【夢・ララーシュカ、小蝶、魂の記憶】

[ランカ・十歳]

夢 その一 藍色の蝶々が舞う、春の庭。

 高い塀に囲まれた広い庭で、わたしは春の、空を見た。

 大きな藍色の蝶々が、空を舞う。

 ひらひら、ひらひら、飛んで行く。

 塀の向こうに。


 わたしは静かに、じっと、見てた。蝶々が、見えなくなったあとも。


「帰りたいですか? 森に」


 声がした。若い、男――ロロさんの声。

 とてもやさしい声だけど、その言葉は、わたしの心を、悲しみの色に染める。


「……帰りたい。帰れるならね」


 家族がいる、あの森に。

 この、首輪を外して。


 だけど、そんなことは無理だとわかってる。

 わたしが生まれ育った村の場所がわからないし。


 それに。


『逃げようとしないでくださいね。傷をつけるなって、主に言われていますから』


 って、初めての散歩の時に言ったのは、ロロさんだ。

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