第4話 生徒会長は幼馴染のお姉ちゃん

 特に大きなイベントが起こることもなく、兄妹たちは学校へと到着した。

 は、途中から走って先に学校へ行ってしまった。


「お兄ちゃん。職員室に行く用事があるから、先に行くね」

「おう、じゃあな」

 妹が駆け足で、学校の中へと走って行く。天は後ろ姿も可愛い、サイドテールがピョンピョン跳ねている。


 そして、校門の前で腕に《生徒会長》の腕章をした美人が立っている。

「おはよう、翼」

 声を掛けてくれたのは、生徒会長の南雲茜なぐも あかねさん

 高二とは思えない大人っぽい色気のあるお姉さんである。長いツヤのある黒髪に、スタイルまで抜群の美人さんだ。茜さんに見惚れている生徒も多く、ちらほらと見惚れている様子が見受けられる。


「茜さん、おはよう」


「うむ。ところで今日は、久遠とは一緒じゃなかったのか?

 さきほど、何か青白い顔をしながら、校舎に入って行ったんだが?」

 楓の話題か……茜さんには避けて通れない話題だ。


「……茜さんには話をした方がいいか。ちょっと、このまま話せますか?」


「ん?まあ、時間もまだ早いし、少しぐらいならいいぞ」


「……実は、久遠さんとは、楓とは幼馴染を解消しまして、昨日で絶縁したんです」


「……は!?おまえ、いきなり何を言ってるんだ?

 確か久遠の誕生日に告白するとか、息巻いてなかったか?

 ……もしかして駄目だったのか?」

 茜さんが気まずそうにしている。気にしなくて良いのに……


「まともに告白すら出来ませんでしたよ。

 当日にドタキャンされて、向こうは他の男と楽しそうにデートしてたんです。

 ……偶然、天と一緒に目撃しちゃいましてね『初恋の幼馴染に、嘘の理由で当日にドタキャンされたうえに、男との惚気とか聞かされたらかなりキツイ』です。

 だから、幼馴染を解消して、絶縁したんです」


「!?……な、なんだと!!

(久遠って、翼のこと好きだったんじゃないのか?……別の男だと?)

 そ、それは大変だったな……

(そんなことになっていたなんて……どうなっている?誕生日当日にドタキャンだと?)

 えっと……そ、そうだ。久しぶりに今度遊びにでも行かないか?

 私と翼も幼馴染だしな。気晴らしなら、いくらでも付きあうぞ?」

 そう、俺と茜さんは幼馴染なんだ。

 お姉ちゃん、お姉ちゃんと小学生くらいの時は、よく後をついて回り、とても可愛がってくれたものだ。今でも大好きなお姉ちゃんだ。

 そういえば久遠さんとは、あまり折り合いが良くなかったんだよな、茜さん。


「えっ!本当!もちろん行くよ。俺も楽しみにしてるよ!」

 久しぶりに茜さんとお出かけか。いつ以来だろうか、懐かしい。


「私も楽しみにしてるよ。今度LIINEで予定を決めようじゃないか

(今までは、翼が久遠に惚れてるからと、気を遣っていたが……もはや、気にしないでいいんだよな?)」


「じゃあね、お姉ちゃん……あ、違った。茜さん」

「(お、お姉ちゃん!!)

 ……そ、その呼び方は久しぶりだな、またな翼」

 茜さんが笑顔で手を振ってくれるので、俺も手を振り返す。

 美人生徒会長だけに、茜さんは人気が高い。周りからもジロジロ見られてしまう。


 おいっ!そんな目で見ても、お姉ちゃんは誰にもやらんぞ!


 ―――――――――――――――


 ――――自分の教室1-Aに到着。

 茜さんと話し込んだが、遅刻ギリギリではないだろう。


(……ん?何か視線を感じる、これはアレか?

 いつも一緒にいた楓と今日は俺が一緒にいないからと、みんなが気になってるやつか?

 はぁ、ずっとこれだと煩わしいな……)


「翼、おはよう!」

 席に着くと、子供の頃からの親友 南雲大地なぐも だいちが話かけてくる。


「おはよう、大地!」

 名前の通り、大地は生徒会長の茜さんの弟である。


「ところで、おまえ久遠さんと一緒じゃなかったのか?」

 (……やっぱり、それか。うーん、ずっと楓と一緒に居たから、俺は付属物みたいな扱いになってるのか?

 ここは都度聞かれるのも面倒だし、いっそ全員に聞かせてしまうか……でも、そのまま言う訳にもいかんしなぁ)


「あぁ、やっぱりそれか?さっきからジロジロ見られると思ったよ。

 もう面倒だから、みんなにもまとめて話をしてしまうか」

 俺は席から立ちあがり、教壇へと移動する。


「おい、翼どうした?」

 大地が俺の突然の行動に、驚いている。


「よーしっ!みんな、俺の話を聞いてくれーっ!」

 俺の大声に皆がギョッとなり、一斉に注目する。


「もう面倒くさいから、ここで言っておくぞ!!

 俺は久遠さんと、幼馴染を解消して昨日限りで絶縁した!

 俺は、あっさり振られたので、潔く身をひくことにしたんだ!!

 だから、これ以上は深堀りしないように頼むぞ!!!俺はこの件については、もう話す気もないからな!

 久遠さんにも触れてやるなよ!!

 俺の傷を抉ると、俺が泣き喚くことになり、生徒会長が怒鳴り込んで来ることになるからな!

 話は以上だ、解散!!!!!」


「「「いや、いや解散したら駄目だろ!!」」」

 ついノリで言った解散に、ずいぶんみんなが乗っかってきた。


「あ、一応言っておくと、翼に何かあると、姉ちゃん、生徒会長がマジで殴り込みに来るのは本当だ。みんなも気をつけろよ?」

 大地が念押ししてくれた。

 冗談みたいに言ったけど、茜さんは俺に過保護なんで、本当に何かあればカチコミくらいはするだろう。


 久遠さんが俺を見てる……

 俺が振られたのは確かだし、絶縁云々について詳細な説明をする気もない。

 少なくともこれで楓にじゃなく、クラスのみんなの関心が俺に向くだろう。


「あ~残念だったな、翼?」

「元気出せよ?翼」

「新しい恋を見つけようぜ、翼」

「天ちゃんを紹介してくれよ?翼」


 ……ん??

「誰だこらぁ!!!!!俺の妹を紹介しろとか抜かすヤツは!!!!」


 クラス中が呆れながら笑っている。この件であまりツッコミもなく終わった。

 唯一人思い詰めた表情をしている久遠楓を除いて……



 ―――――――――――――――

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