第53話 幼馴染と最低男④
「……何が起こった!?」
気づけば俺は大地に横たわっていた。
俺は久遠楓に手を伸ばして、それから……
「ッ……!」
左手に痛みが走る。腕を捻ったのか?
左手を動かすと鈍い痛みがはしる。
「いま私に何をしようとしたのかしらね?」
久遠楓が俺を見下ろしている。そうか……俺はこいつに!
「あんた……もしかして私によからぬことをしようとした?」
腕を抑えながらゆっくりと立ち上がる俺に向けて久遠楓が俺に問いかける。
「クッ、おまえ……小娘の分際で、この俺に暴力をふるったのか!!!」
「何言ってるのよ。あんたが私に掴みかかってきたんじゃない?
どうせ女子高生の1人くらいは、男の力ならどうにでもなる。
そんなことでも考えていたんでしょう?」
「……」
「おあいにくさま。
私にもちゃんと考えがあって、
あなたには隙を見せたほうが、調子に乗ると思ってね。
案の定、私によからぬことを企んでいたようだけど残念ね」
「……なるほど。間抜けな女が俺を誘ってるのかと思ったが、少しは知恵がまわるようだね、久遠楓くん」
「あら?ようやく本性を出したのかしら?言葉遣いもだいぶ下品になってるわよ」
(頭に血が上り、どうにかなりそうだ。……後悔させてやるぞ、小娘!!!)
「まあ、おまえに紳士ぶる必要はもうないからな、俺の久遠剛への復讐のため役立ってもらおうか、久遠楓っ!!!!」
俺は立ち上がる際に右手で掴んでいた砂を久遠楓の顔目掛けて投げつける。
そして、咄嗟に顔を庇った久遠楓に向かって殴りかかり……
「なっ!?」
殴りかかった右手の関節を極められ、抑えつけられる。
「グッ!!!お、おまえ、何でぇ!!!!!」
「残念でした。
少し驚いたけどね、私は少し古流柔術の心得があるのよ。
素人を投げ飛ばすことも、こんな風に関節を極めることは造作もないわ」
「この女っ!!!!そんなこと今まで少しも話さなかったじゃないか!」
「バカなの?なんで私がそんなこと言わないといけないのよ。
勝手に弱い女と勘違いして、逆ギレなんて間抜けなことね、三枝光一さん?」
「あぁ!!!痛いっ、痛いっ!!!!」
このクソ女、俺の右手を捻ってやがる。……絶対に許さんぞ。
「泣きわめくな、最低男。
で、あんた私に何をしようとした。そして父に何をしようとした?」
「……あぁ!!!!痛い、痛い、痛いっ!!」
このクソ女、俺の腕を!!!
「あんたに黙秘権なんかないのよ、さっさと吐け!!!」
「わ、わかった。話す。話すから手を放してくれ」
「……まあ、いいでしょう。
どうせ何度やっても私の方が強いし、逃げようとしてもすぐに追いつける」
そして久遠楓が俺の手を放した。
(クックク、油断したな。このクソ女……バカにしやがって)
少しふらつきながらも、俺は再度左手で殴りかかる。
「バカね……」
久遠楓が俺の左手をかわしざま、手首を掴みねじり上げる。
「ッ!!!(だが、最初から分かっていればやりようもある)」
俺は左手を捻られるのと同時にジャケットに忍ばせていた得物を右手に構え、久遠楓に突き出した。
バチッ!!!!!
「!!!あっ……」
久遠楓がふらつきながら倒れこむ。
俺がジャケットに忍ばせていたのは『スタンガン』
もしもの時に備え持っていたのが幸いした。抵抗された際に小娘を抑えるのに使う予定で持っていたものだ。
俺は動きの鈍った久遠楓にのしかかり、用意していた手錠で久遠楓の両手を拘束していく。
「うぅ……こ、このクズめ……」
まだスタンガンの効果があるのか、弱々しく悪態をついてくる。
「クックク……さて、
俺は声を出せないように、久遠楓の口に取り出した猿ぐつわをかませていく。
用意は万全だった。これがこの間抜けな女と周到な俺との差だろう。
「さて、あの辺なら人も寄りつかないだろう」
俺の視線の先には木々が生い茂り、さらに人気のない神社の裏手。
「ほら、さっさと来い」
久遠楓を引きずりつつ、神社の裏手にまわろうとしたその時……
「!!!!」
背中に衝撃を受けて、久遠楓と共に地面に叩きつけられる。
「あぁ!楓すまない!!!!」
振り返るとそこに居たのは、久遠楓の幼馴染の男だった。
――――――――――――――――――
【読者の皆様へお願い】
作品を読んで『面白い、面白くなりそう』と思われた方は、目次の下にあるレビューから★3を頂けると嬉しいです。作品フォロー、応援、わたしのユーザーフォロー大歓迎です!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます