第6話 幼馴染とお弁当

 衝撃的な再会を果たしたのは、俺と中野七海なかの ななみ

 このクラスになって2ヶ月……不覚にも全くきづかなかった。

 だって、こんな色気をまき散らかすような美人委員長が、子供の頃の幼馴染だったとは思わないだろう?


 七海は、俺のことにすぐ気づいたそうだ。まあ、俺は名前変わってないしな。

 一応、今までは楓にベッタリだった俺に、かなり遠慮していたそうだ。確かに俺は、楓しか見てなかったから……反省である。


 職員室へ課題のプリントを提出して、懐かしむように会話を交わす。

 そして、1-Aの教室に戻った時に、本日2回目の俺発の事件が起こった。


「翼くん、良かったらお昼は一緒に食べない?」

 優しく微笑みながら、俺に誘いをかける七海


 クラスが静寂に包まれ、そして……

「「「翼くん!?」」」

 男子の悲鳴が聞こえる。


「もちろんいいぞ。七海」

 断る選択肢なんか当然ない。


「「「七海!?」」」

 このクラスいちいち反応が激しい


 この反応が物語るように、七海は凄まじい男子人気を誇る。このクラスでは楓と人気を二分するほどだ。


「翼くんとゆっくりお話したいから、中庭に行きましょ?」

 七海は、お弁当を片手に俺に歩み寄る。

 その際、いつもお昼を一緒に食べてる女友達に断りを入れている。

 そして、女友達は七海へ《サムズアップ》で送り出す。


「じゃあ、中庭に行こうか」

 俺も普段一緒にお昼を食べている大地、そして城嶋茂じょうじま しげるに断りを入れる。


「「裏切り者めっ!!」」

 おいっ、おまえ達も快く送り出せよ!


 その他、男子たちからも怨嗟のこもった視線が俺に突き刺さる。

 そんな野郎どもに、俺はドヤ顔でニヤリと表情だけで返事をしてやった。


「七海、行こうか。2人っきりで」

 教室を後にする俺たち、教室には男子たちの怨嗟の呻きが合唱された。


 ―――――――――――――――


 修悠館学院しゅうゆうかんがくえん

 この学院は地元ではそれなりの進学校で、中等部と高等部で別れている。進学校ではあるが、校則はさほど締め付けが厳しい訳ではない。

 お昼休みの中庭も、緩やかな雰囲気の中で、シートを広げてお昼ご飯を楽しむ人、読書をする人等、それぞれが貴重なお昼休みを楽しんでいる。

 中庭の中央には大きな桜の木があり、春には桜吹雪が舞う景色が見られるので、春先は特に人気のランチスポットである。

 あの桜の木の下で告白すると、幸せになる伝説があるかは知らない。


「翼くん、あそこのベンチが空いてるわ、あそこにしましょう」

 七海の指さすベンチが、たまたま空いていたようだ。並んで座れて丁度良い感じだ。


「そうしようか。七海と一緒にお昼を食べれるなんて、今朝までは想像もしなかったよ」

 ベンチに座りながら、天の手作りお弁当を広げる……すると


「!?……す、すごいわね?そのお弁当……」


「……あぁ、凄いな。俺も驚いた」

 広げたお弁当には、俺の好きなおかずのオンパレードながら、栄養バランスまでも考えられた完璧なお弁当。

 そして、白米の上にデコレーションされた《LOVE》の飾り文字。天のお弁当クオリティがパない。


「そ、それ(ちょっとLOVEってどうなのかしら?)……翼くんのお母さんの手作り?」

 七海はやや驚いた表情。いや、若干ひいている。


「いや、妹の手作りだ。七海とも面識あるだろ?妹のそらは。

 いま親父の長期出張の付き添いで、母さんも東京に行ってるんだよ。だから、しばらくは俺と妹の2人暮らしなんだよ」


「(LOVEって天ちゃんかぁ……)懐かしいなぁ~確かずっと翼くんと一緒にいたよね」

 七海は懐かしむように、自分のお弁当を取り出していく。


「七海のお弁当も豪勢じゃないか、美味しそうだ。お母さんが作ったのか?」


「フフフ……私が作ったのよ?これでも料理は得意なの。……ちょっと食べてみる?」


「え!いいのか?ぜひ頂きたい!

 あ、妹の手作りだけど、良かったら俺のもどうだ?

 しかし、七海は凄いな。美人なうえに、成績も良く料理もできる。理想的なお嫁さんだな」


「(び、び、美人!?、お、お嫁さん!!)……あ、ありがとう。……実は天ちゃんも何度か見かけたことあるんだよ。話かけてはないんだけど」

 七海の顔が真っ赤だ。照れてる七海は、大人びた美人と言うより、年相応の可愛さだ。


「七海、今度良かったら家に来ないか?妹にも会わせたいしさ」


「ホント!?行くよ、行く!絶対に行くね、翼くんのお家」


 こうして久しぶりの幼馴染との再会は、楽しく過ぎていった。

 ……だが、すぐそこに危険が迫っていたことに、俺はまだ気づかない。


「七海、何か飲み物買ってくるけど、何かいる?」

 ベンチから立ちあがり、七海へ問いかける。


「ありがとう、翼くん。じゃあ、お茶をお願いしようかな?」


 自販機は俺と七海が座っていたベンチから、1分ほど歩いた校舎への出入り口近くに、並んで複数設置されている。

 そして、自販機で飲み物を買っている時に、それは起こった……


「あ、あ、あ~~~~~!!!!」


「……ん?女の子の悲鳴が聞こえる……何処から?」

 首を傾げつつ、辺りを見渡すが……特になにも


「ど、どいてっ~~~」

 自販機の前にかがみ、飲み物を取り出していた俺に、一瞬影が差す……


「!」

 そして、俺は謎の衝撃を受け……


  ――――自販機の前には、目を回した中等部の制服を着た女の子と、俺が仲良く気絶していた。


 俺たちは、そのまますぐに保健室へ運ばれた。



  ―――――――――――――――

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