幕間

第40話 ???

「……美里さん」


「何かしら?」


「あいつは誰?」


「えっと、あいつとは?」


「俺は見たんだよ!美里さんが腕を組んで楽しそうに歩いてる姿を……あいつは誰だよ!」


「腕を組んで……もしかして剛さんのこと?」


「名前なんかどうだっていい!あいつと美里さんは何なんだよ!!」


「何って……」


「……あ、そうか!そう言うことか……

 何だ、美里さんも人が悪いよ。つい俺が知らない男だったから熱くなって悪かったよ」


「……」


「あれは従兄弟とか、もしかしたら年上だし叔父さんとかだろ?

 いや、本当にゴメンよ。つい慌てちゃってさ」


「別にあなたにわざわざ言わないといけないことじゃないんだけど……剛さんなら……」


「いやぁ、見かけた時はつい頭に血がのぼっ……」


「彼氏よ、剛さんは」


「……え?」


「彼氏よ、私の彼氏。プロポーズもされてるわ」


 そう言いながら彼女は左手を俺に見せる。

 そして左手の薬指に光る指輪が俺の視界に初めて入る。

 あれ?さっきまであんな指輪してなかったよな?あれ?あれ?


 あ…そ、そうか。あの指輪は俺が彼女にあげた指輪だっけ?でも、何で忘れてた?


 あ、あれ?でもプロポーズって何だ?


「なあ、美里さん。それ俺があげた指輪?プロポーズって俺が?」


「……違いますよ。何を言ってるんですか?

 この指輪は剛さんが私に贈ってくれたもの。そしてプロポーズは剛さんが私にしてくれたのよ」


「えっと……ゴメン。意味が分からない」


「……えっと、もう一度言いますよ?

 剛さんは私の彼氏。そして私はこの指輪と共にプロポーズされて、それを受けたわ」



「ちょっと、ちょっと待って、待って。

 美里さんと俺は付き合ってるでしょ?美里さんの彼氏って俺だよね?」


「……え?いつから私たちはお付き合いしてることに?」


「だって何度もデートしたし、俺と一緒にいて楽しそうにしてたじゃないか!」


「……デート?

 もしかして、服を買うから選んで欲しいと言った時や、参考書選ぶのに本屋さんに付き合って欲しいと言われて一緒に選んだ時かしら?」


「俺はデートだと思っていたよ。そして美里さんはそれに付き合ってくれた。

 好きでもない男に付き合ったりしないだろう?」


「服の時には、何度も断ったはずよ?参考書を選ぶのは仕事として付き合っただけ」


「それでも俺はデートだと思ってたよ!」


「ちゃんと断れなかったことはゴメンなさい。

 でも、あなたが私に好意を寄せてくれるのは知ってたわ。だから私は、あなたに何度もお付き合いしてる人がいると伝えてたはずなんだけど……」


「それ、俺のことだと思ってたんだよ」


「えっと……ちょっと待ってくれる?

 あなた大丈夫?私はお付き合いしてる人がいると言ったのに、それが何故あなたのことだと思ったの?

 そもそも私はいつ告白されたのかしら?それに応じた記憶もないのだけど」


「いや、遊びに誘ったのに応じてくれたから、もう告白に応じてくれたも同然だろう?」


「……はぁ、ちょっと待ってくれるかしら。頭が痛くなってきたわ。

 ねえ?それで付き合ってると言われても困るわ。

 もう一度言うわよ。私には将来を誓った彼がいる。私はあなたへ恋愛感情はないの」


「じゃあ、俺と美里さんの関係って何だよ……」


「家庭教師と生徒。これ以外の関係はないでしょう?」




 ――――俺は目を覚ます。

 夢を見た。あれは夢だった?俺の彼女は美里さん……いや、もう違うんだ。

 腹立たしいが美里さんは名字を変えあの男の妻になった。俺と言う男がいながら俺を捨てたのだ。

 美里さんが悪いのか?いや違う!悪いのは美里さんを誑かしたあの男だ。


 このままでは終わらせない。終われないのだ。美里さんをこの手に奪い返すまでは終われない。



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 次回予告:次回からが第3章です

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