第6話 日常が楽しいって思えりゃそれが青春それがハッピー

 月曜、学校にて。


「カナー、おは───モッサ!? うわモッサ! ちょっとカナどうしたのよ! コンタクトは!? 髪は!? なんでまたモサいカナに戻ってるの!」

「あ、うん。あれから朗くんとばいばいして、家に帰ったらね? 突然の変貌に驚いたお兄ちゃんが教えてくれたの」

「……なんかあんまり聞きたくないんだけど」

「お前このままじゃガッコでチャラ男に脅迫されて寝取られるぞって」

「直球で聞きたくない想像そのものが来たよもう!」


 そうだろうか。私は目から鱗だったけど。なんなら鱗が滝のように出て左近次だったけど。いや意味わかんないから。

 チャラくしていればチャらい人が集まる。綺麗にしていれば綺麗な人が寄ってくる。人ってそういうものだと思う。なら今までのままなら今までのままの人しか寄ってこないに違いない。


「お兄ちゃんいわく、初体験を済ませた後辺りが一番あぶないんだって。もしくは告白が成功して、浮き足立ってる時とか。わ、わたしと朗くんはまだまだ初体験とかそんなんじゃないけど、脅迫とか怖いし」

「……一応訊くけど、脅迫ってたとえば?」

「えーと、忘れていった鞄にコンドーさんが入ってたのを見られたり、ラブホテル入るのを写真撮られてたり。それを教師にチクられたくなかったら~なんて脅迫から始まって、どんどん抜け出せなくなるんだって」


 なんて恐ろしいんだろう。世の中にはそんな人が居るのか、って頭が痛くなったりもした。そんなんで脅迫が成立しちゃうもんなんだ、って。


「……あんた、コンドーさんとかラブホの写真程度で躊躇する? 脅迫成り立つ?」

「あの、雫ちゃん? わたしだってそういうのは怖いんだからね? ていうかわたしのことなんだと思ってるの?」

「だってあんたあんまり体裁とか気にしなさそうだし。それら見せられても“はぁ……だからなんですか?”とか平気で言いそう」

「失礼だよ雫ちゃん! そりゃ、わたしだけの問題だったらそんなこと軽く言えるけど、その場合朗くんの進退問題にも関わるんでしょ!?」

「あちゃ、あんたの場合はそれがあったか。え? じゃあなに? 脅されるがままになっちゃうわけ?」

「なんで? 好きな人以外に体を委ねるくらいなら、コンドーさん問題だろうがラブホ問題だろうが耐え抜くよ?」

「今までの問答なんだったのよ!!」


 心外である。一途少女は脅迫くらいで体を開いたりなどいたしません。むしろ体が目当てなその相手のことを、先生様に報告してでも生き延びます。コンドーさん? その人が勝手に入れたことにいたしましょう。脅迫なんてしてくる相手に遠慮などしていたら、この世界は生き残れません。この世界は……とっくに残酷なんだから……!

 つまり。


「脅迫に怯えるのと問題に立ち向かうのとじゃ違うよ?」

「じゃあトドくんの進退はどうなるのよ」

「あはは、そもそもそんな、脅迫されるような状況作らないから大丈夫だよ? わたし、そんな迂闊なこと学校でしないから」

「ラブホは?」

「いかないよ? お金もったいないもん」

「……ITONAMIは?」

「それは……その。初めては彼の部屋で、とか……えへへへへ」

「いっぺんドつくわよコノヤロウ」


 どうしろっていうんだろう。ていうかラブホテルとか、べつに行きたくないです。

 そういうのはほら、誰に遠慮することもない年齢とか関係になってからでもいいと思うのだ。

 家庭に守られている内にそんなことをしては、親に迷惑がかかりまする。


「なんだかトドくん、苦労しそうだなぁ……」

「わたしだって頑張ってるよぅ。トドくんに相応しい自分でいられるように、日々努力の積み重ねです」

「これ以上努力重ねて、あんたいったいなにになりたいのさ」

「え? えー……え、えへへ……お嫁さん……♪」

「あ。なんか今壁殴り代行を求める気持ちがちょっとわかったかも」

「なんで!? 幸せになれとか言ってたくせに理不尽だよ雫ちゃん!」


 でも、いいのだ。努力をしたいのは本当。彼のために、彼にもっと好きになってもらうために、もっともっと自分を磨きたい。兄曰く、そういう少女の気持ちに付け込んで、チャラリーナさんというのは潜り込んでくるので気を付けること、だそうで。

