第2話 始まりの前の平穏

「おはよう。りんちゃん」

「あ、おはよう。しーちゃん」

お互い、誰にも気づかれたくないような、小さな声で朝の挨拶を交わした。

6年前は大きかったランドセルが、すっかりなじんで、擦り切れている。


里山さとやま凛は、小学校生活を今日卒業する。

凛は、大人しく、恥ずかしがり屋で、40人居る同級生の中で友達は女友達だけだったし、親友と言えるのも、さっき挨拶を交わした、安西静あんざいしずか一人だった。


6年間、目立たず、おとなしく、居るのを隠すように、いつも四角い教室の隅っこを探すように、過ごした。


しかし、その裏で、凛の知らない光景が築かれていた。

男子だ。

凛は、男子に密かに人気があった。

小学6年生なのだから、当たり前かも知れないが、”美人”には発展途上だったが、とにかく可愛かった。


「凛ちゃん、中学行っても同じクラスになれると良いね」

「うん。しーちゃん居なきゃ、独りぼっちかも…」

「大丈夫だよ。私、毎日凛ちゃんのクラス行くから、独りぼっちじゃないよ」

「ありがと。しーちゃん」


二人は共に友と誓い、中学生になった。

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