第30話 告白予告宣言 タイムリミット
「き、響子……」
「えへへ~。ならついでにいい事教えてあげる」
「いい事?」
響子は小声で
「私は何が合っても今日までは和人君の味方だよ。そう今日と言う日が終わるその時まで私達は幼馴染以上恋人未満の関係。この関係が終わるのは明日からだよ」
と言ってきた。
「そんな見つめないでよ……照れちゃうよ……」
「いや、見つめてる理由が違うのわかってるよね?」
「てへっ」
流石幼馴染。
僕の迷いを知っておきながら、自分の要求と欲望をしっかりと伝えてくるあたり最早ハイスペックと認めざるを得ないだろう。それに幼馴染じゃなかったら、今頃勘違いに勘違いをしてこの場で「好きです!」と言って見事撃沈していた気しかしない。
「相変わらず直球なんだね」
「まぁね!」
「で、どう? 少しは緊張解けた?」
鼻で笑った。
「今からそんなに緊張して後先のこと考えていたら告白なんてできないよ。少なくとも私はあの日そうだったよ。だから相手を信じて告白することもこの機会に覚えるといいよ」
どうだ! と言わんばかりににししっと笑う響子。
「最後まで抜け目ないんだね」
「うん! 私は私の願いを叶えるよ。それも全力でね!」
なんて真っすぐなんだ。
僕はなんでこんなに魅力的な彼女を振ってしまったんだろう。
だけど、今日でそれも終わり。
あいまいな関係は終焉を迎え、明日から新しい関係になる。
「相変わらず隙あれば二人でいつもいるけど、どんだけラブラブなのよー」
藤原が僕達の元へとやって来ては言った。
顔を見れば冗談だとわかるのだが、なぜかニヤニヤしている。きっとこの状況を楽しんでいるに違いない。
「ラブラブじゃないよー」
「へぇ~」
「な、なによ」
「べつに。ちなみに響子?」
「なに?」
「意地張ってると幼馴染君にあのこと教えちゃうよ~?」
響子の目がキリッと見開かれた。
そして顔が真っ赤になる。
か、可愛いと思いつつ、僕は響子と藤原のやり取りを見守る。
「だ、だめぇだよ! そんなことされたら私の想い駄々洩れになっちゃうもん!」
「駄々洩れ?」
「そう。響子実はね――」
「――お口チャッークタイムー!!!」
間髪入れずに藤原の口を両手でふさぐ響子。
よく見ればどこか慌てているのなか、冷や汗をかいている。
珍しいこともあるんだな。
「言わないから安心して」
「もぉ、意地悪はダメだよ!」
それ響子が言うの……。
心の中で一回突っ込んで、僕は冷たい視線を送る。
プンプンと怒る響子と笑ってこの状況を楽しむ藤原。
この二人やっぱりとても仲が良いんだな。
それに二人共楽しそうだ。
ちょっとだけ羨ましいな。
「ごめんねー」
「今回は許すけど、ポロっとでも言わないでよね?」
「うん。そこは気を付けるよ」
「ちなみになんの話し?」
「和人君には内緒のガールズトークだよ! だから気にしないで」
「そう言われると気になるんだけど?」
「だめー。これは私の女の子の部分に関係するから男の子である和人君には教えれないことなの。だから諦めてください」
「女の子?」
「なに?」
「響子は女の子と言うよりかは小悪魔じゃない?」
ペシッ
叩かれてしまった。
全然痛くはないんだけど照れ隠しで叩かないで欲しい。
「それは失礼だよ! 私だって可愛い女の子だもん!」
「私も小悪魔だとは思うよ?」
「えー、二人共ひどーい!!!」
「「あはは~」」
「むぅ~二人して笑ってひどいなぁ~」
唇を尖らせて、いじけ始めた響子。
なので僕は手を伸ばして、響子の頭を撫でてあげる。
するとみるみる表情の筋肉が緩み、だらしない笑みへと変わっていく。
「えへへ~。気持ちいい~」
単純だ……。
ご機嫌斜めになる前に手を打とうと思い、やってみたが、これはこれで単純すぎる。
そして甘えた声を学校で出さないで欲しい。