 あと、綺麗になった自分に自惚れて、容姿の変わらない彼氏を見下す女は地雷だから、そんなクズにはなるな、とのこと。見下さず、一緒に綺麗になろう、成長していこうと思える女性こそが、男性に好まれるのだとか。コミュ悪魔の兄は言うことが違うなぁと思った。

 ただし男側が拒んだ場合はその限りではない。努力をしない男は切ってよろしい、らしい。

 たしかにざまぁ小説とかの主人公は、付き合ってる内に好かれる努力をしないのだ。幼馴染関係の場合は子供の頃の約束があるからー、なんて考えて好きでいてもらう努力をしない。そのくせ、ざまぁしようってことになった途端、作中一番の努力を見せたりする。あれは……なんというか恋人さんが可哀想だ。特に、きちんと別れましょうと言ってくれた女の子とかは。

  なので、まず最初に努力をしてから私に告白をした朗くんのことを、兄は結構気に入っているっぽい。

 などということを自慢げに話と、雫ちゃんは頭に手を当てて、天上を仰いだ。


「雫ちゃん?」

「……ちょっと待って。なに? あんたトドくんとのこと、陽介さんに報告してるの?」

「進展が気になるんだって。雫ちゃんみたいだよねぇ」

「ぐっは! 反論できない……! ~……でもさ、カナ? もしそうして報告連絡相談してて、陽介さんが“んんんんんー、許るさーん!”とか言い出したらどうする気?」

「ちゃんと話し合うよ? うん。我が家は話し合いが基本です。怒り任せや恥ずかしさのあまりに怒鳴って叫んで誤魔化すことを、我々は許しません」

「……ほんと、トドくん苦労しそうだぁ……あ。それでそれで? その後の二人の関係はどんな感じなの?」

「文通から始めました!」

「おい」


 ドスの効いた声が、雫ちゃんの喉からまろびでた。


「え? なに? オテガーミは人と人を結ぶ、とても尊いコミュだよ?」

「いや……お手紙って。あんたスマホ持ってるでしょーが」

「……雫ちゃん? 交換日記の甘酸っぱさも知らないで、恋人語ろうなんて100年早いんだよ?」

「あんた今オテガーミ言ってたでしょうが」

「うん。お手紙には伝えたい想いをたっぷり書いて、日記と一緒に渡すの」

「ギャア乙女! 乙女がおる! でででもさカナ!? 交換日記なんて、そんなん学校にもってきたら、それこそ誰かに見られて冷やかされたり───」

「はっ? 交換日記? 今交換日記っつった? ぶっふ! 今時交換日記って!」

「───あ?」


 雫ちゃんと話していると、近くを通った男子が耳聡く足を止めて、寄ってきた。

 見るからにニタニタした、嫌な感じ。名前は……なんだっけ?


「おい新田てめぇこらこの野郎。それ以上話題欲しさに女の行動に口出ししたら、女子全員からドチャクソ嫌われるって理解してから口開けよコラ」

「───……キ、キノセイデシタ。スイマセン、タチバナ=サン」


 新田くん? が青い顔をして去っていった。……雫ちゃん、行動早い。


「……ほら! あんな感じで絡まれたりするんだからね!? ただでさえ今のカナはモッサいんだから、男子どもにしてみりゃい~いイジメ相手なの! わかる!?」

「うん。男子って馬鹿だよね。人を蹴落とす行動ばっかしてて、それで女子が好感もってくれるって本気で信じてるのかな? それさえしなければ憧れのあの人に好かれたかもしれないのに、ちょっと気が向いたから~って“これはいじめじゃありません! いじりです!”なんて言い訳して他人に攻撃するの。本人がどう言おうが他人から見ればいじめなのにねぇ」


 <ガターン

 <アアッ、オカノガクズレオチター!

