけの話しなんだけどね。
でも、巻き込まれると、あっという間に消えちゃうって言うじゃん。
誰も帰ってきてないって話だし。
でも、この話が怖いのが、ただ拾ってあげただけで神隠しに会っちゃうってとこなんだよね」
「もういいよ、知らないものを何でも拾うなって言う、子供に言い聞かせる為の躾話しでしょ、それ」
私は無言で聞いていた。
「うん。そうだといいんだけど、そのハンカチってのが、赤い綺麗なハンカチなんだって。
黒の細い線が入っていて、とてもおしゃれな女性が使うようなデザインだって聞いてる」
「その設定はいるの?」
「んー、設定なのかな。なんかね、ある女の人が自殺したらしくって。
その時に、黒い線が入ったハンカチを持っていたらしいんだけど。
よく見るとそれは線じゃなくって、恨みのある人の名前を、書き綴ったものだったんだって。
死んでた女性の死体は、青白くなっててとても不気味だったらしくってね。
恨みのこもったような形相で、相当、復讐したかったとかなんとか」
「それって自分を自殺に追い込んだ人間を、って事?」
「ううん。なんかその女の人も変わってて、精神がおかしい人だったんだって。
書かれていた名前の人達は、その人とは全く関わりもない人達の名前らしいの」
「えっ?」
「誰でも良かったみたい。被害妄想?的な?
自殺の原因と言う原因がわからない事件で。と言うか、この世界に恨みがあったみたいな話なの」
夢中になって話している姿がなんだか楽しそうだった。
そんな楽しそうに語る彼女の話しを、私はただ、聞き続けた。
彼女はさらに語り続けるが、私はすでに笑えなくなっていた。
「でね、その落ちてるハンカチの黒い線って言うのが、神隠しにあった人達の名前なんだって。小さすぎて黒い線に見えるっていう、あそこね」
「へぇ~、なんかそれは気味悪いね」
「でしょ。
そのハンカチの意味を知った時、後ろにその女の人が立ってるんだって。
で、すっとさらっていくらしいよ。
そんな限定されたハンカチだったら落ちてても誰も拾わないよね」
「私……拾った……」
初めて私は会話を入れた。
「え?なんて?」
振り返った瞬間だった。いつも笑って話を聞いてくれる親友の姿が無かった。
「あれ、どこ行っちゃったの…………?
え?なんで? 確か親友と帰ってなかったっけ? あれ、ワタシ一人で帰ってた?」
確か親友と帰ってた気がしたんだけど、
「先帰っちゃったのかな?
まぁ、いっか」
姿が見えないのでワタシは一人で帰ることにした。
こんなこと今までなかったのに……
「うあっ、痛っ、」
その時急いで歩いて行く人とぶつかった。
その人は急いでいたのか、そのまますたすたと歩いて行った。
あれ?
ちょっと待ってぇー。
ワタシは急いでその人を追いかけた。
「あのすいませーん。
ハンカチ落としましたよー」
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