第3話 後悔の多数決
「おい。あの子可愛くない?」
「あぁ、可愛いかも」
新入生入場で、早くも凛に目をつける先輩男子達。
少し体育館がざわつくほど、凛は新入生の中でも際立って注目された。そんな事、凛は知る由もないが。
そんな知る由もない所で、何だか黒い雲がかかろうとしていた。
「あの子、里山凛って言うんだって。なんか、クラスでも全然男子と話さないし、ずっげーおとなしいってさ」
凛の事が気になった男子生徒達が、こぞってこそこそと、凛のクラスに様子を見に訪れた。凛はもちろん、自分目当てだとは、1㎎も思っていなかったが。
その報告を受け、
「へー…」
にやり…と、静かに笑う男子が居た。
そんな男子が、何を考えているかと言えば、何となく分かるだろう。
そう。将司は、自分の可愛さに気付いていない凛に、一早くアプローチをしだした。
うぶな子ほど、からかいがいがある。将司はそう思ったのだ。
―数日後―
凛が、静と図書室に行った帰りの事だった。
廊下を歩いていると、
「あれ、もしかして君、凛ちゃん?」
「え?」
凛は、突然知らない男子に、突然何故知っているのかすら知らない自分の名前を呼ばれ、面食らった。
「やっぱそうだ!」
「え…あ…の」
おろおろしている凛に、こそっと静が、
「凛ちゃん、この人、バスケ部の金城先輩だよ。すごくモテルって私のクラスの子達が話してるの聞いたよ」
そんな静の言葉に、余計緊張する凛に構わず、
「凛ちゃん!またね!」
どぎまぎしてる暇もなく、将司はけろっとして、凛と静を置き去りにした。
「見た?今の」
「見た見た。めっちゃうぶじゃん!」
「うし!今日の部活が楽しみだぜ!」
将司は、狙った獲物は逃さない。
「部活、何かあんの?将司」
「ま、放課後、俺、重大発表しちゃうから!」
―放課後―
「あざーす!」
19時30分、バスケ部の練習が終わった。すると、間髪入れず、将司は2年生メンバー全員を集め、こう言い放った。
「俺、1年の里山凛を堕として、バレンタインデーまでにキスして見せるから!だから、賭けようぜ?出来るかどうか。そうだな…俺が勝ったら、プレステ5!負けたら、1週間お前ら全員の昼飯おごる。どう?」
「お――!良いんじゃね?俺、将司に賭けるわ!」
「んじゃ、俺も!」
「おいおい!それじゃ賭けに…」
「そんな事しない方が良いんじゃない?」
馬鹿みたいに
「そんな事したら、その凛ちゃんて子、傷つくよ」
「お、
「え…だからそうじゃなくて…」
「うっし!いっちょやりますか!」
永人の苦言に、耳を貸そうともしない男子達を、その場ではもう何も言えず、内心凛が心配だったが、盛り上がる仲間たちを抑える事も出来ず、永人はその場を見過ごす事しか出来なかった。
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