第634話 区切りと覚悟
魔大陸から戻ってから更に3年ほど経過。
この間にも領地はどんどん発展していくし、子供は大きくなって、もうザーラとアーダの子供は成人し、アーダの息子が領地を引き継ぐべくユハニの元で学んでいる。
何で僕の所にいないのかって?
それはこの3年の間、僕の主な活動している場所が魔大陸だったからだ。
日本と繋がっているであろう謎の施設を封印すべく、色々調べていたのだ。
本当に埋めてしまって大丈夫なのか?何か後になって問題がないのか?
それと共に可能な限り日本の状況を把握しようと試み・・・・結果は生ある生き物の姿を見かける事は結局できなかった。
鳥すら見かけなかった事から、ほぼ間違いなく放射性物質の影響若しくは強力な病原体に犯されたため全滅してしまったと判断せざるをえず、人間の生存者もほぼ絶望的。
このような状況にあって、3年前の判断を覆し日本に人を送り込もうという考えは完全に潰えた。
「残念だけど、3年の間動きのある者は見えなかったし、植物の異変も著しいので、あちらの世界は生命体が滅んだ可能性が大きく、その原因をこちらに持ち込まないためにも・・・・」
今目の前には日本から来た転移者の妻と友人が揃い僕の話を聞いてくれている。
「常山さん、もういいじゃないか。このボタンを押せば全て終わる。」
内元君が一つのボックスを示す。
僕と内元君がここ2年ほどかかって作り上げた道具だ。
日本の施設はそのままにするしかなく、埋めるのはこちらの世界の施設のみ。
そしてすべての施設に魔道具を仕込んである。
「順平さん、準備が整ってますよ。」
「そうですわ。順平さんは今までよく調べてましたもの。ここまでですわ。」
友郁と泉だ。
この2人とは長い付き合いだ。
そうは言っても他の妻と数年しか違わないのだけど。
「あちらの物を持ち込めたらよかったが、変なウイルスを持ち込んでしまう危険がある以上これでいい。」
「そうですわ。ただ・・・・結局何が致命的だったのかわからなかったのは残念ねえ。」
柚奈と瑞華だ。
この2人は仲がいい。
柚奈の男前な性格と、瑞華のおっとりとした性格が意外とあうらしい。
「3年、映像には鳥も虫の飛ぶ姿も映っていませんでした。」
「そしてここ最近木々の変化が激しく、森のほとんどの樹木は枯れてしまっているという異常事態。」
雪華と麻矢だ。
森の中にあったと思われる建物の周囲はおろか、カメラに収まった映像は、森の木々が例外なく枯れていく姿。
やはりウイルス等の病原菌?ではなく高濃度の放射性物質のせいなのか、それともいくつか重なった結果なのか。
・・・・もう考えるのはよそう。
「うっちー、準備終わったよ!」
内元君の奥さん、旧姓何だっけ?揚村さんだ。
まあ今更なんだけど。
さて・・・・そろそろ時間だ。
「結局何が原因かは突き止められなかったけれど、もうあちらの世界に関わる機会は来ないだろう・・・・さあ、みんな自分のボタンの前に。」
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