第46話 幼馴染委員長の抜け駆け(前編)

 ある日の休日。

 今日は友人の南雲大地なぐも だいち城嶋茂じょうじま しげると福岡市最大の繁華街である天神に遊びに来ている。


 俺も毎回幼馴染の女の子たちとだけ過ごしている訳ではないのだ。

 男の友人達としか出来ない話や遊びもある。そして今日遊びに来ているのは、アミューズメント施設内にある時間制でスポーツやゲーム等が遊べる施設だ。いわゆる『スポ〇チャ』のようなものである。

 そういえば友人達についてあまり紹介してなかったかもしれない。


 南雲大地なぐも だいち

 野球部所属の4番でエースと言う、1年にして早くも野球部の中心にいる逸材。既にプロのスカウトからも注目されている学園でもトップクラスの有名人だ。

 姉の茜さんが美女と言われる優れた容姿だが、当然弟の大地も美男子だ。そして性格も明るく、誰に対しても公平なので当然ながらモテる。モテすぎて学園にファンクラブがあるくらいだ。

 本人は高校では野球に専念したいとのことで、彼女は作らない、告白にも応じないと公言しているので、女の子達からはアイドルのような扱いを受けている。

 ただ気になる噂として、俺と大地が仲良くしてると、異常に熱い眼差しを向けてくる一部の女子生徒達がいると聞いたことがある。俺も大地もこの噂には踏み込まないことにしている。知らない方がいいこともあるのだから。


 城嶋茂じょうじま しげる

 園芸部所属で、園芸の知識や技量に優れており、その界隈では有名人らしい。大人や本業の方からも注目を浴びていると聞いたことがある。何でも新聞に記事が載ったりすることも度々あるとか。

 さらにボランティア活動で、河川の調査や汚れた海岸の再生等にも尽力していると聞いたことがある。さらに外来種が在来種に与える影響などの調査にも参加する等、同じ高校生とは思えない立派なやつだ。

 容姿は正直老けている。運動も得意ではない。口下手でもある。しかし「いい人」なので老若男女問わず慕われている不思議な友人である。


 午前中は「バッティングセンター」や「ボーリング」等のスポーツ系の施設を楽しむ。もちろん大地の圧勝。茂はボロボロ、俺は大地には及ばないが十分に満足いく結果で終われた。そして、昼はどうしようかと話をしていた時だった。


「あ、南雲くんに西条くん!2人でなに……あ、あと、城嶋くんもいたんだ」


「なぁ、明らかに俺の扱いが酷くない?」

 茂が落ち込んでいる。ドンマイだ茂……


「やあ、松岡さんに長瀬さんじゃないか。君たちも遊びに?」

 大地がクラスメイトに話しかける。確かこの2人は七海とも仲が良い友達だったはずだ。


「うん、南雲くんに西条くんもデートじゃなくて、ここに遊びに来たんだね?あ、城嶋くんも」


「……(シクシク)」

 茂、しっかりしろ!!

 いや、この2人いまデートとか言いかけたよな、この2人まさか……あちら側の属性か?

 これは否定しないと危ないぞ。


「デートじゃなく、野郎3人で遊びに来たんだよ、


「個人で妄想してるくらいなら口は出さないけど、面と向かって言われたらあまりいい気はしないな。

 それともはデートなのかい?」


「ゴメン、ゴメン。

 西条くんに南雲くんも冗談だって。2人をカップリングするのは妄想だけにしときます。

 だから間違っても久遠さんには内緒ね、翼くんが絡むとマジ怖いから」

 松岡さんが謝ってきた。どうやら女の子たちの中では、俺が関わる楓は怖い存在らしい。


「ねえ、ねえ3人とも、良かったら一緒にお昼でも行かない?」


「うん、それはいいね。こちらも3人だしね」

 長瀬さん、松岡さんから誘いを受ける。……ん?3人?


「長瀬さん、松岡さん達も3人で来てるのかい?」


「うん、ちょうど戻って来たみたい。ほら?」


「つ、翼くん?」

 後ろを振り向けばそこにいたのは、幼馴染でもありクラス委員長でもある中野七海なかの ななみだった。



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