【絵本・月夜の民】

絵本 月夜の民

 遠い昔、この大陸には、月夜つきよの民と呼ばれる人たちがいました。

 月夜の民は、魔力を持たないけれど、精霊を見ることができました。

 夜目がきき、走るのが速い人たちでした。


 そして、雨や雪が降る前に、それを感じ取ることができたのです。

 今年は雨が多いとか、雪が多いなども、予知していたと伝わっています。


 月夜の民は、森に住み、自然を愛していました。特に、月を愛する者たちでした。

 漆黒の髪と、藍色の瞳を持ち、背が低く、身体は小さく、肌は雪のように白くなめらかで、美しい容姿の者が多かったそうです。


 月夜の民は、王族たちや貴族たち、それから、金持ちの商人たちに、とても人気でした。


 魔力がないため、妻や夫にはしなかったようなのですが、この美しい存在を愛でたいと思う者たちや、周りに自慢したいと願う者たちが、たくさんいたのです。


 月夜の民を手に入れた者たちは、月夜の民に、豪華な首輪と、リードをつけて、きらびやかな衣装を着させて、豪勢な食事を与えて、大事に育てたと伝わっています。


 夜な夜な、パーティーをしては、他の金持ちたちに見せびらかしていたという、話もあります。


 自然から離れた結果、月夜の民たちは、心と身体を壊し、この大陸から、いなくなってしまいました。

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