第50話 幼馴染と最低男①
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私は学校が終わりいま帰宅しているところだ。
翼は紅葉と約束があるとかで、一緒に帰りたかったが今日は別行動だ。
本当は一緒に行きたかったが、紅葉が翼と過ごす時間が最近少ないと愚痴をこぼしていたので、私が遠慮した形だ。
だから私はいま一人だ。……後に気配を感じる。
最近、何か近くに気配を感じていた。気のせいかもしれない、そう感じていたが何かつけられているそんな感じがする。
一応、武術の心得がある私としては、嫌な感じがしたので気のせいで片づけずに警戒していた。
たまに知らない男性に声を掛けられることはある。今回もその類ならば問題はないけど、一応備えはしておこう。
私はスマホに手を伸ばして操作をしておく、あくまでも保険だけどね。
気配を感じるようになったのは、ここ数日のことだ。
決まって私が一人の時だけ。向こうが行動に起こせばこちらも対処するのだが、気配は私の家に近づくと消えてしまう。
つまり私に用はあるが、家を探る目的とかではないのだろう。
う~ん、正直心当たりはない。だって私は普通の女子高生だ。
暴漢の類なら、遠慮なく潰してやる。私をかよわい女子高生と思わないでもらおう。そう気合を入れているが、今までは杞憂に終わっていた。
でも、今日は違った。!?……気配が近づいて来たのだ。
……そして、私はゆっくりと振り返った。
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俺はチャンスを待った。少々強引だが美里さんを取り戻す為にあの愚かな女に役立ってもらおう。
そして機は訪れた。あの女は一人で帰宅している。何度かあの女は一人になるタイミングはあったが、周りに人がいないことは少なかった。だが、今日は人気がない。
側にはあいつとよく一緒にいる男もいない。あの男が久遠楓が話をしていた幼馴染の男だろうか?まだ続いていたのなら、ずいぶんと甘い男だ。あんな身勝手で愚かな女など見捨ててしまえばいいのだ。
しかし、あの女は傑作だったな。まさか少し不安を煽ってやったぐらいで、あんなにも面白いように踊ってくれたのだから。
あの日も誕生日に連れ出したが、本当に誘いに乗るとは思わなかった。俺はあの女と会っていたことをずっと記録していた。
実際、誕生日に連れ出した時も記録を録っていた。それらをあの幼馴染の男に送りつけてやって、仲を引き裂いてやろうと考えていた。
まさかのご本人が現場を見ていたと、あの女から電話で聞いた時は笑いをこらえるのが大変だったくらいだ。
久遠の姓を持つ、あの忌々しい男の血をひく娘が、恋愛に現を抜かすことが許せなかったのだ。八つ当たりだと?それがどうした。俺から美里さんを奪った男への嫌がらせの一環だった。ふん、それの何が悪いというのだ。
予定外だったのは、紅葉の存在だ。うかつにも俺は紅葉や継母が久遠剛の別れた元妻と子であることに、しばらく気づかなかった。
興味がなかったし、それほど一緒に過ごすこともなかったからだ。
紅葉が姉や久遠剛とは疎遠であることは聞いていたが、それがこの先も続くかは不透明だった。俺のことが漏れて警戒されるのは面白くない。まだ美里さんには気づかれたくなかったからだ。
だから義妹に会うのは当分避けたかった。もし姉から話を聞けば必ず俺に確認しようとするだろう。だから一度距離をとる為に、俺は海外へ行ったことにしたのだ。
実際、俺は海外留学が決まっている。理由も自然だった。
俺は時間をかけて久遠剛を貶め、美里さんを奪い返すための行動を起こすつもりだったのだ。
予定は変更になったが、これはこれで悪くはないだろう。あの女にはもう一度俺のために役立ってもらうことにした。
まあ、今回の件がうまくいけばあの女も今度こそ、幼馴染の男に見捨てられるだろう。俺から美里さんを奪った久遠の奴等がどうなろうが知ったことではない。
流石にあの男と縁を切った紅葉や継母に何かしようとは思わないが、久遠剛には娘が、あの久遠楓が大切だろう。俺の要求を飲むしかあるまい……クッククク
所詮、女子高生の小娘だ。俺は計画の成功を疑ってはいなかった。
周りに人気も少ない。仕掛けるならここ等がいいだろう。俺は徐々に距離を詰めていく。
……そして、あの女が振り返った。
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