第636話 後継

「順平様、ユハニ殿からの言伝です。」


 アリアネがそう言って教えてくれる。

 彼女も僕の妻だけど、領地の運営の一端を担ってくれている。

 ティルザもそうだけど、僕と妻達に最初に接してくれた侍女さん方は皆領地の運営に関わりつつ、妻として子を育て、今は成人した男子は領地の一部を任せている。

 常山領は発展しすぎて大きな街が複数あり、街の規模も数え切れない・・・・いや、領主が把握していないといけないけれど、村を含め100とかあるからわからない。

 結局貴族もそれほどいないので、僕の子供がこういった街などの領主として赴任している。


 世界にやってきてから20年以上たちが、未だこう言った事には慣れない。

 本当は領主に向いていない。

 それは自分自身が一番わかっているけれど・・・・


「旦那さま!」


 エレケがやってきて抱き着いてくる。

 相変わらず白い毛並みは気持ちいい。


「どうしたんだ?」

「獣人の数が多くなりすぎて、また一つ街が欲しいのよ?」

 獣人は成長が早い。そのせいもあって最初に獣人特区としてあり振った場所はあっという間に獣人であふれ返り、当時数百人?千人程だったのが今や10万人以上に。


 2つの街では収まりきらず、今や獣人は常山領の至る所にいるが、やはり発情期の事を考えると専用の施設がどうしても必要。

 なので必ず獣人が住む場所には例の部屋が設けられている。


「ユープに連絡しておこう。」


 ユープというのは僕とエレケとの間に生まれた子供の名前。


 10歳ほどで成人するので今や立派な青年になっている・・・・そして獣人の街の管理を任せている。

 そしてレクスは今やユープの右腕。

 あの腕っぷしだけは・・・・の彼も今や常山領の獣人の中では古参。

 最近身体が・・・・と言っていたのでちょうどいい?


 ユハニも負担を軽くするために獣人は獣人で管理をするようにしているからだが、彼は優秀だ。

 獣人は総じて魔法が苦手だが、彼は人と獣人との間に生まれた奇跡の子。


 こう言っては何だが動物の話で、ライオンと虎の間に生まれた子はライガーというらしいけど、その子には繁殖能力がない。

 なので僕ろエレケの子にも・・・・と思ったのだけど、そんな事はなく普通に獣人の女性との間に子を成す事もでき、ちょっと安心している。


 領地を運営していくというのは人の命を預かる事だ。

 だけど僕には向いていない。そんな事は最初から分かっている事だ。

 そして・・・・幸か不幸かアーダの息子、ハルムは領主になるべく生まれてきたような、そんな子だ。

 王都でみっちり帝王学を学び、今はユハニの元で領地の経営?運営のノウハウを学んでいる。

 あと数年も知ればハルムに常山領の全てを任す事もできるだろう・・・・


 ・・・・

 ・・・

 ・・

 ・


 更に年月は過ぎ、

 とうとう50歳になってしまった。

 子供は皆成人をした。


 そして今、僕はハルムに公爵位を譲る準備をしている。


「父上!私にはまだ早すぎます!お考え直し下さい!!」


「ハルム。お前は優秀だ。領主になるべく生まれてきたような男だ。いや、本来なら王、というべきか。アルノルトもお前に王位を譲りたいと言っていたが・・・・本当に国王にはならないのか?」


 アルノルトはなりたくて王位についたわけではない。消去法で彼が生き残った中で一番年上の男子だったからだ。


 だから姉であるアーダの息子に王位を譲りたかったのだろうが、ハルムは拒絶した。


「だが俺はもう限界なんだよ。」


 因みにこの後僕はどうするのか?


 最近やたらと冥府の王?ハーデースとその奥さんペルセポネーから冥府へのお誘いがあって・・・・いや、まだ死にたくはないんだけど、ちゃんと生身のままで大丈夫と言って誘ってくるんだ。

 本命は娘か?

 トーヴェは僕との結婚を機に、こちらで暮らすのかと思ったけれど、結局冥府に戻ったんだ。

 そんな彼女の所に来るように、と。


 うん、公爵の位をハルムに譲ればそれもいいだろう。

 魔大陸にも行きたいし。


「私が先に行ってるわねえ。」


 早起はどうやらトーヴェと面識があるようだ。

 一体どこで知り合ったんだ?


 今日も常山領は平和だ。

「順平さん、準備が終わったわよ。」

「早く済ませましょう。」


「そんなに急がないでくれよ友郁、泉。」


 これから僕は自由だ・・・・たぶん。


 今日も平和でありますように。




 勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!  


 Fin



● これまでの間、沢山の方に読んでいただき感謝です!そしてありがとうございます。


何とか完結させる事ができました。

これもひとえにここまでお付き合いして下さった沢山の読み手の方々のおかげです。


そして、新作の発表です。


酔っぱらった神のせいで美醜が逆転している異世界へ転生させられた!


と言うタイトルの作品です。


https://kakuyomu.jp/works/16816927861543537861


一部45歳のおっさんと女神のチョンボに登場している神が現れます。

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