第38話 幼馴染たちと遊びに行こう(8)
みんなとの待ち合わせ場所に着いたので、紅葉とのデート?もこれで終了になった。
紅葉からはこっそりと2人で消えようとずっと誘ってくるので、冗談で『2人でゆっくりできるとこに行こうか?』と返したところ、真っ赤な顔をして慌てふためいていた。
俺がそんな反応することはないと思っていたようだが、紅葉は攻められると駄目なようだ。
赤い顔で唸っているだけの紅葉を可愛いと思ったのは、本人には内緒である。
「お兄ちゃんーこっち、こっちー」
天が手を振りながら呼んでいる。
「悪い、待たせたか?他のみんなは?」
天は以外のみんなはいないようだ。
「うん、みんなは別のとこで遊んでるよ。
ここからは天と一緒に過ごしましょう」
「じゃあ、行きましょうか」
「いいぞ、行こうか」
紅葉と俺が返事する。……ん?
「いや、いや、紅葉はもう終わりでしょう?
フラワーミュージアムにみんな居るから、さっさと行きなさい」
「……うーん、うーん」
「いや、いや、何悩んでんだよ!」
「まあ、いいか。仕方ないですね〜」
「紅葉……あとで話をしようか」
この2人は昔から仲が良い分、結構不穏なやり取りも多い。そういえば天は俺と出会う前に、紅葉に先に出会ってたんだっけ。
「……さて、あの腹黒な紅葉も行ったことだし、ここからは天と過ごしましょうか」
「……ハハハ、行こうか」
最初のイベントは、セグウェイツアー。
海の中道海浜公園内をセグウェイに乗って巡るツアーのようだ。
季節のおすすめ箇所などを巡り、季節の花のエリアや森の中、海の近くなど、色々な景色を楽しむことができる。
あと、俺は前からセグウェイに乗ってみたかった。流石は妹、兄の好みをよく分かっている。
ガイドさんの指示、先導の元セグウェイでついて行く。身体の傾け方にコツはいるが、慣れてしまえば操作は容易だ。これは海浜公園のように広大な敷地を巡るアクティビティとして相性がよい。
「お兄ちゃん、楽しいね〜」
天もご満悦のようだ。
「あぁ、これはいいな。楽しい!」
「良かったよ、絶対にお兄ちゃんも好きだと思ってね」
本当によく出来た妹だ。
しかし、他のみんなと同じく妹にも何か爆弾を放り込まれるんだろうか?
いくらでも付き合うつもりで臨んだ1日だったが、想定外続きの1日になっている。
そして、楽しかったセグウェイツアーも終わりを迎える。
あくまでもツアーなので自由に公園内を移動できる訳ではないが、俺たち兄妹はこの類の身体を使うような遊びが好きなので、満足度が高いイベントだった。
「さて、次は『動物の森』へ行きましょうか。お兄ちゃんも天も動物も好きだしね」
――――動物の森に到着。
動物の森。※これ本当の名称です。
園内では数々のかわいらしい動物たちを身近に見ることができる。動物たちと触れ合うこともできて、俺のイチオシはカピバラ。天はカンガルーがイチオシである。
あ、ちなみに世界的に有名な某ゲームタイトルとは関係ないので注意頂きたい。
俺たちが動物の森で動物と触れ合ったり、のんびりと歩きながら話をしている時に天から話を向けられる。
「お兄ちゃん、何か動物の森に来てから少し落ち着かないみたいだね?」
「いや、落ち着かないと言うか、今度は何を言われるのかと気になってな」
「あぁ、散々みんなから攻められて天からも何か言われると思ってしまったんですね。
安心してください。特に深くお兄ちゃんに踏み込む予定はないので」
「うん?天は俺に特に聞きたいことや言いたいことは無いのか?」
「ずっと一緒に暮らしてますし、他のみんなのように聞いておきたいことや、言っておきたいことは2人で過ごす中で話せるしね。
天は普通にお兄ちゃんと過ごせればそれで良いのですよ」
「そういえば茜さんには俺から話を振って、話を聞いたんだけど、茜さんも別に何か話をしたいことがあったのかな?」
「いえ、茜お姉ちゃんは自分のことを話したいと言ってたので、お兄ちゃんから話を振ってくれて良かったと思いますよ」
「そうか、それは良かった。茜さんだけは俺が予定を崩しちゃったかもって思ってたんだよ」
「今回は2人になった時に、みんなそれぞれで色々話がしたいとみんなが言ってたんです。
それでお兄ちゃん、今日一日はどうでしたか?」
「そうだな。俺自身が気づいてないことを、たくさんみんなが教えてくれたよ。
茜さんからは俺がいかに想われていたかを、七海からは押し殺していた感情との向き合い方、紅葉からは恋愛についてか。
ずっと想われていたことを改めて聞いて嬉しかったし、いろいろと自分で抱えていたおかしなところも気づかせてもらった」
「……お兄ちゃんが泣けなかったことは七海さんから聞きました。お恥ずかしいことに天はそれに気づかなかったのです。
もちろん我慢してることは分かってましたが、泣かないのではなく、泣けないとは思ってませんでした。妹としていつも側にいながら気づかなかった。
ゴメンなさい。七海さんに聞くまで、お兄ちゃんに無理をさせてしまって……」
頭を下げようとする天、俺は慌ててそれを止める。
「謝らないでくれ、天。
俺が勝手に我慢して隠していただけなんだ。みんなに心配かけたくなくて、ほとんど無意識にやってただけなんだ。
俺だって七海に言われるまで、自分が泣けないとは思わなかった。今日は自分でも気づかなかったことを、ずいぶんと気づかせてもらったよ」
「やっぱり今日は楽しくはありませんでしたか?」
「いや、そんなことはない。今日はみんなとワイワイ楽しく遊ぶだけと思ってたから、驚いたのは確かだけど心から楽しかったよ。
みんなと過ごせて良かった。俺は楓以外とはデートと意識して遊びに行ったことなかったけど、俺にとって間違いなく転機になる一日だったよ」
不安そうにしていた天が俺の言葉を聞いて嬉しそうに笑う。
俺は心から今日みんなと過ごせて良かった。そう思った。
そして……
「奇遇ですね、お兄ちゃんに天お姉ちゃん」
そこに居たのは紅葉。どうやら先回りしていたようだ。
「待ち合わせはフラワーミュージアムのはず……紅葉なんで居るの?」
「わたしだけじゃないんですよ~」
そうして紅葉が指さす方には茜さん、七海の姿がある。
2人共少し気まずそうにしている。
「いや、すまん。合流してすぐに帰るのは、その……少し寂しくてな」
「ゴメンなさい。天ちゃんの時間なんだけど、少しは全員で過ごしたいなぁと」
「天お姉ちゃんはいつもお兄ちゃんと一緒なんで、ちょっとだけ先に来ちゃいました」
茜さん、七海は申し訳なさそうに。紅葉はペロっと舌を出しつつ悪びれない。
「……はぁ。まあ、いいでしょう。最後くらいは全員で遊んで帰りましょうか」
みんなと合流して少しだけ全員で海浜公園を楽しむことにした。
そして、俺とみんなとの初めての遊び&デートは幕を閉じることになる。
帰りは今日一日のことを楽しく話しながら、それぞれ帰路についた。
そっと後を見ると、変装?した楓がコソコソついて来てるのが見えた。
正直、かなり怪しい姿である。ずっと俺を尾行していたようだが、紅葉と展望台に行くまで気づかない俺も大概のようだ。
警察の人とすれ違ったら、職質されそうだが大丈夫だろうか?
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次回予告:次回でやっと2章終了です
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