第7話 村上龍との出会い
はい、やっと高校生にして読書デビューを果たした如月です。それまでは「暇だったから」という理由で読んでただけですからね、読みたくて読んでたわけじゃない。
それが遂に「読みたくて読む」になった、つまり読書デビューです。
その当時の流行りは新井素子×栗本薫×赤川次郎でした。年代がバレますね。今でいうところのラノベというヤツです。いつの時代もラノベは流行るのです。
ここで私は栗本薫の『魔界水滸伝』でタコの化け物(クトゥルフ)を知り、筒井康隆の『農協、月へ行く』に大笑いし、新井素子の『あたしの中の』で「こういう書き方ってありなのかよ!」と驚いたのです。
第5話・第6話で出てきましたタカコが栗本薫推し、タンちゃんが新井素子推し、というふうにそれぞれ『推し』があったわけなんですが、私に関してはそういう推しが無かった(読書初心者)ので、とにかく手当たり次第に読みました。そうする中で好みが出てくるんですね。
如月の好みは村上龍でした。……ぶっちゃけて言うとあまり理解して貰えませんでしたが。
私は最初に読んだ『コインロッカー・ベイビーズ』に震えたんですよ。駅のコインロッカーに捨てられた二人の赤ちゃん。これだけでもうツカミは十分です。
エロ・グロ・ヴァイオレンス。破壊衝動と芸術的センス、対極を為す二人。なのに異常なまでのリアリティ。なんじゃこりゃ。なんじゃこりゃあああああああ!
一撃で村上龍のファンになりました。たったの一作で。
びっくりして次に読んだのが『限りなく透明に近いブルー』。タイトルがね、爽やかじゃないですか。これは爽やかなやつだ、青春してるんだ、そう思って本を開くわけですね。
おい、村上。
いい意味で裏切られました。またしてもドラッグ、ヴァイオレンス、セックスの三本立て。おいおいおい、真面目な陰キャの高校生が読んじまったよ。
それまでの如月は家にあった本しか読んでないんでね、『フランダースの犬』とかそんなんしか読んでない。パトラッシュとかコゼツ旦那とかアロアとかそんなんですよ。第4話で書いた『母をたずねて』とかですよ、マルコがラテンアメリカに渡るんですよイタリアから。そのまま高校生になっちゃったんです。どうやってもドラッグやセックスなんか出てこないんです!
いやもう村上龍の虜になりました。
立て続けに読んだのが『海の向こうで戦争が始まる』。
なんでしょうね、なんかあんまり「どういう話だった」というのは覚えていないんですが、ずっと他人事のように戦争を見ているような話だった気がする。
そこには確かに人の営みがあるのに、それを見ているのは海のこっち側、「俺には関係ないもんねー」っていう感情すらなく、映像を見てるだけみたいな不気味さがあったような(全然違う話とごっちゃにしてるかも……)。
如月の土台はここで出来ちゃった気がします。
今読んで面白いと思うものは、やっぱり「隠し通せない人間の根っこの部分」を書いたものばかりなんですね。
だから『妬み・嫉み・僻み・憎しみ』が前面に出てくるものや『三大欲求』に正直なもの、それらを隠すことなく書いたものが大好き。
ただ、高校生の時にそれを言ってもなかなか理解して貰えなかった気がします。みんなが読んでいたものと毛色が違い過ぎたんですね。『グリーンレクイエム』を読んでる人に『コインロッカー・ベイビーズ』を勧めてもねぇ……。
今はもうね、中年ですからね。「わかるー」って言ってくれる人がたくさんいるんでありがたいですね。
しかし、その頃にはどんな話だったか忘れちゃっているという……ダメじゃん。
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