第4話 読んだ時の年齢で感じ方が違う
どんな本でもそうなんですけど、読んだ時の年齢で感じ方って違いますよね。
私の中でナンバーワンは『母をたずねて』(1話目に出てきたやつです)のマルコのお父さんのセリフなのです。
アルゼンチンに出稼ぎに出ていたお母さんと連絡が取れなくなってしまった。お父さんは仕事の関係で出かけられない(何か街の人に頼りにされていたような)。居ても立っても居られなくなったマルコが「僕が探しに行く」と言い出す。
そこで放たれたお父さんのこのセリフ。
「マルコ、お前はまだ十二だよ」
その後に「一人で旅に出るなんて」みたいなことを言ったと思うんですが、確実に覚えているのは上のセリフなんです。
一人でアルゼンチンに向かうこと、見知らぬ土地でお母さんを探すこと、そんなことを十二歳の子供が! と、今ならそういう意味で驚愕します。
でも、当時は違ったんです。
それを読んだ当時の私は小学校低学年。当然年齢も一桁です。
十二歳はもう一人で何でもできるオトナに映っていたのです。
「お父さん、心配し過ぎ。大人じゃん。なんでそんなに心配してんの?」
そう思って驚いた。これが最初の驚愕。とんでもない話ですね。
それから数年経って、自分が十二歳になった。中学一年生です。
待って待って、今一人でアルゼンチンに行けなんて言われたら死ぬわ!
当時は田舎に住んでいて、隣りの市に行くにも親の運転する車で行ってたわけです。電車やバスもほぼ乗ったこと無い。
マルコ、一人でイタリアからアルゼンチン行ったんかい! 無謀過ぎやろ!
これが二度目の驚愕です。一度目の驚愕とは正反対。だからこそ覚えてる。
さらに三度目の驚愕が高校生になってから読んだ時です。もっと大人になってますからね。お父さんの立場になれるんです。
「おい、オヤジ! お前いくら本人の意思が固いとはいえ、こんなガキを一人で外国に渡らせてんじゃねえ!」
面白いですね。読む年代で感じ方が違う。
大人になってから一つの本を何度も繰り返し読むのと違って、子供の頃の感性は二度と戻ってこない。だからこそ価値があるんだろうなぁと思います。
そう考えると、子供の頃にたくさん本を読んでいた人は、何度も新しい感覚で読めるネタがたくさんあるということになりますね。
学校では読書を強制するのではなくて、子供たちが積極的に読書したくなるような声かけをしてやって欲しいものです。
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