急-問 汝、ダイスに運命を委ねるなりや
討伐依頼に出発する直前、門の手前で秘密基地の子供達に呼び止められる。
「ピエの兄ちゃん、絶対帰って来いよ!」
「鼓笛隊に旗がないと締まらないからね」
「帰って来られるお
子供達に目線を合わせる為に屈んでいたら、頬に柔らかい感触。童女は「帰って来たら反対側にしてあげる」と笑みを浮かべ、男の子達にソレを賭けて勝負する約束をさせられた。無事に帰って来なきゃならない理由が増えたな。
「安心しな、坊主はこのガラク・トーリゴ様が命に代えても帰って来させるからよ」
師匠は屈む俺の頭を掴みながら子供達に視線を合わせ、笑いかける。この人、顔が怖いだけで普通に良い人だよ。そんなに怯えないであげてくれ。
子供達と再開の約束をして別れを告げ、門を抜けて依頼人の待つ鉱山の村へ。
[幸運 □◇□ 魔物が飛び出してきたよ]
門を出て暫くして、狼型の魔物に遭遇した。
相手は一匹、稽古の成果を見るのに丁度良いと戦闘の許可が出た。
体毛の一部が植物の葉になっている二本角の狼。
初めて見る魔物だ、観察して情報を。
[
「え、牛?」
「坊主、ボサッとするな! 来るぞ!」
突進してきた狼? 牛? を盾で受け止め、少し赤味が濃くなった盾の傍から首目掛けて槍で突く!
刃先が皮を突き破る感触に槍を捻り、傷を広げるよう引き抜き、構えた盾越しに様子を見る。
[(振るまでもなく決着か……)]
喉に空いた孔が致命傷となり魔物は生き絶えた。
「良し。
「はい! それよりこの盾全然衝撃こなかった」
「あまり受け続け過ぎると熱くて持てなくなるから気を付けろよ」
「分かった」
その後、無事村に着き宿をとった。解体した魔物を夕食とお湯代に換え、早めの休息をとる。
夜明け前に起床し空が白み始める頃に村を出る。
門番には昨日の内に
小鬼達は鉱山の試し掘りでできた洞窟に住み着いていた。依頼書の通りだが、敵の数が分からない。
[敵の数は □◇□ 六匹の群れが六つと一匹で、三十七匹だね]
「……三十七?」
「痕跡からして大体それ位だな。よく分かったな、坊主。奴らは夜行性、寝静まる頃だ。奇襲で一気に数を減らすぞ!」
見張りなのに寝ぼけている六匹を師匠が即座に片付け、洞窟内へ突撃する。
小鬼達が掘り広げたのか、中は広い空間になっているが暗くて視界が悪い。
師匠が照明玉と音爆弾を投げたのが見えたので、慌てて盾を構え耳を塞ぐ。
盾越しで目を瞑った状態でも眩しく感じる閃光と反響する爆音が炸裂する。
小鬼達が立ち直る迄の間に師匠が十匹、俺は二匹仕留めて残りは約半分。
[
「KP! 見れば分かるって!」
[——くるよ……ガラクに返り討ちにされてるね]
俺は小鬼の攻撃を盾で受け止め、喉を突き、確実に一匹づつ仕留めていく。
その間に師匠は一振りで一度に三匹を仕留める。
刃先が首を裂き、石突が骨を砕き、枝刃が脳天に突き刺さし敵の命を奪う。
囲まれようが、少し距離があろうが関係なし。
盾で攻撃の出目を潰し、槍先と石突で前後へ左右にと攻撃を見舞う。咄嗟に後ろへ避けようが、柄を手の中で滑らせ間合いを変えて逃さない。
俺が四匹目にトドメを刺した頃には一回り大きい個体一匹を残すのみとなっていた。
その一匹も飛び掛かった所を、縦回転させた槍の石突で顎を打ち抜かれ沈んだ。
決闘で俺が喰らったのはあの技か。
[そうだよ]
見渡しても動くモノはいない。
どうやら片付いたようだ。
「師匠、討伐完了だな」
「ん、まぁそうだな。坊主に任せるには数が多過ぎたから手ぇ出しちまったな」
「いや、最初から殺る気に見えたが」
「数が多いのは分かってたか——避けろ! 坊主」
俺を突き飛ばす師匠の手に装備されていた盾が弾き飛ばされ転がっていく。
倒されたはずの最後の個体が立ち上がり、開けていた大きな口を閉じるのが見えた。
小鬼の筈の姿が歪んでいく。
[燻んだ緑の皮膚は鮮やかな緑の鱗へ変わり、濁りの消えた黄色い眼球は左右で別の動きを見せる。
爬虫類と思しき特徴を持つ人型の魔物。
特殊厄災指定
「カム……リオン」
「何!? 特殊厄災指定じゃねぇか。坊主! ここは俺に任せて先に逃げろ! 村から都へ応援要請で助けを呼んで来い! 俺は奴を足止めする」
照明玉の効果が薄まり視界の悪い中、師匠は盾も拾えないまま応戦する。
出口の方を向き、駆け出そうとして足が止まる。
このまま行って師匠は大丈夫なのだろうか。
「どうした! 早く行け坊主! ガキ共に帰るって約束したんだろうが。ピエール……」
「師匠」
「お前との日々、楽しかったぜ」
「KP、このまま行って師匠は助かるか?」
[幸運の上成功……いや、大成功で香草狼牛と遭遇
して、組み付きに成功した後、運転(牛車)と乗馬の複合を成功させて一定時間毎のSTR対抗を成功させ続ければ、もしかしたら間に合うかもね]
「成功って何を……」
[
「今までずっと賽子を……」
[そうだよ。
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