 <センゲツ、シンジョウサンニコクハクシテギョクサイシタオカノガー!

 <オカノ!? オカノー!!


「あー……岡野、峰岸のことイジメてたんだっけ?」

「うん。峰岸くん、新庄さんと家族ぐるみの付き合いらしいもんねぇ」


 やめて、って言っても「こんなんジョーダンだろうがよー♪」とか言って殴ってたらしい。やめてって言ってるでしょ、と軽く怒れば「なにムキになってんだよ。冗談だっつってんだろ?」と逆ギレ。うん、人としてどうかなぁ。

 そんな彼が、校舎裏で「目を瞑って?」と新庄さんに言われ、ドキドキしながら目を瞑って、ドラゴンフィッシュブローをくらったのはあまりにも有名な話だ。

 急に殴られて怒った彼に、新庄さんはこう言ったそうな。「こんなの冗談でしょう?」と。なお、キレて襲い掛かったところ、アイキ=ジツで完膚なきまでに叩きのめされたらしい。ナムサン。


「まあほら、岡野は自業自得として。交換日記の他には? なんかないの?」

「手を繋ぎました……!」

「なんで敬語? ああまあいいやうん、それでそれでっ?」

「手が……手がねっちょりってなりました……!」

「うわ、もしかしてトドくん、緊張で手汗とかほとばしる派?」

「……ワタシノ手汗デシタ……!!」

「あんたちょっといい加減にしなさいよコノヤロウ」


 それでも乙女かー! と雫ちゃんは言うけれど、イエス私乙女です。

 お、乙女だって手汗とかすごいもん! 乙女だから汗かかないとかそんなんあるわけないじゃないのさ!


「はぁ……それで?」

「慌てて朗くんの手を掴んで拭いてあげて、いいよいいよと言う彼の手をそれはもう強引に引っ張って、とにかく綺麗にしなきゃって布でごっしごっし拭ったら……!」

「……なに」

「…………拭ってた布が、ワワワワタシノ、スカートデシタ……!!」

「──────」


 雫ちゃんが、このメスの将来、大丈夫なんだろうか……って悲しい視線を向けてきた。


「い、いいよいいよって引っ張り合いながら拭った結果、布も大分持ち上げてオリマシテ……!! ワ、ワワワワタシノ、ワワワワワ……!」

「……朝から妙にテンションがおかしかったのはその所為かこのばかちん」

「ばかだもん! どうせ告白した翌日のお出かけで、溢れ出す手汗をねっちょり握り込ませてスカートで手を拭きながらお気に入りのショーツ見せちゃうおバカだもん!!」

「うーわー……改めて聞くと凄まじいほどの馬鹿っぷり……ご覧ください、これ、私の親友です……」


 泣きたくなった。泣かないけど。

 そして、そっと離れようとする親友の手を、わたしはムンズと掴んだ。


「わたしたち……ずっと友達だよね!?」

「……イメチェンしない?」

「しない」

「まあ、イメチェンしてもカナだもんね。告白した次の日にはもうパンツ見せる女とか、あんた一日でどんだけレベルアップしてんの。トドくんが愛した、図書室の照れ屋さんな天使様は何処に行ったのやら……」

「図書室に天使なんて居ないよ?」

「まあね。堕天してることくらい私でも知ってるけどね」

「?」

「ま、これでひとまずハッピーエンドってことで。イメチェンして告白し合って結ばれるー、とか、結局カナもラノベ展開でくっついたわけかー」

「友人に眼鏡売られた所為で告白失敗するのがラノベ展開……?」

「ゴメンナサイ」


 まあでも、ともかく。恋人が出来ました。相思相愛です。

 これからどんなことをしていこうか……それを考えるだけでもドキドキするしわくわくもする。と、とりあえずお昼に一緒にご飯たべることから始めて、図書室で落ち合って、一緒に帰ったりなんかしちゃったりなんかしちゃって……!


