第27話 幼馴染の後輩ちゃんは逃げられる

 ――――金曜日の放課後

 幼馴染【翼対策室】グループLIINE部屋


 アカウント「xx@sora」が、アカウント「yy@kaede」を部屋に招待しました。



 楓:「……また、変な部屋に呼ばれたわね」


 七海:「変な部屋って(笑)」


 楓:「もしかして、私は同盟に誘われている?」


 天:「いや、違いますよ。だいたい楓ちゃんは同盟に入る意思はないでしょ?」


 楓:「えぇ、私はみんなとは置かれた立場が違うからね。翼に認め直してもらう為には、同盟の女の子の1人としてではなく、私だけをちゃんと見てもらえるようにしたいの」


 天:「そう思ってました。まあ、でもはしないでくださいね?」


 楓:「無茶はするわよ。余裕なんかないもの。でも、天ちゃんが気にするようなはしないわ」


 七海:「気にするような無茶?」


 茜:「む?何のことだ?」


 紅葉:「何をエロ担当の2人が、すっとボケてんですか?分かってるくせに。カラダで誘惑とかすんなよって、天お姉ちゃんが釘刺してるんでしょ?」


 楓:「そんなにはっきり言わなくてもいいのよ、紅葉も」


 天:「そうそう。どエロボディを持つ、茜お姉ちゃんと七海さんはその辺ウブなんだから」


 七海:「どエロ……」


 茜:「天、それに紅葉、おまえ……お姉ちゃんをそんな目で見てたのか……」


 天:「そんな目で見てるのは、お兄ちゃんですよ。分からないとは言わせませんよ?お兄ちゃん本人は気づかれてると思ってないけど、みんなバレバレでしょ?」


 楓:「そうね。翼はかなりエッチよね。チラチラ胸ばかり見てるもの。あれ気づかれてないと思ってるのかしら?」


 紅葉:「そうそう。顔と胸を視線が往復してますもんね。目が合うと咄嗟に目を逸らすんですよ」


 七海:「た、確かに……思い当たるフシが……」


 茜:「むう、確かに……私は翼に見られても嫌な気分にはならんから、黙認してるが……あいつ全員にそんなことしてるのか?」


 天:「男子高校生なんて性欲で出来ているんだから、お兄ちゃんが特別な訳じゃないですよ」


 楓:「ところで、盛り上がってるところ悪いのだけど、私は何故この部屋に呼ばれたのかしら?」


 茜:「あぁ、話がだいぶ逸れたな。

 紅葉に少し聞いているかもしれないが、来週の土曜に翼とここのみんなで、一緒に遊びに行こうと思ってな。楓おまえも一緒にどうだ?」


 楓:「私は……」


 この後も遊びに行く計画の話は続く……

 それぞれが、ただの『遊び』ではなく、翼に爪痕を残さんと画策している。


 同時刻……西条翼さいじょう つばさは謎の悪寒に襲われた……らしい。



 ――――――――――――――――――

 

 side:三枝紅葉さえぐさ もみじ


 遊びに行く計画もまとまりました。

 今頃お兄ちゃんにも話がいった頃でしょうか。

 

 さて、この週末であの件を、はっきりさせておきましょう!

 あれですよ。三枝光一さえぐさ こういち、義兄の件です。

 この土日で直接、義兄に問い正すとします。


 そんな訳で久しぶりに義兄にLIINEを……

 義兄のアカウントに「」の表示が……あれ?


 えっ……

 私が知らないうちにアカウントを変えたのだろうか?

 とりあえず携帯に電話してみますか。


 ――――「○○○-○○○○-○○○○」

 義兄の番号に電話してみる。


 そして、電話から聞こえる音声は……

「おかけになった電話番号への通話は、おつなぎできません。」

 ……おかしい。何だろう?

 どうなっているのだろうか。


 わたしはリビングにいる母に聞いてみる。

「お母さん、ちょっと聞きたいんだけど」


「どうしたの?紅葉」


「ちょっと義兄あにに話があるんだけど、LIINEも繋がらないし、電話も出ないんだけど何か聞いてる?」


「光一さん?紅葉は聞いていない?特別交換留学が決まって海外へ行ってるはずよ」


「え!?だって今週まで普通に居たんじゃないの?なんでそんないきなり……」


「交換留学の開始自体は、秋からみたいね。でも早く向こうへ行って慣れたいみたい。

 前から準備はしてたみたいだけど、急に早めたんですって。そう言ってたそうよ、お父さんに。

 光一さんは私にはあまり相談してくれないから」


 聞いてみると、父には火曜に連絡が来ており、本当に急な動きだったらしい。

 住むところはどうするんだ?そう思ったが、それも解決済だったようだ。父も驚きはしたが、学生とはいえ成人した大人でもあるので、特に言うこともなかったそうだ。

 父も母も本人から話を聞いていると思ったそうで、わたしに話題を振ることもなかったらしい。

 交流がほとんどないとはいえ、仮にも義妹たるわたしにも話があっていいのではないか。そう思ったのだが……これには少し予感がある。



 ――――そして翌日。

 母と義兄の部屋へと同行する。部屋を引き払う訳ではないそうなので、あくまでも掃除メインが目的である。


 光一は一人暮らしをするようになってから、実家に戻る機会も少なくなっていた。光一が再婚した両親やわたしに気を使っていた。両親はそう思っていたそうだ。

 それでも年1~2回程度は実家に顔を出す機会があり、最近だとこちらに引っ越して来た4月に会っている「彼女に振られた」云々と言うのも、その時に聞いたのだ。


 母と契約していたマンションへ出向き、合鍵を用いて部屋に入る。

 部屋には必要最低限のものだけが置かれた部屋だった。わたしはその部屋の中で、デスクに飾られた「写真」が何となく目についた。

 その写真には、義兄よりが義兄と一緒に写っていた。


 わたしは、この急な動きを、兄はわたしから「逃げた」そう確信していた。

 おそらく「姉の件」が関係している。LIINEアカウントを変え、わたしからの電話は着信拒否。これは露骨である。


 わたしの旧姓を兄は知っている。少し調べれば簡単に分かるはずだ。久遠楓くおん かえでであると。

 交換留学は前から決まっていたのだろうが、姉の件をわたしに問いただされたくない。それが今回のような急な前倒しになったのだろうと。

 連絡先も父を頼れば聞き出せるが、おそらく電話で捕まえても、のらりくらりと躱される気がする。

 まあ、ずっとわたしから逃げられる訳ではない。こちらに戻るタイミングもあるだろう。その時に捕まえて問いただせば良い。

 逃げたのであれば、やはり「姉の件」には何か裏がありそうな気がする。


 母に聞いたところ夏には一度戻ると聞いてるそうだ。

 そのタイミングで必ず接触するチャンスはあるだろう。次は逃しませんよ、義兄さん?



 ――――――――――――――――――

 次回予告:委員長のお話です

 ――――――――――――――――――

【読者の皆様へお願い】

 作品を読んで『面白い、面白くなりそう』と思われた方は、目次の下にあるレビューから★3を頂けると嬉しいです。作品フォロー、応援、わたしのユーザーフォロー大歓迎です!!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る