Ep2 錯綜のマルチビュー // ワルツ
0 // little night : far days
「“あまてらす”のあっぷでーと?」
幼い少女は首を傾げる。家のリビング――生活感溢れる場所で。
少女に優し気な顔の男が頷き、話し出した。
「“アマテラス”は、ハードとして完成しているんだ。改良の余地はない。もう、ある意味ロストテクノロジーだけど、ソフト面にはまだ改良の余地がある。改良って言うか、解析なんだけどね」
男は饒舌で、幼い少女は目を白黒させている。
「“アマテラス”は物理的にもソフトとしても3重構造なんだ。こちらから覗けるのは、頑張って2層目まで。3層目には、多分、完全で正確なあらゆるデータや技術が保存されてるだろうし、でも言語としても特殊で流動的で……」
そこで男にも、少女を置いてけぼりにしてしまった事が分かったのだろう。
「……って、サヤにはまだわからないかな?」
「わかる!……おしえて!」
たまの休日に、父の気を引こうとするように、そうはしゃぐ声を上げた少女に、けれどそこで、別の――それもまた優しい声が届いた。
「サヤ?演劇の練習の時間よ?どうするの?」
女性。お母さん。女優だった母の声に、幼い少女は父さんと母さんの顔を、困ったように見比べる。
「え……うん……えっと、」
そこで助け舟を出したのは、少女の兄だった。
「サヤ。父さんからは、聞いておいてあげる。後で教えてあげるから、やりたい事をやりに行きなよ」
その言葉に、少女は、嬉しそうに笑って……。
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