第10話 絵本ヲタクになる日
社会人になってSEという職種に就きました。サウンドエフェクトじゃないですよ、システムエンジニアの方です。当時のSEってバカみたいに忙しかったんです。
よく「次に過労死するのは如月だ」って会社で言われてましたね、そういう部署でした。
帰るころには終電無い。土曜日いつも会社にいる。会社から晴海の花火見ちゃう。
課長は用もないのに夜まで居座っては、空気読めずに「如月さん、コーヒーいれて」とか言って激怒させてくれる。こっちはトイレも我慢してんのに。
……邪魔だから帰れよ。(本当に言いました)
そんなんでいつ本読むねん?
いやいやいや、本読む暇なんか無いんですよ、マジで。
日曜日に一週間分の食料を買いに行った拍子に、ふらりと本屋さんに足が向くんですね、でも小説に手が出ない。読む暇がないから。
で、あるとき何気なく絵本を手に取ったんですよ。特に何も気にしないで棚から引き抜いた、それがとんでもない本だったんです。
シルヴァスタインって人の本、いくつか出てます。
私がそのとき手にしたのは白い紙に黒いペンで丸書いただけみたいな絵。凄い引力でした。
『ぼくを探しに』という本です。
イラストがシンプル。文章もシンプル。
だからこそ読む人がそこに投影されるんです。
これには続編があって『ビッグ・オーとの出会い』というんですが、これもソッコー買いました。同じ人の本で『おおきな木』というのもあります。
どれもとてもシンプルで、読む人によって内容がまるっきり違うものになります。それこそが絵本の醍醐味なのかもしれません。
如月が『絵本ヲタク』人生を謳歌する第一歩となった作品『ぼくを探しに』。
さあ皆の者、読むが良い。
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