第13話 幼馴染同盟の宣戦布告

 謎の団体から宣戦布告された。

 殺伐としたやつじゃないんだけど、唐突過ぎて驚いた。

 まず「驚いた」が先にきて、次にきた感情が「感謝」だろう。


 謎の団体「幼馴染同盟」メンバーは、

 西条天さいじょう そら

 南雲茜なぐも あかね

 中野七海なかの ななみ

 三枝紅葉さえぐさ もみじ

 ようするに、妹・お姉ちゃん・委員長・後輩だ。


 女性陣だけで2階へ行ったので、俺はハブられたのかな?とか思っていたら、妹の部屋で怪しい団体が設立されていたらしい。そして主な活動内容は、俺と恋人になることらしい。

 正直、意味不明である。全員がとんでもないレベルの美少女だ。俺が釣り合わないだろう?俺なんかヘタレ野郎だぞ?(……自分で言うと悲しいが、事実だし)

 そして、俺はそんなハイレベルな美少女軍団から告白されたのだ。


 天からは、

「お兄ちゃん、出会った時に一目惚れして、そこからずっと初恋は続いてます。妹としての家族愛もありますが、1人の女性として、あなたを男性として大好きなんです」

 ストレートな想いを伝えられた。兄としてではなく男として好きだと。


 茜さんからは、

「翼、私も初恋なんだ。諦めようとしても、決して消えなかった初恋なんだ。おまえを一人の女として愛している。おまえが欲しい、そして私の全てを貰って欲しい」

 俺はてっきり弟扱いされてるだけと思ってたら、1人の男として愛されてたのか……素直に嬉しい。


 七海からは、

「再会して、あなたを目で追う日々が続きました。あなたを見る度に、私の胸に宿る初恋の炎は消えていなかったと気づきました。この想いは久遠さんにだって負けない。あと、必ずいいお嫁さんになります」

 俺なんかをずっと想ってくれてありがとう。それに間違いなく、いいお嫁さんになるだろう。


 紅葉からは、

「もちろん初恋ですよ?だから、結婚しましょう。私はお兄ちゃんを裏切らない一途な女ですよ。一番若く伸びしろもダントツです。若いわたしをあなたの色に染め上げるチャンスです。それに、わたしはその辺の負けヒロインではないので、安心して選んでください」

 紅葉が一番らしい。でも、紅葉なりに気を遣いつつも、真っ直ぐな気持ちが伝わる。


 全員から誤解のしようがない真摯な想いを受け取った。

 だから、俺も本音で返した。

「ありがとう、本当に嬉しいよ。俺なんかのことを好きになってくれて、好きでいてくれてありがとう。……でも、いまは『みんなの想いには応えられない』」

 俺はみんなに頭を下げる。


「俺は楓のことが好きな気持ちが残っている。この気持ちにちゃんと決着をつけないといけないんだ。返事を濁したまま、みんなを待たせるようなことはしたくない。

 気持ちは嬉しいけど、たとえ振られて初恋が終わっても、俺はすぐに新しい恋愛なんてできないと思う。だから『みんなとは付き合うことはできない』

 出来ればみんなには、俺みたいに初恋には縛られて欲しくない」


 大切なこの幼馴染たちに、不義理なことはしたくない。

 

「お兄ちゃん、大丈夫ですよ。

 今日はみんなの決意表明を聞いてもらったようなものです。だって、お兄ちゃんは恋愛感情の意味で、みんなから好かれていたことを、知らなかったでしょう?

 今日はまずは『幼馴染同盟』全員の気持ちを知ってもらえれば良いです。

 お兄ちゃんがどのような決着をつけるにしても、ここの全員が、戦わないまま不戦敗になることだけはしない。と決めたのです」


「……あ、あれ?俺、いま告白を断ったよね?これで終わりじゃないのか?」


「ここにいる全員は、みんな諦めが悪いのですよ」

 天の言葉に全員が頷く。


「え?いや、俺は友人として、今後も接していくつもりなんだけど……」


「お兄ちゃんは、それで大丈夫ですよ」

「その通り、私たちが勝手にやってるだけだ。翼」

「幼馴染が側にいて、何か問題ありますか?翼くん」

「わたしを捨てるんですか?お兄ちゃん」


 ……本当に友人として何だろうか?

「もう一度言うけど、俺はあくまで『幼馴染』として接するからね?」


 みんなが俺を見て笑っている。

 ……でも何故だろう?前が滲んで見える。そうか……俺は泣いているのか……


 俺は気づいたら泣いていた。

 昨日の出来事ですら、泣くのだけは耐えたのだが、これは駄目だったようだ。




 ――――こうして激動の1日がようやく終わろうとしていた。

 頑なに、一緒にお風呂に入ろうとする天を宥めて、いまはお互いの部屋へと戻っていた。


 よし、楓に連絡を取ろう。明日、時間をもらってちゃんと話をしよう。


 そしてLIINEを立ち上げ、楓にメッセージを送るために……

 まさにメッセージを入力してる最中に、楓とのメッセージ画面に新しいメッセージが届く。


 楓:「ブロックされてるかと思ったけど、見れてるのかな?」

 楓:「今日は午後早退していたけど、大丈夫かしら?」

 楓:「突然ゴメンなさい。迷惑かと思ったけど、気になったの」

 楓:「たぶん話かけても返事もらえないと思うから、メッセージだけでも見て欲しい」

 楓:「もう一度だけ話を聞いてもらいたい。メッセージで伝えるのは違うと思うから、どうしても会って話がしたい」

 楓:「ゴメンなさい。このまま関係が終わるのだけは嫌なの。どうかお願いします」

 俺は楓のメッセージを開いていたから、瞬間で《既読》がついてるだろう。

 俺から連絡するつもりだったのだから、これを断る理由はない。


 ――――真実を受け入れろ。覚悟を決めるぞ……西条翼さいじょう つばさ


 俺:「分かった。話をしよう。明日でいいか?」

 楓:「ありがとう。明日でいいわ、放課後に時間をください」

 俺:「それでいい。場所はどうする?」

 楓:「いつもの場所でいいかしら?」

 俺:「分かった。明日放課後にあの場所へ行く」

 楓:「ありがとう。時間を作ってくれて。全部話します」

 楓:「おやすみなさい」

 俺:「おやすみ」


 賽は投げられた。ついに明日だ。

 明日……楓とちゃんと話をしよう。それが知りたくない真実だったとしても。


 ――――こうして長い、長い激動の1日がようやく終わった。

 まるで1週間くらい経ったような気がするのは何故だろう……



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 次回予告:ついに次回が楓さん回です

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