第3話 兄が幼馴染と絶縁した

 side:西条天


 西条天さいじょう そら、翼の妹で15歳の高校一年生の女子高生。

 西条翼さいじょう つばさ、天の兄で16歳の高校一年生の男子高校生。


 ……ん?同じ高校1年生なのかって?

 そうですよ、だって天とお兄ちゃんは、の兄妹なのです。

 小学一年生の時、お互いの両親が再婚。お互いの連れ子が、天とお兄ちゃん。

 お兄ちゃんの方が、ほんの少しだけ誕生日が早いから、同学年だけど天が妹なのです。


 自慢ではないが、天はモテます。

 背は155とやや小柄。でも、スタイルは良く胸もやや大きい。男子の目がよく顔と胸を往復するのは見慣れた光景だ。(お兄ちゃんもチラチラ見てくるのはご愛敬)

 髪型は黒髪をサイドテールにしており、よくお兄ちゃんが触ってくる。(もちろん、お兄ちゃん以外には触らせない)

 天に彼氏はいない。好きな人はお兄ちゃんだ。でも、お兄ちゃんには好きな人が居たので、自分の気持ちを隠して応援していたのだ。昨日までは……


 お兄ちゃんが好きだったのは、元幼馴染の久遠楓くおん かえで

 相思相愛ならお兄ちゃんの恋愛を応援しようと、お兄ちゃんが久遠楓と一緒にいる時には少しだけ距離を置いたりもしていた。お兄ちゃんと楓の邪魔をしないように。


 それが、大事な、大事な日にお兄ちゃんを裏切るなんて……許せない。

 当日にドタキャン。それが別の男とのデートが理由。さらにあの楽しそうな笑顔……お兄ちゃんを傷つけておいて……許せない。


 天だけじゃない。お兄ちゃんを好きだった女の子は他にもたくさんいた。

 それでもみんなが、お兄ちゃんの気持ちを知っていたから、自分の気持ちを隠して応援していたのだ。

 お兄ちゃんと、久遠楓ならお似合いだ。お兄ちゃんの為ならばと、みんなが諦めたのだ。


 だけど、お兄ちゃんを縛るあの、が消えた。

 久遠楓……付き合いは天とも長く、昨日までは幼馴染だった女。でも、もう1に過ぎない。


 もう、あの女の出番はない。

 あの女が何を考えて、あんなことをしたのかは分からない。でも、もはや理由など何でもいい。あの女は失敗したのだ。ここからはずっと天のターンだ。


 これを機に、お兄ちゃんの幼馴染たちも動きを見せる予感がする。だってもう遠慮する必要はないのだから。


 さあ、ここからが本番だ!……絶対に負けられない戦いれんあいがあるのだ。


 ―――――――――――――――


 今日は月曜日、週で一番憂鬱な曜日だ。

 学校は嫌いではないけど、やはり休み明けには少し憂鬱な気分になってしまう。


 ……昨日は、大変だった。

 当然ながらまともに眠れるわけがなかった。

 初恋の幼馴染のこと?

 そのことを考えてもいまは結論が出ない。だからいまは置いておきたい。


 大変だったのは、妹の西条天さいじょう そらのことなんだ。

 昨日は大変だった。お風呂には一緒について来る。さらには一緒に寝ようと、ベッドにまでついて来るとは思わなかった。

 天なりに俺を心配して、元気づけようとしていたのだろう。

 ただ、昨日から天のスキンシップが、過激になり過ぎている。おかげで、俺はドキドキしっぱなしである。


 俺と天に血の繋がりはない。だから、油断するとマズイのだ。

 天は絶世の美少女だ。スタイルも良く、俺には非常に無防備でもある。


 昨日のお風呂も、一緒に寝るのも、鋼の精神力を発揮して耐え抜いたのだ。


(結局、お風呂には一緒に入ったのかって?……それは内緒だ)


 昨日はほとんど眠れなかった。眠りに落ちたのも、明け方近くのはずだ。

 そして寝不足の中、少しずつ意識が覚醒する。

 柔らかな感触と、花のようないい匂いが、俺の意識を覚醒させてしまった。

 そして、気づいたら居たのだ。俺のベッドの中に天がスヤスヤと天使のような寝顔で。


 さて、これどうしようか?起こしたくはないが、しがみつかれて動けない。


 うーん、悩んでいると……


「ふふふ……お兄ちゃん、悩んでるね?どうしようかって」

「あ、おまえ起きてたのか!いつからベッドに潜り込んだ?」

「ふふふ……さっきですよ。起こしに来たら、よーく眠っていたので、妹の添い寝サービスですよ?」

「……ま、まあ、おかげで寝覚めは良かったから、いいか。

 じゃあ、そろそろ起きようか?」

 こうして兄妹の新しい日常が始まった。



 ……天が作ってくれた朝食を食べ終わり、そろそろ通学の時間だ。

「さあ、行こうか?天」

「うん、行こう。お兄ちゃん」


 そして兄妹一緒に玄関から外に出たところで、

「お、おはよう。翼、天ちゃん……」

 元幼馴染で、いまは顔見知りのクラスメイトである久遠楓くおん かえでが家の前に居た。


「あぁ、おはよう。

「おはようございます。

 そして、兄妹は久遠楓にすれ違いざまに挨拶を交わし、学校へ向かうのだった。


「……ちょっと、待ってよ!私も一緒に行くから」

 後ろから、慌てたクラスメイトが、追いすがってくる。


「ゴメン。俺は妹と一緒に行くので」

「天はお兄ちゃんと2人で行くので、遠慮してくれますか?久遠さん」

 兄妹は、クラスメイトのことは、気にしないで通学することにした。



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