「よしカナ、とりあえず次の休みまでにぶっちゅまで行ってみよっか?」

「ぶっちゅ!? ななななに言ってるのもう雫ちゃん! 交換日記の次は手を握ることでしょ!?」

「え? なに? ルールなんてあるの?」

「当たり前だよ! 手を繋いで、恋人繋ぎして、腕組んで、いちゃいちゃして、そこからようやくほっぺかおでこにちゅーしたりして、次に口にキスだよ!? 最初からフレンチなんてハレンチな人はどこぞのかぐやさんだけでじゅーぶんだってば!」

「で、ディープが済んだらいよいよカナもおっぱい揉まれたりするのか―……」

「雫ちゃん。お花詰みに行くついでにウェスタンラリアットしていい?」

「なんで?」


 雫ちゃんは恐ろしい人だ……気づけば恐ろしい知識を植え付けられている……!

 わ、私の胸なんて……ねぇ?  たたたただの脂肪の集まりっていうか……! そりゃ、朗くんもそういうのに興味あるかもだけど。そんな、私達にはまだ早いと思う。


「ま、カナが料理とか作ってあげればトドくんなんてイチコロでしょ。カナ、和食とか得意だったわよね? 前に食べさせてもらった肉じゃがは絶品だったわぁ~」

「フフフ、おばあちゃん仕込みのわたしの料理に隙はないのだよ。あ、でもババ臭い料理が嫌い、唐揚げ作れよ唐揚げとか言い出す男に作る料理はないかな」

「ちなみにトドくんの好みとか、聞いた?」

「ふふっ……ふ、むふふふふ……♪ 実は既に胃袋掌握済みにございます……! ふふっ……うふひゅふふ、ウヒヒヒヒヒ」

「だからこの子はまったくもう……なんでこう所々で残念かなぁ」


 朗くんは和食が好きだった。おばあちゃん子だったわたしは、母よりもおばあちゃんに料理を習って、“お台所は女の戦場”スピリッツをしっかりと受け継いでいるのです。炊事洗濯掃除、お裁縫などなんでもござれ。我が戦闘服はエプロンに非ず。由緒正しき昔ながらのあの白き割烹着であるぞ。

 加えて言うなら、だるんとした衣服が好みなのもおばあちゃんの影響だ。部屋着で外に出る? なんの問題ですか?

 というわけで、わたしは一途です。好きになったら真っ直ぐに、好きになってくれたならその人と添い遂げます。ともに白髪の生えるまで。他は知らないけど、わたしの中の愛って、そーゆーのです。


「はー……恋かー、いいなぁ、私もそういうのしてみたいわー。ねぇカナ? 実は相思相愛同士って、滅多に見られるもんじゃないって、知ってる?」

「まあ、うん。どんなに仲がよくても、実際はどちらかが我慢してるから成り立ってる関係だ~って話でしょ?」

「そ。難しいわよねー。どれだけ自分は相手が好きなんだ~って思っても、確かにどっかで遠慮してたり恐れたりしてるところ、あるんだな~ってなんとなくわかるし」

「わたしは……」

「トドくんのことで、苦手なものとか、ある?」

「……照れて恥ずかしがってるところに、天然で余計に照れるようなこと伝えてくるとこ……!」

「あんたらもう結婚しなさいよ」


 雫ちゃんがどこか疲れた顔で言う。結婚……結婚かぁ。むふふん。


「んへへー。おばあちゃんが味方についてくれたから、もう敵無しだよ?」

「ちょっと待て、アンタなにした?」

「おばあちゃんが、朗くんの人となりを調べる、って言ってね? 偶然を装って道に迷ったお婆様を道端で演じたの。朗くん、デート中でもわたしに断りを入れてからおばあちゃんに駆け寄ったんだ。それからしばらく問答してたみたいなんだけど……」

