第三十話 月日が流れるのは早いですわね。
メリッサさまが、
わたくしを置いて。
いいのですよ。
いいのです。
メリッサさまは、ヴィオリード殿下の婚約者ですし、デュオン兄さまは殿下の親友ですからねっ。
いいのですよっ!
同じ日本からきたのに、わたくしだけなんだか、仲間外れな気がするのは、秋のせいなの。きっと。
わたくし、ヒロインですわよね?
それで、メリッサさまは悪役令嬢で、孤独に育って、ヴィオリード殿下に執着していたけれど、前世の許婚と出会ってしまったのよね。
前世の許婚と仲良く、婚約者に会いに行く悪役令嬢。
一人で、孤独を感じながら、自分の部屋のソファーに座るヒロイン――それは、わたくし。
さびしいわ。さびし過ぎる。
こんなにさびしい乙女ゲームでは、なかったはずよね!?
乙女ゲームでは、もっと自由に、いろいろな場所に行って、冒険したり、魔獣のたまごを見つけたり、していたわよねっ!
でも、魔獣のたまごなんて、どこにもないの。
見たことないの。さびしいわ……。
うちには、猫の魔獣のシーフォちゃんがいるので、シーフォちゃんを可愛がれば、よいのですけどね。
でも、シーフォちゃんはね、猫だから、いつも同じ場所にいるわけではないの。
時々、ふらっとわたくしの前に現れて、もふもふさせてはくれるけどね。
♢
九月が終わり、十月になり、五歳になった子の、お披露目パーティーに参加したり、ミリアムさまと二人で、お茶を楽しんだり、楽しそうな恋愛のお話をお聞きしたり、十一月も、そんな感じで、十二月には、キリア兄さまが、十二歳になりましたの。
♢
雪が降る寒い日に、お母さまと、二人でお茶をしていた時のことです。
いつもはメリッサさまのお話をされない、お母さまが、このようなことをおっしゃったの。
メリッサさまは、ヴィオリード殿下の婚約者にふさわしくないという声が、たくさんあるそうなのです。
我が
王妃さまは、殿下が本気でだれかを愛し、その
そのお話のあと、なぜか、お母さまは、わたくしをじっと見つめながら、「ララーシュカ、あなた、結婚したいと思う方はいる?」って、聞かれましたの。
その時、ふっと、
そうしたら、「まだまだ子どもね」って、お母さまに、笑われてしまいましたわ。
わたくし、まだ子どもなのよ。だって、まだ五歳だもの。
♢
そして。
同じようなことをしていたら、春になり、五月一日、デュオン兄さまが、八歳になられました。
五月二日に、わたくしと、デュオン兄さまの、お誕生日を、家族が祝ってくれましたの。
お母さまが、もう、五歳のお披露目には行かなくていいとおっしゃったので、これからは、行かないことにしましたの。
ミリアムさまとお会いするのは、とても楽しいのです。ミリアムさまの恋人の、ルゼウスさまも、可愛らしい方ですしね。
でも、わたくしたちって、目立つのよね。
一番目立っているのは、メリッサさまだと思うのですが、デュオン兄さまが
でも、メリッサさまのお母さまは、それをお怒りになったりはしていないようですし、さわぐのは、直接関係ない、野次馬さんだけですの。
まあ、そういうものですよね。
関係ない方々が、正しいとか、おかしいとか、裁くんですよね。
♢
五月五日。
わたくし、六歳になりましたの。
今日も登城されたデュオン兄さまが、ヴィオリード殿下から、わたくしへにお誕生日プレゼントを、持って帰ってきてくださいましたの。
びっくりしましたわ。
いただいたプレゼントは、お花とお菓子と、六歳の誕生日おめでとうと書かれたメッセージカードでしたの。
わたくしは、お菓子をおいしくいただいたあと、お礼のお手紙を書いて、デュオン兄さまに、ヴィオリード殿下にお会いした時に渡してほしいと、伝えましたの。
♢
その夜。
ユニコーンの姿のユールさまが、わたくしに、会いにきてくださったので、もふらせていただきましたの。
♢
それから、月日が流れましたの。
わたくしが八歳になる年の三月、キリア兄さまが、魔法学園を卒業されました。
そして、デュオン兄さまが四月に、魔法学園に入学されたの。
わたくしも早く、魔法学園に行きたいわ。
今は、そう思っているのですが、通うようになると、めんどうだとか、言いたくなるような気もしますわね。
デュオン兄さまったら、魔法学園に通うようになってからも、お休みの日には、メリッサさまとご一緒に、登城されるの。
お城で、楽しいことでもあるのかしらね?
ヴィオリード殿下、お元気かしら?
わたくしが七歳になった日も、殿下から、お花とお菓子と、七歳の誕生日おめでとうと書かれたメッセージカードを、いただいたの。
デュオン兄さまが、お城から、持って帰ってきてくださったのよ。
わたくしはお菓子をおいしくいただいたあと、お礼のお手紙を書いて、デュオン兄さまに、ヴィオリード殿下にお会いした時に渡してほしいと、伝えましたの。
七歳のお誕生日の夜も、ユニコーンの姿のユールさまを、もふりましたのよ。
もう、わたくしのお誕生日の夜は、ユールさまをもふる日に、なっていますの。
メリッサさまとも、長く、お会いしていないのよ。
魔法学園に通うようになれば、会えますけどね。
そして、わたくしが八歳になり、その日も、ヴィオリード殿下から、お花とお菓子と、八歳の誕生日おめでとうと書かれたメッセージカードを、いただいたの。
今までと同じように、デュオン兄さまがお城から、持って帰ってきてくださったのよ。
お菓子をおいしくいただいたあと、わたくしはお礼のお手紙を書いて、デュオン兄さまに、ヴィオリード殿下にお会いした時に渡してほしいと、伝えましたの。
八歳のお誕生日の夜も、ユニコーンの姿のユールさまを、もふりましたのよ。
そろそろ、ユールさまに乗ってみたいのですが、ダメかしら?
断られたら悲しいので、なかなか言えませんの。
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