一瞬でクラスの男子達の嫉妬の眼差しが僕に向けられる。
去年付き合っている時もそうだったが、響子は皆のアイドル的な存在で誰かの物になる事を望んでいないように見える。その割にはよく告白もされるが……。そこは深く考えない事に僕はしている。だって考えたらキリがなさそうだから……。
「響子ってホント甘えん坊だよね。てか男子にここまで気を許してるの初めて見た……」
「まぁね~。和人君以外だったら手が伸びてきた時点で逃げるか距離を取るからね~」
「なんで幼馴染君はいいの?」
「仲良しだからだよ~。それは別れても変わんないからかな~。まぁ逃げたら逃げたで私が捕まえに行くから和人君には逃げる余地すらないけどね」
「あはは……」
僕はそう言えばそうだったなと昔(第一話あたりの日)の事を思い出して苦笑いをした。
「でも響子の場合、男子で仲の良い友達他にも何人かいるでしょ?」
「まぁね」
「その人達はどうなの?」
「う~ん、そうだね~」
そう言って少し考える素振りを見せる響子。
僕と藤原はお互いの顔を見て、しばらく待つことにした。
「無理だね! 私こう見えて異性だと身体接触は結構気を許してる相手じゃないと無理だからね。特に最近はそう言った誤解を招く元には気を付けてるから!」
「幼馴染君も場合によっては勘違いするかもとは思わないの?」
「しないよ。だって……ね?」
毎回思うけど、僕に振るの雑過ぎないか?
後手を止めようとしたら、不服そうにするのをやめーい!
まぁ手は動かすだけだからいいとして、困ったら話題を視線で投げないで欲しいのだが、ここは僕が答えるしかないのだろう。
とは言っても、周りも気になるのかこちらに耳を立てている者もいそうなので下手な事は言えない。もし言えば僕に火の粉が振り掛かることになるからだ。
「逃げたら捕まる時点で響子の願いを叶えるが僕の最善の手だからね。それに勘違いも何も僕達は一度付き合って別れたと言う事実がある。その事実がある以上、簡単には勘違いしない。もっと言えば付き合っていた時点でお互いの事をそれだけ熟知しているから勘違いに発展ってのがないないとも言えるかな……これでいい?」
「百点満点!!! さっすがぁ~!!!」
「なるほど!」
じゃない! なんで僕自身が勘違いさせられそうに何度もなっているのにここに来てまで響子のフォローをしないといけないんだ。てか僕、今平然と本心に嘘を付いたぞ!? あーもう! なんでこんなに可愛い幼馴染――小悪魔に心をかき乱れないといけんだ。 別に嫌じゃいけどさ……、ほら、何て言うか……僕だって構って欲しかったりもするし……でも、それが勘違いの原因になるって言うかさ……。
「にしても気持ちいいー」
「んー私から見るとこの状況がある意味駄々洩れだし勘違いの元なんだけどな……」
「優子?」
「なんでもないよ。それよりお昼休み久しぶりに二人きりでお話ししない?」
「いいけど、二人きりで?」
「そう。ダメかな?」
「いいよー! 優子に嫉妬したらダメだよ?」
「するか、ばかぁ!」
「先に言っておくけど私百合じゃないから安心して」
「知ってる。って言うか普通の女の子はそうだよね?」
「そうね。ちなみに私は普通の女の子だから響子に特別な想いや感情と言った物はないわ」
「私は響子の事大好きだよ?」
小首を傾げる響子。
「ありがとう。ここでその天然は流石だね」
流石は親友。
唐突な反応にもしっかりと反応している。
僕だったら苦笑いしていたに違いないのに。
これはこれで少し見習ってみるか。
「ありがとう! えへへ~、和人君には頭を撫でられて、優子には褒められちゃった」
「「ばか丸出しじゃん」」
僕と藤原はお互いの顔を見て、納得し合い、暖かい眼差しを響子に向けた。
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