第632話 葛藤
「すまないが、少し時間をくれないかい?」
僕はアーダとザーラに即答できない事を伝える。
「そうでなくてはな。犯罪奴隷とはいえ人の命がかかっておる。それも順平殿の元居た国の命が、じゃ。尤も生きていればの話じゃが・・・・3日後に来てくれぬか?」
3日?何で?
「それはいいけど何で3日後?」
「一日では結論も決意もつきにくいが、時間があればいいと言うものでもないのじゃ。1週間では長い。3日じゃ。それ以上時間をかけても決められぬのであれば、この話は無しじゃ。」
アーダは少し時間をかけて考えろと言ってくれているんだな。
「すまないね。自分の事だけならいいのだけど、いくら罪を犯した人とは言え他人の命がかかっているからね。」
「じゃあこの話はこれでおしまいね!」
ザーラがそう言って去っていく。どうしたんだ?
「ザーラは最近子供の教育に熱心でな。時間があればああして順平殿の子の教育をしているのじゃ。」
知らなかった。てっきりアルノルトの手助けをしているのとばかり思っていたからね。
「じゃあアルノルトの補佐はアーダが?」
「最近アルノルトも国王としての自信が付いたのか、我の助言も最近ではあまり要らぬ様子。いい兆候じゃ。じゃがまだまだ補佐も必要じゃがな。いつまでたっても弟は弟じゃ。」
「そうか。アーダも無理をする事のないように。」
「順平殿は優しいのう。」
この後細かい話がいくつかあったけれど、特に重要な話はなかったので先に引き返す事に。
・・・・
・・・
・・
・
領地に戻って日本人の妻を全員集めてまたまた話し合いを。
「・・・・とまあ、犯罪奴隷を送り込んではどうか?とアーダからの提案なんだが、どう思う?」
僕はまだ決めかねていない。
犯罪奴隷に日本に行ってもらい調べてもらうか、それをしないのか。
調べてもらうにしろそうしないにしろ、リスクと影響、その他いろいろ考慮しないといけないし、それよりも他人の命を懸けてまで調べるべきなのか。
「順平さん、どうしますか?」
こういう時泉が真っ先に確認してくれる。
「この場で話し合いでもいいのだけど、どう?それとも紙に自分の考えを記載して、それを読み上げるかい?」
「いえ、私達全員答えは一致しているのよ、順平さん。」
何と友郁がそんな事を!
つまりもう既にこの場の中で僕以外は既にどうすべきか答えを出していた、と?
「順平、順平も本当はどうすべきか分かっているのだろう?」
柚奈が僕に問いかけてくる。
「そうよ順平さん。悩むまでもないわ。」
瑞華は成程・・・・瑞華らしい。
雪華と麻矢も頷いている。
「そうか・・・・まあ・・・・そうだよな・・・・」
「一応答えておきますが、答は・・・・【ノー】、つまり日本へ人は送らない、ですわ。」
「日本の現状を知りたい所だけど、私達は今はさほど日本を恋しいとか思っていないし、こちらには我が子もいるし、万が一があるといけないし・・・・」
何となくわかっていた。
「そうか、皆すまないな。だがそれはそれで今後どうするかなんだ。」
「うん?何をどうするのだ?」
「うん、柚奈、向こうに行けると知っていれば、そのうち何かしらの変化があって行きたくなるかもしれない。それも平常心ならいいけれど、興奮していたり心神喪失状態だったりしたら?正常の判断ができないまま向こうに行ってしまう・・・・それを避けたいんだ。それに万が一向こうから・・・・もし放射性物質で汚染されてしまっていたり、未知のウイルスに犯されている人々が生きて偶然あの施設のやってきた場合、転移装置とでも言うのかあの装置でこちらにやってくるかもしれない。それを阻止しておくべきかどうかと思ってね。勿論早紀がこちらに来れないような措置をしてくれたはずだけど、あちらで解除してしまうかもしれない。それに僕らの知らない場所があってそこに向かってしまう可能性もあるんだ。」
「順平さんは、こちらとあちらを行き来する施設を何らかの方法で物理的に使えなくしたいのね?」
「そうなんだ。どう思う?」
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