第42話 ざわつく幼馴染姉妹

 side: 久遠楓くおん かえで


 期末試験が終わり私は待ち合わせ場所に向かっている。

 今日は妹の紅葉と会う約束があり、紅葉とは週1〜2くらいの頻度で顔を合わせている。

 最初の頃はぎこちなかった私達だが、いまは幾分昔のような関係に戻ったかのように思う。


 今日は中等部の試験も終わり、紅葉も翼に会いたいと思っているようだが、その前に少し私とも会いたいと連絡がきていた。

 本当ならそのまま翼の家に行けばいいのに、私も一緒に誘おうと気を遣っているのだろう。

 まだ私が翼の家には行きづらいだろうと、一緒になら行きやすいだろうと考えてくれたのだろう。恋敵でもあり翼を一度傷つけた私に甘い妹だ。



 ――――待ち合わせ場所に到着。既に紅葉が待っていた。


「お姉ちゃん〜」

 紅葉が手を振っている


「ゴメンなさい。待たせたかしら?」


「だいぶ待ちましたよ。妹を待たせるなんて高くつきますよ?」


「妹を待たせたところで、別に何もないわよ」


 最近はこんな軽口から入ることが多い。数年の時間を空けて再会した私達姉妹だが、こんなやり取りができること自体が私にとっては嬉しいことだ。



 紅葉と過ごす時に話題になるのは、やはり翼の話題が中心になる。あとは数年離れていた時の出来事や近況について等。

 この日の話題もいつも通りであり、そろそろ翼の家に行くかと話をしていた時だった。

 小戸公園で何となく会話をしていた私達に近づいてくる人がいた。


「あら?楓さん。いまお帰りですか?」

 優しげな微笑を称えた美女が楓に手を振りながら話しかける。


「あ、美里さん」

 振り返ると父と再婚した継母の美里さんが、手を振りながら近づいて来ていた。


 (……あれ?もしかして、紅葉と居るところを見られちゃまずくない?)


「そちらの可愛いお嬢さんはお友達かしら?」

 紅葉を見ながら美里さんが聞いてくる。


「……(えっ!?ど、どうしよう!これ何て言えばいいのっ!?)」

 私は紅葉を見ながら思案する。


 すると紅葉は……

「こんにちは。わたしは楓先輩にお世話になってます後輩の大久保夏美おおくぼ なつみです」


 (マジか!?こいつ)

 信じられない。咄嗟に状況を読んで偽名を名乗り平然と返した。私には出来ない臨機応変の対応力。しかもあんな一瞬で違和感なく、七海さんの旧姓を少しもじって利用したところが恐しい。


「こんにちは。私は楓さんのお父さんと春に再婚した久遠美里です。楓さんの後輩さんでしたか。大久保さん、これからも楓さんと仲良くしてくださいね」


「はい。もちろんです。美里さんとお呼びしても?しかしお若いですねぇ、それにとってもお綺麗です」


「まあ、お上手な後輩さん。えぇ、美里で良いですよ。私も夏美さんとお呼びしていいかしら?」


「もちろんです。美里さん」


 (マジか!?こいつ)

 あっという間に美里さんと距離を詰めた……コミュ力のバケモノか妹は!?

 ……この分だと、紅葉がボロを出すことはないだろう。やらかすなら私だ。だから気を引き締めてかかろう。


 さっそく打ち解けた2人は笑いながら談笑している。


「夏美さん、良かったらお家にいらっしゃらない?」


「ありがとうございます。でも今日はあまり時間がないので次の機会にぜひ」


 紅葉……よくもまあスラスラと言葉が出るものだ。私はハラハラして気が気じゃないのに。


「まあ、残念。もう少し夏美さんとお話したかったのだけど……楓さんはあまり学校のお話してくれないし」

 美里さんが私を見ながら紅葉に言葉を返す。


「ハハハ……そんなに学校の話題でお話できることがなくて」


「私はもっと楓さんと仲良くしたいの。

 流石に16歳になった楓さんにお母さん扱いをしてもらうのは難しいと思うけど、家族としてはもっと仲良くしたいのよ」


「はい。それは私も仲良くしていきたいと思ってます」


「そうでしょ?だから楓さんとお友達の夏美さんを交えてもう少しだけお話がしたいな」


「じゃあ、少しだけなら大丈夫なんで、少し場所を移してお話しましょうか?」


 (え!?紅葉はそれで大丈夫なの?)


 紅葉と面識がないとはいえ、父と再婚した継母の美里さんと紅葉が一緒にいることはリスクだと思うんだけど、紅葉は違うのだろうか?


 紅葉を見ると、私に向けて紅葉が頷く。

 まあ、私より腹芸に長けている紅葉が良いならと美里さんの提案に乗り、近くのカフェに場所を移すことになった。



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 次回予告:姉妹&継母さん続きます

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