第10話 再会する幼馴染たち

 side:西条天さいじょう そら


「天ちゃん、あとでお家に伺うね?」

 今日、偶然にも再会を果たした懐かしい幼馴染の七海さんだ。子供の頃までは大久保七海さん、いまは中野七海さんと苗字が変わっていた。


 子供の頃は、お兄ちゃんたちと一緒に遊んでいた幼馴染だ。(あの頃は一緒に久遠姉妹もいたが……)

 天にとっても、仲が良かった懐かしい幼馴染。

 でも、いまは女の子と言うより、色気があり大人の女性になりつつある妖艶さがある女性になりつつある。

 これはお兄ちゃんが弱いタイプだ。つまり強敵である。


 でも天は、七海さんが嫌いではない。子供の頃と本質は変わってなく、何よりお兄ちゃんへの想いや優しさは本物だと、久しぶりの再会でも十分に理解できた。

 七海さんは恋敵ライバルにはなるが、決して敵ではないのだ。


「はい、七海さんも気をつけて来てくださいね」

 先ほどLIIINEを交換して、住所も教えてあるので大丈夫だろう。

 そのまま一緒に家に行こうとしたんだけど、ちょっと着替えてから行きたいとの事だったので、一度学校で別れたのだ。


 さあ、家へ帰ろう。お兄ちゃんは今日もいろいろあって疲れているだろう。

 美味しいものを食べさせて、お風呂で背中を流し、一緒に添い寝してあげるのだ。


 ――――そして天が高等部の校門から出た時だ、まさかの再会が天を待っていた。



 ―――――――――――――――


 side:三枝紅葉さえぐさ もみじ



 ――――来た!あの人だ。間違いない!

 あのサイドテールも変わらない。顔も子供の頃の面影を残している。わたしに匹敵する美少女だ。……胸のサイズはわたしの勝ちのようだ。


 さあ、幼馴染と再会しよう。

 だって将来わたしの義妹いもうとになるかもしれない大切な幼馴染なのだから……



 そして、わたしは高等部の校門から出てきた小柄な美少女に話かける


「天お姉ちゃん……10年振りだけど、わたしのことが分かりますか?」

 私の呼びかけに、驚いて足を止める天お姉ちゃん


「……え?あ、あなた……さっきお兄ちゃんと保健室に運ばれてた中等部の……ん?天お姉ちゃん?」

 わたしの顔をマジマジと見てる……天お姉ちゃん。やっぱり忘れちゃったかな?


 そして、少女の表情が何かに気づいたかのように驚きへと変わっていく。


「!?……えっ……まさか、あなた、……も、紅葉なの?」

 信じられない顔でわたしを見てる。でも嬉しい。やはり覚えていてくれた!


「はい。紅葉ですよ!いまは三枝紅葉さえぐさ もみじです。母が再婚して、苗字が久遠から三枝に変わってますけど、間違いなく紅葉です。

 ……でも、よくわたしが紅葉って、すぐに分かりましたよね?

 こんなに美少女になってしまったのに。お兄ちゃんなんか気づくまでは、わたしの顔と胸ばっか見てましたよ」


「(お兄ちゃん……胸チラチラ見てるのバレてないとか思ってるのかしら?)

 ……まあ、天お姉ちゃんって呼んでくれたの、昔から紅葉だけだしね……

 しかし、驚いたわ。まさか紅葉とも再会できるなんて……それにお兄ちゃんと一緒に倒れてたのが、まさか紅葉だったなんてね。

 予想もしてなかったから、保健室で見かけたときには全然気づかなかったわ」


「保健室でお兄ちゃんも驚いてましたよ!わたし天お姉ちゃんにも会いたくて、高等部の校門前で会えないかな?って待ってたんですよ」


「もしかして、あなた。久遠さん……いえ、楓ちゃんのことも、ここで待ってたりするの?」

 うわっ、何か急に、天お姉ちゃん警戒しだしたよ。


「いいえ。楓姉さんに会う予定はないですよ?

 ちなみに、お兄ちゃんから昨日の話は聞いてます。だから、余計に会う気はないですよ」


「……そう。お兄ちゃん、楓のこと話したんだ?

 いや、話すか紅葉になら。お兄ちゃん、紅葉のことを天と同じくらい可愛がってたもんね、子供の頃だけど」

 天ちゃんがわたしに笑いかけてくる。警戒は解けたかな?


「あ、もしかしてちょっと警戒しちゃいました?天お姉ちゃん」

 一応は姉妹だからなぁ……


「うーん、ちょっとね。でも、お兄ちゃんから話を聞いたんでしょ?そして、紅葉の顔を見たら嘘もついてないみたいだし大丈夫よ。」


「嘘なんかつかないよ、天お姉ちゃん酷いなぁ」


「昨日からいろいろあったのよ。

 ねえ、ちょっと聞いていい?……紅葉は今でも、お兄ちゃんのこと好き?」


「大好きですよ。今までは我慢してましたけどね、この10年お兄ちゃんのことを忘れたことないですもん。

 それにお兄ちゃんから話を聞いて、もう我慢する必要なくなりましたしね?」


「うん、その気持ちは本当みたいね。

 ……紅葉、あなた今から時間ある?」


「えぇ、大丈夫ですよ?」


「今から家に来ない?あなたも覚えてる?七海さんのこと」


「七海さんですか?はい、覚えてますよ。確か子供の頃に、急に引っ越しちゃいましたよね、七海さん……」


「そう、その七海さんも高等部にいるの。それで今から七海さんも家に来るのよ、だから紅葉も来ない?」


「え!七海さんも?うん、もちろん行きます!」

 断る理由など皆無である。しかし、七海さんかぁ懐かしい〜あの人もお兄ちゃんのこと大好きだったよね


 わたしは天お姉ちゃんと並んで歩き出す。


「今日は幼馴染4人が久しぶりに集合だね!楽しみだなぁ〜」

 わたしに、天お姉ちゃん、七海さん、そしてお兄ちゃん。また集まれる日が来るなんて、夢のようだ。


「あ、たぶん集まる幼馴染は5人になるわ。

 紅葉はあまり面識ないかもしれないけどね」

 なんだろう?天お姉ちゃんが疲れた笑みを浮かべてる。


「あと1人って誰です?面識あまりないなら、まさかの楓姉さんじゃないだろうし」


「当たり前よ。楓にはもう我が家の敷居なんか跨がせないわ。

 ……絶対に来ると思うのよ、生徒会長の南雲茜なぐも あかねお姉ちゃんがね。紅葉は覚えてないかしら?」


「茜お姉ちゃん……

 あ?もしかして、昔お兄ちゃんが、お姉ちゃんって慕っていたあの人?」


「たぶんそのお姉ちゃんであってるわ。

 楓と折り合いが悪くてね、楓がいる時は、あまり一緒にいなかったもの。だから姉妹で一緒にいたあなたも面識があまりなかったわね。

 お兄ちゃんを溺愛してるから、今日の件を聞いたら、絶対に心配して家に来ると思うわ」


「天お姉ちゃんも慕ってるんです?」


「えぇ、天にとっても大好きなお姉ちゃんよ。

 天のことも可愛がってくれるしね、ただお兄ちゃんのことが好き過ぎて過保護なのよ。

 お兄ちゃん絡まない時は、まさに出来るお姉さんタイプなんだけどね」


 何か楽しい。天お姉ちゃんと話しながら歩いてる。

 子供の頃は当たり前だったけど、わたしには10年振りに取り戻した日常なのだ。


 わたし達はお兄ちゃんの家に着くまで、10年を取り戻すかのように、ずっと会話が途切れることもなく話続けていた。



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