第3話「亀山テクテク出会い」1.2

歩きながらケイさんが尋ねる。


「見たことがない履物だね。」

「学校の運動靴ですよ。」

「ガッコウってのは、なんだい。」


学校という言葉が伝わらないないのに驚く。


「みんなで学ぶ場所です。」

「藩校は進んでいるねぇ。これを知ったら、あいつが興奮そうだよ。」


ハンコウってなんだろう。


「嬉しそうですね。楽しい場所なんですか。」

「そうだよ。活気があって元気がでるのさ。」

「カフェですか。」

「かへは聞いた事ないから、わからないね。」

「えっと。じゃぁ、どんな商品を扱っているんですか。」

「銃だよ。」


海外じゃないのに銃を扱っている。日本語は通じているに。

本当にどこにきてしまったんだろう。


「おや。ケイコの所は扱ってないのかい。」

「えー。店では買えません。」

「ケイコがいた場所にもいってみたいねぇ。」

「退屈な所ですよ。」

「退屈かは、本人が決めるもんさ。」


その通りだ。なんだか恥ずかしく思えた。


「みてごらん。あそこの建物だよ。」


看板はあるけど難しい漢字が並んでいて読めない。

みかねたケイさんが口を開く。


「亀山社中(かめやましゃちゅう)っていうんだ。」

「カメヤマシャチュウ。」

「本当に何も知らないんだね。ま、覚えていくといいさ。」


「さぁ。中に入ろうか。」


ケイさんが先導して中に入り玄関先で大声を出す。


「龍馬。いるかい。」


ん。いま龍馬って。


「なんじゃ。慶さん。大声ださんでも聞こえるわや。」


男の人が奥からでてきた。おおきい。180センチはある。


「この方の名前って坂本龍馬ですか。」

「あら。龍馬を知ってるのかい。」

「はい。有名な人です。」

「龍馬。良かったじゃないか。私より有名になったみたいでね。」

「いじわるをいったらいかんぜよ。亀山社中があるのも慶さんのおかげじゃゃ。」

「龍馬。この娘の話をきいてやってはくれないか。」

「わしがかや。」

「面白い話が聞けるよ。私は所用で少しでるからね。」

「まっこと勝手なひとちゃ。」

「ケイコ。龍馬は信用できる男だからね。ここでゆっくりしていきな。」


こう言い残し亀山社中から離れていった。


有名な坂本龍馬と会えるなんて。

でもなんで、今生きているんだろう。

今は2023年のはずだ。

ここはあの世なんだろうか。

だったら私は坂を転んで死んだんだろうか。

ほんとに、死んだの。


考えこんでいると龍馬さんが声をかけてきた。


「何をボーっとしとるんじゃ。のうが悪かとや。」

「いえ。脳みそは普通です。」


一瞬、龍馬さんが不思議そうな顔をした。


「玄関におるのもあれじゃき。部屋にはいりんさい。」


部屋に通されると、慶さんの館とはまた違った雰囲気だった。


「自由にすわりぃや。」


促され椅子に座る。


「今までのことを話してもらえんかの。」


慶さんに説明したように龍馬さんにも話す。


「げに面白か話じゃき。」

「あの。私、どこに来てしまったんでしょう。」

「ん。ここは長崎じゃわ。」

「私も長崎の人なんです。」

「ほぉ。不思議な話じゃの。同じ長崎なんに。」

「私、死んでしまったんでしょうか。」


胸の奥につかえているものを吐きだす。


「わしにはわからんじゃき。近藤を訪ねたらええわ。」

「近藤さんってのは誰ですか。」

「わしより機転の効くやつじゃわ。別の部屋におるよ。」

「名前はなんていうかたですか。」

「近藤長次郎。秀才じゃ。」


色々な人に出会えそうな予感がした。

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