第7話 後輩ちゃんは幼馴染?

 ――――意識が徐々に覚醒してきた……


 一体何が起こったのだろうか?七海と楽しいランチを楽しんでいたはず……

 気のせいだろうか?少し頭が痛いような気がする……そして、ゆっくりと目を開いてゆく。


「知らない天井だ……」


「うん、そのセリフはお約束だね、お兄ちゃん」

「だ、大丈夫?翼くん」

 心配そうに俺をのぞき込むのは、天と七海だ。


「……天、七海……俺はどうなったんだ?全然、記憶にないのだが……」

 ゆっくりと身体を起こそうとするが、少しだけ頭がフラフラとする。


「お兄ちゃん、無理しないで」

「翼くん、もう少し横になっていよう?」

 2人に促され、もう少し横になることにした。

 しかし、ここは保健室か?


「ここは保健室?……で、俺どうしてここに?」


「翼くん、自販機に飲み物を買いに行ってくれたでしょう?

 しばらくしたら、急に自販機の周りに人だかりができていたの。

 何事だろうと、様子を見に行ったら、翼くんとそこで寝ている中等部の女の子が、自販機の前で倒れていたのよ」

 横を見ると、ベッドを囲むカーテンの向こうに、誰かが寝ているのが分かる。


「お、起きたか?西条」

 ベッドのカーテンがひかれ、保険医の先生が顔を見せる。


「まあ、軽く頭を打ったようだが、恐らく打撲だろう。

 異常もないようだが、念のため午後は授業を休んで家に帰るといい。もう少し休んだら、好きなタイミングで帰っていいぞ

 私はグラウンドに戻るから、何かあれば言ってくれ」

 保険医の先生はそう言い残すと、保健室を後にする。


 それから少しの間、3人で雑談を交わし……


「それじゃあ、私は一度教室に戻るわ。何かあればいつでも頼ってね?

 天ちゃんとも、久しぶりに会えて嬉しかった。またね?」


「七海さん、ありがとうございました。

 まさかここで、再会できるとは思いませんでしたよ。今度、ゆっくり話をしましょう」

 天が教室に戻る七海を見送りに立ち上がる。

 俺が気絶してる間に、自己紹介済のようだ。2人はお互いのことを思い出し、会話も弾んでいた。


「天も授業あるだろう?戻っていいぞ、俺なら大丈夫だから」


「本当に大丈夫?それなら、天も一度教室に戻るけど……

 でも、帰りが不安なら遠慮なく呼んでね?天も一緒に早退するから」


「ありがとう。ちょっと帰りが不安なようなら、遠慮なく天を頼るよ」

 手を振って大丈夫と示す。流石に妹まで早退させるのは良くないだろう。


「うん、わかったよ。七海さん、じゃあ途中まで一緒に行きましょうか?」

「えぇ、そうしましょう。……翼くん、何かあれば私にも遠慮なく言ってね?」

 まだ心配そうにこちらを伺いつつも、天と七海が連れ添って、保健室を出ていく。


 ……さて、何でこうなったのか、そろそろ本人に聞いてみようか


「さて、空から降ってきた後輩ちゃん。話を聞かせてくれるかな?」

 俺は横のベッドで寝ている女の子に声をかける。


「ほぉ、やりますね!わたしが起きていることに気づくなんて。

 流石です!センパイは伊達じゃありませんね?」

 ガラッとカーテンを引き、ベッドに上半身を起こしているのは、中等部の制服に身を包んだ女の子だ。少し茶色かかった髪をボブカットにした、胸部が中学生とは思えないほど立派なものをお持ちの美少女だ。


「ふふふ……見惚れていますね?センパイ(ニヤニヤ)」

 後輩がとても悪い笑顔をしている。可愛いのだが、何か香ばしいキャラの香りがする。いわゆるドジっ子の気配が漂っているのだ。


「まあ、見惚れてるの確かだ。君の顔と胸は見惚れざるを得ない」

 何故かは分からないが、俺の心が攻めろ!と叫んでいる。

 ……何だろう?俺はこの子の扱い方を知っている。そんな気がするのだ。


「ウッ~!!!!!」

 おぉ、目がバッテンになって顔が真っ赤だ。これは面白い(ニヤニヤ)


「どうした、後輩ちゃん?

 そんなに真っ赤になっちゃって、ほら?そんなに身体動かすと、色々揺れちゃって大変なことになるぞ?(ニヤニヤ)」


「もぉ~!!!!!何なんですかっ!!!!」

 自分の胸を抱え、興奮してバタバタしてる。可愛いヤツだ。


「セクハラッ!センパイ、これはセクハラ案件です!!」

「身体動かすと、頭が揺れちゃうって言ったんだよ。危ないだろう?頭打ったんだからさ。

 あれ?これはセクハラなのか?後輩ちゃん」


「グッヌヌヌヌ~!!!!」

 顔を抑えて激しく悶えている。何だこの可愛い生き物は。でも既視感あるような?


「さて、冗談はここまでだ。

 怪我はないかい?後輩ちゃん

 俺の名は西条翼さいじょう つばさ、高等部の1-Aだ。彼女はいない。」


「……いまさら心配されても、何か順番おかしくないです?

 え~っと、わたしは三枝紅葉さえぐさ もみじです。……お久しぶりですね、お兄ちゃん?」


「……へ?お兄ちゃん?」

 むむむ、何だろう?何かやはり既視感がある。天以外で俺をお兄ちゃんと呼んでいた子を、俺は知っている気がするのだが……


「じゃあ、こう言えば分かりますか?わたしの旧姓は……久遠紅葉くおん もみじですよ、お兄ちゃん」

 ベッドの上でドヤッと胸を張り、ふんぞり返っている。



 久遠紅葉くおん もみじ……その名に俺は唖然とした。

 その名は、昨日絶縁した元幼馴染である久遠楓くおん かえでだったからだ。



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