[ララーシュカ・九歳]
第三十一話 魔法学園に入学しましたの。
そしてまた、季節がめぐり、わたくしが九歳になった日に、メリッサさまに、弟さんが、お生まれになったそうですの。
デュオン兄さまが、うれしそうに、報告してくださいましたのよ。
メリッサさまの弟さんは、赤い髪と黒い瞳の持ち主で、メリッサさまのお母さまに、そっくりだそうですの。
デュオン兄さまと、メリッサさまの記憶では、その子が、悪役令嬢の母親に、溺愛されるそうですのよ。
わたくし、そんな設定、覚えていませんけれどね。
ヴィオリード殿下からの、お花とお菓子と、九歳の誕生日おめでとうと書かれたメッセージカードも、デュオン兄さまがお城から、持って帰ってくださったの。
わたくし、もう九歳なのですが、いつまでも、婚約者がいらっしゃる男性から、プレゼントをいただいていても、よいのかしら?
王族の方からのいただきものを、断る方がダメな気もいたしますけどね。
お菓子をおいしくいただいたあと、わたくしはお礼のお手紙を書いて、デュオン兄さまに、ヴィオリード殿下にお会いした時に渡してほしいと、伝えましたの。
♢
その夜。
ユニコーンの姿のユールさまが、わたくしに会いにきてくださったので、もふらせていただきましたの。
来年こそは、乗りたいと、言えるかしら?
そして、十二月になると、キリア兄さまが十六歳になられて、成人されましたの。
結婚は、まだのようです。
♢
冬が終わり、春になり、ミリアムさまが、恋人の侯爵子息の双子弟――ルゼウスさまの、婚約者になられましたの。
もちろん、結婚されたら、ルゼウスさまはお婿さんになるのよ。
そして、四月十日。
わたくしが、魔法学園に入学する日になりましたの。
その日の朝、わたくしは、ひさしぶりに、前世の夢を見ましたの。
そのしだれ桜を、幼いわたくしは、
あの日は、とてもきれいな空でしたから、しだれ桜も美しくて、わたくし、感動したのですの。
わたくし、それを思い出しながら、目を覚ましましたのよ。
新しい制服姿で、屋敷を出たわたくしは、馬車で、満開の桜を眺めながら、魔法学園に向かいましたの。
新しい制服で身を包み、ドキドキしながら、入学式の会場に入ったわたくしは、一年生が座る席のところで、制服姿のミリアムさまと会い、ホッとしましたの。
一年生が座る椅子は、春らしいピンク色なの。
王族と、公爵家と、侯爵家、それから、伯爵家は同じクラスです。
ミリアムさまの右横に座り、しばらくすると、メリッサさまがいらっしゃいました。
ものすごく、ひさしぶりな気がしますわ。
赤髪縦ロールは目立つので、すぐにわかりましたけどね。金色の瞳も、めずらしいのでね、みなさま、彼女を見ていますわよ。
背が高く、凛とした雰囲気の、メリッサさまは、わたくしたちとあいさつを交わしたあと、わたくしのうしろに座られましたの。
わたくしの右の席が、空いていますのに。
と、思っていましたら、会場がざわめいて、ヴィオリード殿下が、姿をお見せになりましたの。
この学園の敷地内では、ふつうのおじぎでよいらしいので、わたくしはみなさまと共に、ヴィオリード殿下に向かって、頭を下げましたの。
そろそろいいかしらと思いながら、ゆるりと顔を上げると、ヴィオリード殿下と、目が合いました。赤紫色の双眸。いつの間に、近くに。
フッと、ほほ笑んでくださったように見えたので、ドキッとしましたの。
ご令嬢方がキャーって、黄色い声を上げましたのに、悪役令嬢メリッサさまは、無言です。
あらあら、なんてことでしょう。
制服姿のヴィオリード殿下ですわっ!
背が高くて、かっこいいですわね!
もうすぐ、十歳ですものね。
入学式が無事に終わり、翌日、始業式がありましたの。
一学期が始まっても、最初は、家庭教師から教わっていたことと同じような、勉強みたいですの。
魔法もね、最初は、魔法とは、どのようなものなのか、先生が、見せてくださったり、基本的なことを、教えてださったりするらしいのよ。
自分の中の魔力を感じることができるようになるまでは、長い時間がかかるんですって。
そんなこと、知りませんでしたわ。お水を出したり、ケガを治したり、ふつうにできてしまいますしね。みなさまには、ないしょですけどね。
一人だけ目立つのは嫌なの。
めずらしい光属性の持ち主が、わたくしだけではなくて、安心よ。メリッサさまがいてくださって、よかったですわ。
試験はないのよ。
魔力が強い、貴族だけの学園で、大きな目的は、魔法を学ぶことだけど、男性は、剣術も学ぶの。
家でも、学んでいると思うけどね。
学園長は、人とのつながりがどうとか、強くたくましい肉体と精神をとか、おっしゃっていたような気がしますけど、長いお話だったので、もう忘れてしまいましたの。
♢
そして、五月一日に、デュオン兄さまが十二歳になられまして、二日に、家族で、わたくしと、デュオン兄さまのお誕生日を、お祝いしましたの。
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