「だけど……?」

「デートも終わって家まで送ってもらったら、お婆ちゃんが既に待っててね? 逃がすんじゃないよ、ありゃあ今時珍しい本当にいい子だ、って言うの」

「わたしゃ気に入られた云々より、おばあさんの瞬間移動が気になって仕方がないんだけど」

「え? ……あ、ややや、違う違うっ、おばあちゃんを道案内したあと、ちゃんとデートの続きしたの! そのあと帰ったからなの!」


 言われてみれば、言い方がちょっと端折りすぎてたかもだ。おばあちゃんは確かに足腰ピンとしてるけど、走ったりもするけど、瞬間移動なんて芸当はさすがに……できない、と思う。なんか昔からいろんなこと出来る人だったから、言われても違和感がないのがスゴイ。おばあちゃんスゴい。


「まあ予想はついてたけどさ。いずれ家に招いたらマッチポンプだった~とか嫌われない? それ」

「大丈夫。ちゃんと道案内するって段階で、わたしのおばあちゃんだよって説明したから」

「はー……いや、ほんとトドくん苦労しそうだー……ちゃんと支えてやんなさいよ、カナ」

「? うん、もちろんだよ? わたしに出来ることで支えられるなら、いろんなこと頑張っちゃうからっ」


 むんっとガッツポーズをとってみせると、雫ちゃんは「うへー……」って感じで疲れた顔を見せた。そこらへんで先生が教室に入ってくる。


「っと、ここまでか。陽介さんじゃないけど、なんか進展あったら教えてね」

「進展って。そんな報告するほどのことなんてきっとないと思うけどなぁ」

「あるでしょーが、好奇心旺盛の若人ならいろいろ。付き合って何日でチッスした~とか、実は先日、ITONAMIいたしちゃいましたーとか」

「あっはは、やだなぁ雫ちゃん。他の人はどうあれ、初めてのITONAMIは初夜にするものだよ?」

「え?」

「え?」


 ……え?


「あの……雫……ちゃん? まさか、経験がおありで……?」

「ないわよ失礼な! ただカナのことだから、トドくんにズズイと迫られてお願いされたら許しちゃいそうだなって思っただけ! こちとら彼氏居ない歴更新中の独り身じゃい文句あっかコノヤロー!!」

「ももも文句はないけど……! でも、意外だなぁって。雫ちゃんモテそうなのに」

「フッフフ、この立花雫、告白された数なら両手を使わなければ足らぬほどの猛者よ」

「え? じゃあどうして?」

「……なだったのよ」

「え?」

「みんな女だったのよ! 告白してくるヤツみんな!! ぬぁ~んにが“私のお姉さまになってください”よふざっけんじゃねーわよ! 断ったら断ったで、”義妹枠は三木さんがいらっしゃいますもんね……!”とか潤んだ瞳で言ってくるしどちくしょー!!」


 そういう雄々しい態度が問題なんだと思うけどなぁ。


「ていうかカナあんた、初体験は彼の部屋でとか言ってたじゃない。結婚するくらいになったらいい加減同棲とかもしてるだろうし、彼の部屋でもなにもないでしょーよ」

「え、え? ……あの。彼の実家の、とか……だめかな」

「ご両親が気まずすぎて泣くからやめなさい」


 と、こんなことを話していたら先生に注意されたところで、会話は終了した。


「……ま、頑張んなさい。邪魔するヤツが出てきたら私が成敗してくれるから。応援してるわよ、親友」

「……ん。本当にありがとう、雫ちゃん。頑張って幸せになるね?」

「おう、なれなれー」

「立花、三木ー、さっさと席につけー!」

「「シュワルツミー!!」」

「なんの返事だ!」


 とりあえずお昼休みになったら朗くんの教室に突撃してみようと思う。あたかも、古き良き時代にやきそばパンを求め、授業の終了と同時に駆けだす男子高校生のように。

 これからきっと楽しくなる。もっともっと楽しくしよう。

 高校生活を、青春を謳歌するって、きっとそんな感じだろうから。

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