第2話 からすのパンやさん
小さい頃に読んだ本で、強烈な印象が残っているものと言えば、『からすのパンやさん』(加古里子著)です。
ストーリーなんかまるっきり覚えてません。毎日毎日飽きもせず見ていたのに、ストーリー全然覚えてないって、加古先生に失礼でしょ。
いや待ってくれ、違うんだ。強烈なページがあったんだ、ページというか1見開きなんだ。
たくさんのパンの絵が見開きいっぱいに描かれてたんだ!
ざっと数えてその数84種類。見落としがあるかもしれない。
『りんごパン』、『かぼちゃパン』、『とうもろこしパン』、『ぶどうパン』くらいなら普通にありそう。でも普通にない。だってそれらはかぼちゃペーストが練り込んであるとか干しブドウが入ってるとかじゃなくて、かぼちゃの形とかぶどうの形とか、そういうパンなんだもん!
ぶどうの形って、丸い粒粒じゃないんだよ、ちゃんと茎があってそこから房が下がってる形してんだよ、めっちゃ気になるじゃん。
何が凄いって、「その形、どうやって焼いたんだ?」ってパンがある。
『たいこパン』や『バイオリンパン』くらいならなんとなくわかるんだけど、『ピアノパン』ってちゃんとグランドピアノで、屋根も足もついてて、鍵盤もある!
中を空洞にする必要のあるパンもいくつか。『コップパン』、『おなべパン』、『かびんパン』がそう。
『やかんパン』、『おかまパン』、『ぼうしパン』なんてのもあったけど、もしかすると中にあんこが詰まってるかもしれない。でも『ながぐつパン』はしっかり空洞だった。
職業特化した『とんかちパン』、『のこぎりパン』、『のみパン』てのもあったな、大工さんが喜びそうな。でも『かんなパン』が無かったのは残念。もうちょっとでフル装備コンプリートだったのに。
中には「なぜそのパン作った?」っていうモチーフも。
『はさみパン』、『はぶらしパン』、『でんわパン(しかもダイヤル式黒電話!)』、『おそなえパン』、この辺はもう訳がわかんないけど、度肝抜かれたのは『ヘリコプターパン』と『ヨットパン』。なぜそれをパンにする? いっそ『フライパン』つくろうよ。
それくらいならまだいい、「子供これわからんだろ」ってのもある。
『ぽっくりパン』待って待って、「ぽっくり」ってみんな知ってる? 『おちょうしパン』なんて徳利とお猪口がセットでパンになってんの。子供の読む本に徳利とお猪口ってのがなかなかにシュールでいい感じでした。私は好きだった。
友達と何人かで頭付き合わせてこれを眺めるんですよ。あーでもない、こうでもないと言いながら。それが楽しい。『うさぎパン』、『こねこパン』、『パンダパン』に人気が集まるんだけど、私は『かたつむりパン』と『スネークパン』が好きで(なんでスネークだけ英語なの?)、ああ『かめパン』も好きだったなぁ。
とはいえ、一番盛り上がったのは『かみなりパン』でした。背中にぐるっとでんでん太鼓みたいなの背負ってる雷神なんです。このパンは相当手間がかかるんで、一日限定3個とかそれくらいになるんじゃないかと思います。
どうせなら風神もセットにして欲しいけど、雷神の『かみなりパン』に対して風神は何パンになるんだろう? 風神雷神一日限定3セットってとこですかね。
気になったら検索してみてください。「からすのパンやさん」で画像検索すると、必ずこの見開きページが出てきます。
そしてお気に入りのパンをご報告ください!
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