第2話 幼馴染と絶縁した

 我が家の玄関が、異様な殺気に満ちている。

 殺気を放つのは、俺の妹いや、天使の西条天さいじょう そらである。

 殺気を放たれているのは、幼馴染の久遠楓くおん かえでである。

 何故、こんな感情をぶつけられているか、心底理解できない表情をしている。


「あ、あの天ちゃん。なんでそんなに怒ってるの?」

「……!!そんなこともわかんないのっ!アンタ!」


 掴みかかろうとする天を止める。

「天、やめとけ。久遠さん、ちょっと外で話をしようか?」

「お、お兄ちゃんっ!」

「え!?く、久遠さん?ちょっと、どうしたの翼?」

 戸惑う表情の久遠楓。

 もう、できれば顔も見たくはない。

 でも、一度は話をしないと駄目か……


「天、大丈夫。これで終わりだから、な?」

 天の頭に手を乗せて、俺の為に怒る妹を宥める。

「分かったよ、お兄ちゃん……」


「さあ、ちょっと家の外で話そうか?久遠さん」

「……!ちょっと、翼は何を言って……」


 ――――俺は強引に、久遠楓を家の外へ連れ出す。



 ―――――――――――――――


「ちょっと、さっきから久遠さんって何よ?

 もしかして、今日予定が入ったこと怒ってるの?急で悪かったけど、私にも都合があったのよ」


「……予定ね、あぁ大丈夫だよ。分かってる。

 俺も天と西新に出かけた時に見たからさ、久遠さんがデートしてるところを。

……最初から予定あるなら、前もって言ってくれたら良かったのに」


「……!!!えっ!?」

 青ざめた表情をする久遠さん。何だよ、ドタキャンの原因がデートって知られて焦ったのか?


「彼氏がいるなら、最初からそう言ってくれたら良かったのに。

 知ってれば、彼氏のいる女の子を、誕生日に誘うなんてことしなかったよ。最初から約束があったなら、何で当日まで言ってくれないんだよ……」


「……そう……見たのね、ゴメンなさい。でも違うのっ!聞いて、翼……」


「俺、今日こそ久遠さんに告白するつもりだったんだよ。

 でも、まさか彼氏いるとは思わなくてさ、俺の方こそ無理に誘って悪かった。もう誘ったりしないし、話かけたりもしないから、どうか安心してくれ。

 ……俺たち、もう幼馴染を解消して、これっきり絶縁しよう。俺も初恋の女の子から、彼氏の惚気話とか聞かされるのキツイしな?」


「えっ?こ、告白……そんな……ま、まさか、今日告白を……

 ちょっと待って翼、違うの!は、話を、話を聞いて!」


「何が違うんだ?話はもうこれで終わりだ。

 明日から俺達はだ。

 久遠さんも頼むよ?もう、幼馴染じゃないんだから、今までのように接しないでくれよ?」


「だ、だから、話を聞きなさいよっ!彼氏じゃないのよ、アレは!」


(……当日にドタキャンしたうえに、歩いておいて……)


「あぁ、もう彼氏とか違うとかはいいんだよ。嘘をついてまで、当日ドタキャンまでして先約の俺より優先したんだからさ、少なくとも満更じゃないんだろう?」


「さっきから聞いてれば、私たち付き合ってる訳じゃないのに……何で浮気したみたいに、私だけを責めるのよっ!」


「なあ、話を聞いてるか?別の男と会ってたことは、責めてないって。

 最初は浮気されたみたいな気になったけどさ、付き合ってもないのに、それを責めるのは違うだろ?

 ただ俺は、別の男と会う為に、するような幼馴染と、もう今までみたいな付き合いはできないから、幼馴染を解消して、もう『絶縁』したいだけなんだ」


「翼、あんた……本気?今は冷静じゃないだけよね?

 ほら?あんた私に告白するとか言ってたし、まだ誕生日だし……そうだ。今から私に告白してみる?」


「いまさら告白なんてする訳ないだろ?バカにするな。

 じゃあな、もう君とは幼馴染でも何でもない。もう俺に関わってこないでくれ」


「……え!?ちょっと待ちなさいよっ!」


、見苦しいですよ、早く消えてくれませんか?」

 天が玄関から出て来た。遅いから心配をかけたか。


「天、心配かけてすまない。話も終わったし、家に戻ろうか?」

「うん、戻ろう!お兄ちゃん」


「あ、天ちゃんも待って!」


「あぁ、。一応、天もアナタとは幼馴染でしたけど、天ともしてくださいね?もう幼馴染ではありません。そう接してくださいね」

 天は久遠楓へと振り返り、絶縁を言い渡す。


「さ、戻ろう?お兄ちゃん」


 そして、俺達は家に戻る。振り返ることもなかったから、久遠楓がどんな表情をしているのかも分からない。

 

 俺は「初恋の幼馴染 久遠楓」とした……こうでもしないと、自分の気持ちに蓋が閉められない。自分の弱い心をいま守るには、こうするしかなかった。

 真実を知って、覚悟がまだない……



 ――――立ち尽くす久遠楓を置いて、俺たちは家へと戻った。



 ―――――――――――――――

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